元・調査員が教える!信用調査の真実

信用調査会社は決算書のどこをどう見る?説明する時のポイント

2024年9月28日

信用調査会社は決算書のどこをどう見る?説明する時のポイント|会社信用ドットコム

東京商工リサーチや帝国データバンクが信用調査に来る。決算書を出してほしいと言われているが、どこが見られるのか?質問に答えられるようにしておきたい。

本日は、このような信用調査対策のお役立つ記事をお届けします。

決算書は信用調査で大変重視されている書類です。

にもかかわらず、経営者の方の中には誤解をしていたり、みずから評価を下げるような対応をしている方も少なくありません。

本記事では、信用調査会社が決算書のどの項目に注目するか。その項目をどう見るか、説明する際のポイントまで解説しました。

私の元調査員としての経験も豊富に盛り込んだ内容です。

ぜひ最後までお読みいただき、信用調査対策を万全にしてください。

この記事を書いている私のプロフィール

佐藤絵梨子(さとうえりこ)
会社信用ドットコム代表・会社信用クリエイター

世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。

*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411

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<メディア掲載情報>

■SMBCグループの経営層向け会報誌『SMBCマネジメントプラス
「危険な取引先・優良な取引先がわかる 決算数字と信用調査の活用法」

■日本実業出版社『企業実務』
「元調査員が教える!信用調査会社の上手な使い方」
「信用調査会社に会社を高く評価してもらうコツ」 など

メディア掲載情報|会社信用ドットコム

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信用調査会社が決算書を見る理由

信用調査会社が決算書を見る理由|会社信用ドットコム

信用調査会社が決算書を見るのは、会社の経営状況を正確に把握するためです。

決算書は、企業の1年間の業績や財政状況を表す『成績表』ですから、その数字を見れば、信用調査の目的でもある「安心安全な取引ができる会社かどうか」も読み解くことができます。

会社法では年1回の決算書の作成が義務づけられていますから、どの会社でも決算書は必ず作成しています。ですので、信用調査会社でも毎年の状況を把握することができる書類として、必ず決算書を確認しています。

さらに、決算書はその会社の数字や経営状況を関係者に嘘偽りなく透明性を持って開示する書類でもあります。

正確な情報を包み隠さず開示できる会社かどうかという「情報開示の姿勢」も確認することができますので、信用調査会社では必ず決算書の提示を求め、確認しているのですね。

 

信用調査会社が調査で見る決算書類

信用調査会社が調査で見る決算書類|会社信用ドットコム

「信用調査で決算書を用意してほしいと言われるのですが、どの書類を準備しておけばよいですか?」というご質問をよくいただきますので、お答えしますね。

信用調査では、以下の書類を用意し、調査員に渡せるようにしておくとよいです。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書(製造原価報告書・販売費及び一般管理費明細を含む)
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表

基本的には上記の書類で十分かと思いますが、会社の状況によっては、ほかにも書類を求められることがあります。

ご心配な方は、信用調査会社が面談やアポイントの連絡をしてきた際に、「どの書類を準備しておけばよいですか?」と確認することをおすすめします。

 

信用調査会社が決算書で特に注意して見る項目

信用調査会社が決算書で特に注意して見る項目|会社信用ドットコム

信用調査会社が決算書の中でも必ず見るのが「貸借対照表」と「損益計算書」です。そしてその中でも特に注意して見る項目がありますので、確認しておきましょう。

 

貸借対照表で特に見られる項目

貸借対照表は、作成時点の財政状態を表し、資産や負債・資本の残高、資金の調達方法、調達した資金の運用方法がわかる書類です。経営状態や資金繰りの安定性が見られます。信用調査でとくに注意して見られる項目をご紹介します。

 

現預金

経営に必要な現預金が十分に確保されているかは特に見られます。

現預金が少ない場合、過去と比べて減少している場合は、その理由も確認されます。現預金が不足していると、資金繰りの行き詰まりを心配されます。

マイナス評価を避けるには、「資金調達ができる」のようなプラスの情報をその根拠とともに伝えておくと良いでしょう。

 

純資産

純資産がマイナスではなく、プラスであるかが確認されます。

プラスなら必ず高評価というわけではなく、自己資本比率(純資産÷総資産×100%)が安全な水準に達しているかどうかも確認されます。

債務超過や資本欠損の場合は、その理由や背景を詳しく確認されます。

 

売掛金・買掛金

売掛金や買掛金の確認では、回収までの期間や支払いまでの期間が確認されます。さらに、回収と支払の期間を比べ、「支払が回収よりも早い」「支払いより回収が早い」のような視点で資金繰りの傾向を確認されます。

過去に比べてその期間に変化がないかも見られますね。期間に変化がある場合は、その理由や背景も確認されます。

 

棚卸資産(在庫)

棚卸資産(在庫)の状況からは、商品の売れ行きが見られています。長期間在庫が残っていないか、販売見込みのない不良在庫が存在しないかという視点でも見られますね。

過去と比べて在庫として残っている期間が長くなっている場合、その理由や背景も確認されます。

 

固定資産の内容

固定資産というのは長期保有(1年超保有)する資産です。どのような固定資産を保有しているか、購入や売却の状況を確認され、その資産価値、今後の事業継続力が見られます。

資産の取得時と現在の価値が変わっていないか、現在の価値がどの程度かという視点でも評価されます。

資金調達時に担保価値として活用できるかという視点でも見られています。

 

借入金

事業規模に対して適正な借入水準か、過去に比べて大きく増減していないか、資金調達の変化がないか確認されます。

借入は内訳(どの銀行から・いくら借りているか、使用用途など)も確認され、返済能力はあるかという視点でも見られますね。

銀行以外からの借入がある場合、調達先や調達の理由、使用用途を確認され、調達先よっては厳しい評価を受けることがあります。

 

損益計算書で特に見られる項目

損益計算書は1年間の経営成績を表す書類です。稼ぐ力、利益を残す力が見られます。信用調査でとくに注意して見られる項目をご紹介します。

 

売上高

安定した売上高を確保できているか、過去と比較して伸びているか、売上の構成(どの商品・事業で何%など)、その構成の過去からの変化を確認されます。安定性や成長性、市場ニーズへの対応力などが見られていますね。

増減の理由や構成が変化した背景も確認されます。特に売上高が減少している場合や、売上が確保できず赤字になっている場合は詳しく理由を確認され、場合によっては厳しい評価になります。

 

利益

売上高と同様に、安定した利益を確保しているか、過去と比較して利益が増えているか、安定性や成長性が見られます。

増減の理由も確認されます。利益が減少していたり、赤字になっている場合は、詳しく理由が確認され、場合によっては厳しい評価になることがあります。

 

利益率

利益率とは、売上高に対する利益の割合のことです。その年の状況を見るのはもちろんですが、過去と比較して利益率が上昇しているか、安定しているか、低下しているかという変化は特に注意して見られます。

利益率の変化の理由や背景も注意深く確認されます。利益率が下がっている場合は、理由によっては厳しい評価になることもあります。

 

製造原価や販管費

製造原価や販管費の増減は、利益や利益率にも影響を与えます。利益率と同様に、その年の状況を見るのはもちろんですが、過去と比較した場合の増減やその理由が確認されます。

特に急激な増減がある項目や、新たに発生した項目は注意深く内容を確認されます。

数値の内訳を確認するために、製造原価報告書や販管費明細の提出を求められることもあります。

 

信用調査会社は決算書の項目をどう見るか

信用調査会社は決算書の項目をどう見るか|会社信用ドットコム

信用調査会社は数字をただ見るだけでなく、様々な角度から分析をする視点で見ています。どのように見ているのか、その見方を知っておきましょう。

 

増減やその理由・背景を見る

決算書の数字を見る時は、過去からの「増減」と「増減の理由」をよく見ています。1期分だけでなく、数期分の決算書を比較し、「過去と現在でどのように変わったのか」をチェックするのです。そして、その変化の理由にも注目します。

例えば、売上高を見る場合、『増えているか減っているか』『その理由は何か』を確認して、増減と理由を含めて評価していますね。

 

資金繰りに問題がないかを見る

信用調査会社が決算書の数字を見る時は、つねに「会社の資金繰りに問題がないか」という視点で見ています。

資金繰りに問題があると、最終的に会社は倒産してしまいますので、大変重要な評価視点になっています。ですので、資金繰りに悪影響を与える項目の増減や指標の変化は、特に厳しくチェックされます。

会社経営には資金が必要ですから、「問題なく資金調達ができるか」という視点でも厳しく見られますね。

現在の調達額は適正か、借入に依存しすぎていないか、今後も銀行から問題なく資金を調達できそうかなど、資金調達に関連する数値や指標は厳しく確認・評価されます。

 

社長の考えや個性を踏まえて見る

投資家などへの情報開示を念頭に置いて厳格に数値管理をする上場企業に比べて、中小・零細企業の決算数値には社長の考えや個性が出やすいものです。

例えば、「この社長は慎重な方だから常に借入を多めにしている」のように、社長の考え方や個性を踏まえて決算数値を見ています。

ですので、信用調査では「どのような考えで経営や資金繰りを行っているのか」を詳しく確認されます。

 

将来の方向性を厳しく見る

信用調査会社が決算書の数値を見る時は、「今後はどうなるのか」という将来の方向性を読み取ろうとします。売上や利益の増減予想や、資金繰りの予定など、経営者も質問をされるでしょう。

特に、業績が低迷しそう、資金繰りに危ないというマイナスの兆候が出ていると判断されれば、詳細を探るような質問がされることもあります。

 

信用調査会社に決算数値を説明する時のポイント

信用調査会社に決算数値を説明する時のポイント|会社信用ドットコム

ここまで、信用調査会社が決算書で特に見る項目やその見方をお伝えしました。では、信用調査会社の調査面談で決算書について説明する際には、どのような点に気を付けて説明をすればよいのでしょうか。

できるだけ良い評価を獲得できるように、説明する時のポイントをお伝えします。

 

その数値になった理由や背景を的確に伝える

決算書をただ見せるだけでなく、その数値になった理由や背景をしっかり伝えましょう。説明をしないと、「なぜその数字になったのか」「なぜ数字が増減したか」はわかりません。

例えば、前期より売上高が増えていた場合、何か特定の商品がたくさん売れたのか、それはなぜそんなにたくさん売れたのかは、数字の説明がないとわかりません。一時的な特需なのか、それとも今後も安定して受注があるのか、理由や背景によって評価は大きく変わってきます。

特に、過去と比べて大きく変化している数字や、その期だけ特別に発生した数字などは、理由や背景を丁寧に説明しましょう。

 

将来の計画や数字を具体的に伝える

今後の売上や利益の予想数値など、その数値になる根拠とともに具体的に伝えましょう。

例えば、「●●社から▲▲の大口案件の話があり、今期の売上高は■■円になりそうだ」「今期末までには借入金を◎◎円まで返済する」など、将来数値の参考になる情報は漏れなく伝えましょう。

将来の予測数値を伝えることで、成長性や安定性だけでなく、企業が明確な方向性を持って計画的に進んでいることも示せます。

いま数値が悪い場合、将来回復するような明るい情報があれば、評価の挽回につながる可能性もありますよ。

 

経営者みずから説明する

信用調査会社は、決算書の説明を通じて、経営者が数値を把握しているか、内容を説明できるか、明確な将来の方向性を持っているかといった経営者の能力や考えも見ています。

経営者が数値も理由も把握していない、将来計画も考えていないと判断されれば、評価は大きく下がるので十分注意してください。

調査員時代に「数字や内容なんて経理に聞かなきゃ答えられない」「先のことなんてわからない」とおっしゃる経営者の方によくお目にかかりましたが、このような回答は絶対にやめましょう。

どうしても経営者以外が説明しなければならない場合は、数値の内容や経営者の考えをしっかり代弁できる方を選定してください(※経営者以外が対応することは、私はおすすめしません)。

信用調査では経営者の言動が1番見られていますので、的確な説明ができるように準備をしてください。

 

信用調査会社の決算書の見方でよくある質問

信用調査会社の決算書の見方でよくある質問|会社信用ドットコム

ここでは、経営者の皆さまから信用調査会社の決算書の見方についてよくいただくご質問に、元調査員の経験をもとにお答えします。

 

決算書を見れば数字はわかるのに、調査員が色々質問してくるのはなぜですか?

決算書の数値だけでなく、その理由や背景、今後の方向性も確認します。理由や背景、方向性によって評価が変わるからです。

決算書を見ただけでは、その数字になった理由や背景、今後の方向性などはわかりません。説明があってこそわかることだからこそ質問をしてくるので、丁寧に答えるようにしましょう。

 

数字が悪い時は信用調査で決算書を見せない方がいいですか?

元調査員として、決算書を見せないのはおすすめしません。

決算書を見せないと「そもそも数字が本当か」信ぴょう性がありませんし、悪いから見せないのではないかと、マイナスの方向に評価される危険性もあります。

「調査にも対応し、数字も答えるけれど、決算書は見せない」のもおすすめしません。決算書がなければ、「情報公開性」が低いとみなされ、高評価の獲得が難しくなるからです。

どうにか見せずにやり過ごそうとするよりも、決算書は見せつつ評価を挽回することを考えた方がよいですよ。以下の記事でそのコツをお伝えしていますので、あわせてお読みください。

◆決算書の数字が悪い時の信用調査対策【低評点の防ぎ方】

 

小さな会社だし数字も業界平均より悪いです。低評価になってしまいますか?

信用調査会社は決算書の数値を見る時に、数字の大きさや業界平均との比較だけで評価するわけではありません。その会社の特性や個性、過去からの数値の変遷やその数値時になった理由など、総合的に見て評価をしています。むしろ数値の分析評価では、単純に業界平均と比較してしまうと危険な場合もあります。

数値が小さい、業界平均より悪いというだけで、調査を拒否したり、決算書を見せないようなことはせず、信用調査会社に内容を理解してもらえるように、丁寧な説明をすることを心がけてください。

 

元調査員の編集後記

元調査員の編集後記|会社信用ドットコム

信用調査会社は、皆さまの会社の評価が高くなるように「こうした方がいい」と教えてはくれません。

不十分な説明な微妙な対応をしてしまったら、それがそのまま皆さまの会社の本来の姿として評価されてしまいます。

私も調査員時代に「決算書は見せた方がいいのだけれど」「この数字の内容を説明できればさらに評価は良くなるのに」「経理の方に全部数字を聞くのではなく、これは社長が説明できなければいけないのですが…」のように思ったことは数知れず、大変もどかしいと思いながら評価をしていたものです。

この記事をお読みいただいている皆さまは、彼らが決算書のどこをどう見て企業を評価しているかを理解し、十分な対策を講じたうえで調査に臨んでくださいね。

この記事が少しでもお役に立てれば、元調査員として嬉しく思います。

そして、皆さまが信用調査で高評価を獲得し、良い取引先を増やしていかれることを心から願っています。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
 
会社信用ドットコム代表 佐藤絵梨子


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