このような疑問にお答えします。
「東京商工リサーチの〇〇と申します。調査のため、取材にお邪魔したいのですが」
「帝国データバンクと申します。調査依頼が入りまして、お話を伺いたいのですが」
突然このような電話がかかってきて、驚いた経験がある。そんな経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「なぜ、うちに調査が?」
「どこから依頼が入ったの?」
そんな疑問や不安を感じている方もいることでしょう。
まずはじめに大切なことをお伝えします。
信用調査が入る理由を理解していないのは危険です。
対応を間違えれば、大切な取引を失う恐れがあります。
さらには、良い会社との取引を、みずから蹴ってしまう可能性もあります。
「どういうこと?」と思った方は、このまま読み進めてくださいね。
この記事を書いている私は、企業信用調査会社の(株)東京商工リサーチに10年以上勤め、延べ7,000社以上を調査してきた元・調査員です。
信用調査の現場を知り尽くした者として、みなさまの疑問に正直にお答えします。
この記事を読めば、東京商工リサーチや帝国データバンクのような信用調査会社から「なぜ調査されるのか」がわかるようになりますよ。
さらには、良い取引先を獲得できる未来も待っています。
ぜひ最後までお読みください。
信用調査についてお悩み・お困りごとがあれば、ご相談ください。お力になります。
信用調査とは?
よくわかってないけど信用調査に対応している。
そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そもそも信用調査とは何か。
国内の二大信用調査会社である東京商工リサーチや帝国データバンクでは、信用調査を以下のように説明しています。
信用調査とは?
企業間の商取引に際し、相手方の資産や営業状況を把握し、取引の可否や与信限度などの決定材料とするために調査することです
信用調査とは、企業と企業が取引する際に、取引相手のことを知るために行う調査です
つまり、取引する相手企業をよく知るために行われるのが信用調査です。
そして、この信用調査を専門に行っている会社が信用調査会社です。
国内では(株)東京商工リサーチや(株)帝国データバンクが「二大信用調査会社」として有名ですね。
どんな時に信用調査が入るの?
では、どんな時に信用調査が入るのでしょうか?
主に以下のようなタイミングで、取引先は信用調査を行います。
- 新規取引を検討する時
例:新しく取引先を探している、取引の申し込みを受けた - 既存の取引拡大を考える時
例:取引額を増やしたい、新しい商品の取引を始めたい - 定期的な取引先確認として
例:年1回の取引先チェック、与信限度額の見直し - 状況の変化を確認したい時
例:業界の評判が気になる、心配な情報を耳にした
このように、取引先との関係を始める時も、継続する時も、信用調査は行われます。
「すでに取引がある会社から調査が入るはずがない」
と思われている経営者の方も多いのですが、それは誤解です。
取引先は定期的な取引先チェックの一環として、すでにお取引のある会社の調査もしています。注意してくださいね。
なぜ突然、調査会社から連絡が?
「うちを調べる目的はなんですか?」
「なぜ信用調査会社から連絡が来るのでしょうか?」
このような質問をよくいただきます。
あなたの会社に東京商工リサーチや帝国データバンクから調査が入るのはなぜか。
それは、あなたの会社について知りたい企業が、信用調査会社に「あなたの会社を調べてほしい」と調査を依頼しているからです。
つまり、信用調査会社はあなたの会社について知りたい企業に代わって、あなたの会社を調べているということです。
以下のイメージ図をご覧いただくと、流れがわかりやすいと思います。
あなたの会社に調査が入るまでの流れ
この図のように、取引先は信用調査会社に依頼をして、信用調査会社が収集した情報をもとに、あなたの会社について知ることができるのですね。
信用調査会社は、取材後に調査報告書を作成します。
その報告書を見て、相手企業はあなたの会社のことを深く理解していきます。
取引先が本当に知りたいこと
では、あなたの会社に興味を持つ企業は、一体何を知りたくて信用調査をするのでしょうか?
取引先が本当に知りたいことは、おもに次の3つです。
取引先が本当に知りたいこと
- 経営は安定しているか
・業績は安定しているか
・財務内容は健全か
・資金繰りは問題ないか - 取引先として信頼できるか
・販売先として:支払いは期日通りにできるか
・仕入先として:納期・品質は守れるか
・どんな取引実績があるか - 将来性はあるか
・事業基盤は安定しているか
・後継者問題はないか
・成長性はあるか
この3つのポイントを確認するために、信用調査では実にたくさんの項目を調べます。
以下にざっとご紹介しておきますね。
信用調査で調べられる主な項目
*全部読まなくて良いです。さっと目を通すだけでOK!
- 会社の概要
商号・所在地・沿革・事業目的・役員・株主 - 経営者情報
代表者経歴・人物像・資産状況 - 扱い品・取引先
売上構成比・仕入先・販売先・決済条件・焦付債権 - 金融取引状況
取引銀行・借入状況・資金繰り - 業績推移
売上高・利益・業績伸長率・業績概況 - 決算内容
貸借対照表・損益計算書・販管費明細・株主資本等変動計算書・キャッシュフロー計算書 - 不動産情報
所有不動産・担保設定状況 - 将来の見通し
今後の業績予想・事業計画
ほかにも、インターネット上のあらゆる情報、業界動向、経済・社会・地域情勢、企業を取り巻く環境も調べられますね。
わたしが調査員をしていた東京商工リサーチでは、約200項目を調べていました。
なお、先ほどの3つのポイントは代表的な例です。
取引先によって重視するポイントは異なりますし、独自の判断基準を持っている会社も少なくありません。
例えば製造業では品質管理体制を特に重視する企業が多く、IT業界ではセキュリティ対策の状況なども重要な判断材料になります。
なぜ取引先は直接調べない?
「わざわざ調査会社に依頼せずに自社で調べたらよいのに…」
そう思いますよね?
そこで、このパートでは、取引先が調査会社に依頼する理由を解説します。
取引先が信用調査会社に調査を依頼する理由は、おもに以下の5つです。
自社で調べるのは大変
会社を知るにはたくさんの情報が必要です。でも、すべての情報を入手するのは、時間も手間もかかります。
そこで、専門の信用調査会社に依頼をして、素早く情報を集めてもらうのですね。
自社で入手できない情報もほしい
調査対象の企業が、業績数値や財務データを素直に教えてくれるとは限りません。悪い情報は見せないでしょうし、都合が悪いことも話さないはずです。
その点、信用調査会社は情報収集のコツを心得ていますから、高確率で必要な情報を入手できます。
取引先の正確な情報がほしい
自社で情報を集められても、情報の正誤の判断は簡単ではありません。
信用調査会社の情報なら、専門家の目で分析・検証された確かな内容です。この情報があれば、取引先としての適性を安心して判断することができるのですね。
プロが集めた情報を見て取引するか決めたい
情報がそろっても、取引の判断に迷うケースはあるでしょう。
信用調査会社は、集めた情報を豊富な実績とノウハウで分析します。取引の安全性を具体的な評価として示してくれますので、適切な判断ができるのですね。
倒産の危険がないか確証がほしい
情報を集めることができても、倒産可能性の予測までできる企業は多くはありません。
信用調査会社は、長年の実績から企業経営の持続可能性を見極める確かな目を持っています。この情報があれば、リスクを適切に判断し、安全な取引を進めることができますね。
なお、東京商工リサーチと帝国データバンク。
この2社はどちらも、明治時代から100年以上、企業の調査分析を続けてきた歴史ある会社です。
(株)東京商工リサーチ
創業:1892(明治25年)8月
設立:1933(昭和8年)5月
(株)帝国データバンク
創業:1900(明治33)年3月
設立:1987(昭和62)年7月
長年信用調査を続けている実績からくる安心感も、取引先が信用調査会社に依頼する理由かもしれませんね。
調査が入る=良い会社が興味アリ
元・調査員として断言します。
あなたの会社を調べるように、信用調査をする会社はいわゆる"良い会社"が多いです。
信用調査をするほど取引を真剣に考えているということです。
信用調査会社に調査を依頼する場合、1件あたり3万円~の料金がかかります。調べた情報を見て社内で取引を検討する部署や人員も必要ですよね。
つまり、それだけの資金力と人員の余裕もある会社が信用調査をしているということです。
「危ない会社とは取引をしない」という危機意識も高いですね。
調査ルールや審査基準も決めていますから、管理体制がしっかりした会社でもあります。
そして、信用調査の結果をもとに、安心な会社とだけ取引をするので、グングン会社を成長させる成長企業でもあります。
あなたにとっては、ぜひともお取引をしたい"良い会社"だと思いませんか?
あなたの会社に連絡をしてくる信用調査会社の後ろには、信用調査会社に調査依頼をした"良い会社"が存在します。
せっかくの"良い会社"との取引チャンスです。
このチャンスを逃さないよう、信用調査で高評価を取れるように、しっかりと準備をしておきましょう!
仕入先・調達先の盲点
信用調査や取引審査をされるのは、相手から買う側(販売先)だけと思っていませんか?
実は、相手に売る側、つまり仕入先・調達先になる場合も信用調査や取引審査をされます。
しかも、仕入先・調達先への審査は特に厳しい傾向にあります。
これは大手企業だけでなく、どの規模の会社も厳しく審査をしていますね。
なぜかというと、仕入先・調達先に問題があると、商品やサービスの提供に直接影響が出るからです。
例えば、納期遅延や品質トラブルが発生すれば、自社の事業にも大きな支障をきたしてしまいます。材料が予定通り入荷されず、新商品の発売日に間に合わないようなことになったら、信用問題にもなりかねません。
とくにコロナ禍で物流が滞った経験を教訓に、多くの企業が「安定供給できる仕入先かどうか」を重視するようになっています。この傾向は今後さらに強まっていくでしょう。
【要注意】大手企業の審査は特殊!
そう思う経営者の方も多いでしょう。
ですが、大手企業の取引先になることは簡単ではありません。
なぜなら、大手の取引先審査はとても厳しいからです。
大手企業には審査部のような、取引先を審査・管理する専門部署が存在します。
そして、信用調査会社が調査分析した情報に加えて、自社独自の判断基準で厳格な取引先審査をします。
大手の取引審査が厳しいイメージ
さらには、その審査基準は年々厳しくなる傾向にあります。
コロナ禍で業績が悪化したり、現在も業績が回復していない企業が多いことも影響していますね。
ただし、審査が厳しいからといって諦める必要はありません。
適切に信用調査に対応し、自社の高評価ポイントを上手く伝えることができれば、大手企業との取引を勝ち取る未来も夢ではありません。
実際、わたしのところにご相談に来られる経営者の方の中には、大手企業の取引審査を無事に通過し、その後、全国規模で取引を広げている方もいらっしゃいます。
製造業、卸売業、小売業、サービス業、どのような業種でも大手との取引チャンスはありますよ。
【信用調査の真実】情報の"出し方"で企業評価は変わる
信用調査の依頼は、貴社について知りたがっている企業側からのアプローチです。
向こうから飛び込んでくる取引チャンスです。
東京商工リサーチや帝国データバンクの信用調査だけでなく、融資や補助金などの資金調達、許認可や政府認定の取得など、会社はあらゆる場面で審査されています。
相手から信用を勝ち取るには、彼らが知りたいポイントを見極め、自社情報の見せ方を工夫することが必要です。
以前は漠然と会社の情報を伝えていた経営者の方も、「評価されるポイント」に焦点を当てた説明に変えることで、商談や融資面談での相手の反応が劇的に変わったというケースがたくさんあります。
もし「うちの会社はそんな高く評価される強みなんてない」と思っているのなら、それは誤解です。
企業の信用調査に携わってきた経験から断言しますが、御社には必ず、高評価が獲得できるポイントがあります。
なぜなら、いままで事業を継続できているということは、取引先や金融機関から評価される何かがあったからです。
ただ、そのポイントに気づいていない、そして、うまく伝えられていないだけです。
「自社の高評価ポイントがわからない」
「自社に最適な見せ方が知りたい」
そのような方はご相談ください。お力になります。
この記事がみなさまのお役に立てれば嬉しいです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。