元・調査員が教える!信用調査の真実

大手・上場企業との取引は信用調査から始まる【知っておきたい基礎知識】

2024年9月25日

大手・上場企業との取引は信用調査から始まる【知っておきたい基礎知識】|会社信用ドットコム

大手・上場企業から取引を断られてしまう。

直接取引ではなく、代理店経由の取引にされてしまう。

大きな取引をしてほしいのに、少額でしか取引してくれない。

もしこのような状況なら、それは大手・上場企業の信用調査に引っかかっているからかもしれません。

本記事では元調査員の経験をもとに、大手・上場企業との取引で行われる信用調査について解説します。

この記事を書いている私のプロフィール

佐藤絵梨子(さとうえりこ)
会社信用ドットコム代表・会社信用クリエイター

世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。

*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411

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<メディア掲載情報>

SMBCグループの経営層向け会報誌『SMBCマネジメントプラス』2024年12月号
日本実業出版社『企業実務』2024年12月号 など

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大手・上場企業は取引前に厳しい信用調査をする

大手・上場企業は取引前に厳しい信用調査をする|会社信用ドットコム

大手企業や上場企業は、取引をする前に取引先を調べる「信用調査」をしています。

情報を集めて審査し、取引先としてふさわしいかどうか判断するということです。単に商品や価格などの条件を見るだけでなく、「安心して取引できる会社か」という会社の安全性を見極めて、取引するかどうかを判断しています。

取引先をチェックする部署として、社内に審査部や管理部のような専門部署を置いている大手・上場企業も多いです。

皆さまもよくご存じの東京商工リサーチや帝国データバンクのような専門の信用調査会社に調査を依頼することもあります。

そして、そのチェックはとても厳しいです。

大手・上場企業となれば、多くの人がその動きに注目しますよね。消費者、投資家、銀行、取引先など、関係筋も多いですし、よくニュースにもなります。

万が一不祥事があった場合には、厳しい目が向けられます。その厳しさは中小企業の比ではありません。下手をしたら企業の存続にも関わってきます。

小さな会社なら「取引先から代金が回収できなかった…(諦め)」で済むことも、大手・上場企業では「利益損失だ」と投資家から厳しく追及される事態です。

「大手なのに取引先の管理もできていない」と思われれば、投資家や銀行も離れ、資金繰りにも影響が出ます。ブランドイメージも崩壊。業績にも大打撃です。

そんな事態を避けるために、大手・上場企業は取引先を厳しく選ぶ必要があるのです。なので、取引審査はかなり厳しいものになります。

大手・上場企業との取引を望む経営者の皆さまは、このような背景を理解して、審査で見られるポイントを押さえ、事前に対策しておくことが必要になりますね。

 

大手・上場企業ならではの信用調査で見るポイント

大手・上場企業ならではの信用調査で見るポイント|会社信用ドットコム

では、大手・上場企業は取引先のどのような点に注目しているのでしょうか。

企業の基本情報や事業内容、扱い品から、取引先、資金状況、将来計画まで、基本的な情報は、もちろんすべて調べています。

ですが実は、『大手・上場企業ならではの見るポイント』があります。とくに注目すべき特徴的なものをいくつかご紹介します。

 

情報公開性

1つ目は情報公開性です。「どれだけ情報を公開する会社か」と真剣に見ています。

信用調査に答えるか、決算書を見せるか、数字を公開するかー。それをしないだけで取引対象外になることもあります。

どれくらい詳しく公開するかという「公開度」もよく見ていますね。売上を千円単位まできっちり公開するのと、ざっくり「1億円」と公開するのとでは、圧倒的に前者が信頼されます。

できるだけ状況をオープンにしてくれる、誠実な企業と取引がしたいと思っているからですね。それだけでなく、もし少し状況が悪くても、状況が悪いとわかっていれば、取引を少額に抑えるような“備え”もできるので、情報があると安心なのです。

そもそも大手・上場企業では、投資家や関係筋、消費者からの信頼を獲得するために、情報は公開して当たり前だと思っています。ですので、情報公開性が低い取引先には大変厳しい態度を取ります。

 

支払遅延や納期遅れの有無

支払遅延や納期遅れの有無もよく確認しています。信用調査会社や業界内の情報網を通じて、しっかり調べていますね。

大手・上場企業の場合、一つの取引先との取引量や金額も大きいですから、もし支払遅延があればダメージも大きくなります。

お客様や取引先も多いですから、納期遅れがあれば消費者への商品販売、流通全体にも大きな影響が出ます。これは絶対に避けたいと思っています。

過去から現在までに、支払遅延や納期遅れがある場合、大手・上場企業と取引するのはかなり厳しいです。

 

管理体制

社内の管理体制もよく見ています。管理体制が整っていない企業は、支払遅延や納期遅れ、品質管理や情報漏洩などの問題やトラブルが起きやすくなるからです。

本社だけでなく、工場や支店まで細かく状況をチェックする場合も多いですね。

とくに製造業は管理体制を厳しくチェックする傾向が強いです。ISOなどの認証取得を重視している企業も多いですね。

 

倫理観

実は、2025年の取引審査の世界では、この「倫理観」がとても注目されました。

倫理観とは、例えば、法令や社会のルールを守ることや、取引先・社員・社会に対して誠実に行動する姿勢のことです。

注目されたきっかけは、元タレントと女性のトラブルを発端としたフジテレビ問題です。

この問題で多くの名だたるスポンサー企業がフジテレビから距離を置きましたが、その時にスポンサー企業が問題視したのが社会的責任や人権という倫理観です。

「我々は倫理観に問題が生じている企業とは付き合わない」そんな強い意志を持って、多くのスポンサーが取引から身を引いたんですね。

私は大手・上場企業の審査現場に関わることも多いのですが、この問題後はとくに「倫理観」を注意して見る傾向が強まっていると感じます。

ネットの口コミやSNS、業界内や取引先など、あらゆる情報網を通じてしっかり調べるようになっていますので、最近の取引審査の傾向として意識しておいてください。

 

経営者の人物像

中小企業を見る場合、やはり何といっても経営者の人物像を一番厳しく見ています。企業は経営者の考えや行動が色濃く反映されるという考え方があるからですね。

見ているポイントは、経歴や実績、経営手腕だけではありません。どのような考えを持つ人物なのか、最近では経営者個人の倫理観、ハラスメント資質、トラブルの有無まで厳しく見ています。

とある審査部の方は「会社の問題が発生するか、食い止められるかは経営者次第」とおっしゃって、経営者の情報を非常に詳しく調べておられました。

それだけ経営者はよく見られています。今はSNSなどもあり、経営者の”素”の人物像がつかみやすくなっていますので、皆さまも普段から言動にはご注意ください。

 

大手・上場企業の信用調査でよくある質問

大手・上場企業の信用調査でよくある質問|会社信用ドットコム

ここでは、経営者の皆さまから大手・上場企業の信用調査についてよくいただくご質問に、元調査員の経験をもとにお答えします。

 

東京商工リサーチや帝国データバンクの調査に答えないと大手・上場企業との取引で不利になりますか?

大手・上場企業は取引先を調べる際に、信用調査会社に調査を依頼することが多いです。

信用調査に答えない場合、信用調査会社からは情報公開性が低い企業と判断され、評価が伸び悩みます。調査を依頼した大手・上場企業からも、「安心して取引できる企業」と見てもらえない可能性が高まります。

以前、私のところに相談に来られた経営者様の中に、商談中の大手企業から「お宅の企業は東京商工リサーチに情報がなかったのですが大丈夫ですか?」と直接聞かれた方もいらっしゃいました。

大手・上場企業との取引を望むのであれば、信用調査会社には誠実に対応しておくことを、元調査員として強くおすすめします。

信用調査を拒否するデメリットを確認したい方は以下の記事をお読みください。

元調査員が教える!信用調査は拒否すると怖い?断る7大デメリット

 

大手・上場企業は信用調査会社の評点が低いと取引してくれないですか?

基本的には、評点が低い会社は、取引対象外と見なされる可能性が高いと思います。評点が低いということは、取引に何かしら不安な点があるということだからです。

ただし、「創業したばかり」「一時的な売上・利益の減少」のような、今後は成長や回復の見込みがあると期待を持ってもらえれば、取引するかどうかの判断で考慮してもらえるはずです。

そうではなく、例えば業績や財務内容が悪いなどの「それなら評点が低くても仕方がない」と思われてしまうような理由があるのなら、しっかり改善をして、高評価を獲得する努力をすることをおすすめします。

 

決算書の数字が悪いと取引を断られますか?

決算書の数字が悪いだけで取引を断られるか…というと、そうとは言い切れません。

たしかに、数字が悪いと経営状況を心配され、信用調査の低評価や取引を見送られる可能性は高いでしょう。ただし、一時的に数字が悪いだけであったり、今後回復が期待できるのであれば、取引するかどうかの判断で考慮してもらえるはずです。

大手・上場企業や信用調査会社には、悪い理由や挽回の可能性をしっかり伝え、「それなら大丈夫であろう」と納得してもられるような対策をしておくことをおすすめします。

数字が悪い時の信用調査対策を確認したい方は以下の記事をお読みください。

決算書の数字が悪い時の信用調査対策【低評点の防ぎ方】

 

支払ってもらう側なのに調べられるのはなぜでしょうか?

「うちは大手・上場企業に納品する立場なのに調べられるのはなぜ?」

「大手・上場企業から代金を払ってもらう側なのになぜ調査されるの?」

このように、“信用調査は自社が支払う側になる時だけ”されるものと思っている方がいますが、そうではありません。大手・上場企業は、あらゆる取引先を調べます。

そして実は、仕入先の調査は、販売先の調査よりも厳しい場合があります。

万が一、仕入でトラブルが発生すると、商品の受け取りに遅れやストップがかかり、自社製品の製造・販売にも遅れも出ます。そしてそれが、多くの消費者や販売先にも影響し、自社の信用問題にもつながるからです。

仕入先も厳しく調べることを、知っておいてください。

 

コロナ以降、大手・上場企業の取引審査は厳しくなっている

コロナ以降、大手・上場企業の取引審査は厳しくなっている|会社信用ドットコム

ここまで、元調査員としての経験から、大手・上場企業との取引で行われる信用調査についてお伝えしてきました。

私は大手・上場企業の取引審査を行う部署の方とお話させていただくことも多いのですが、実はコロナ以降、この取引審査がとても厳しくなっています。

コロナ後も業績回復が進まない企業や、コロナ時に調達した融資の返済が厳しい企業は多いですし、倒産も増えているからですね。

そのような中で、信用調査を拒否したり、調査で自社の良さを十分理解してもらえなければ、せっかくの大手・上場企業との取引を逃してしまいます。

取引をしてもらえなかったり、少額しか取引してもらえなかったり、直接取引ではなく代理店経由になってしまうのは、信用調査の対応の仕方が原因であることも多いので、十分注意してください。

取引審査が厳しいからこそ、しっかり信用調査対策をして、大手・上場企業との取引を勝ち取りましょう!

この記事が皆さまの取引のお役に立てれば、元調査員として嬉しく思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
 
会社信用ドットコム代表 佐藤絵梨子


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