このような疑問にお答えします。
信用調査の「評点」の実力。
みなさまは本当に理解しているでしょうか?
「評点」は、
取引先の審査から銀行融資、官公庁まで、企業活動の様々な場面で活用される重要な"モノサシ"です。
単なる点数ではなく、あなたの会社のビジネスチャンスを広げる起爆剤です。
「どうすれば高評点を取れますか?」
そんなご相談をよくいただきますので、本記事でお伝えしますね。
この記事を書いている私は、企業信用調査会社(株)東京商工リサーチに10年以上勤め、延べ7,000社以上を調査してきた元・調査員です。
高評点の獲得には、信用調査の評価基準の理解が欠かせません。
ただし、この記事では、こむずかしい評価基準の解説は一切していません!
それよりもっと大切な、調査員が会社を見る時の「視点」をわかりやすく解説しました。
彼らの見るポイントを理解すれば、高評点獲得への道筋が見えてきます。
ぜひ最後までお読みください。
信用調査についてお悩み・お困りごとがあれば、ご相談ください。お力になります。
この記事を書いている私のこと
佐藤絵梨子(さとうえりこ)
会社信用ドットコム代表・会社信用クリエイター
世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。
*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411)
信用調査の「評点」とは?
信用調査会社では、企業に「評点」と呼ばれる点数をつけています。
この評点は、企業の実力や取引の安全性を表す重要な目安です。広く使われています。
基本的な仕組みは、さまざまな評価項目の合計を100点満点として評価し、その合計点を5段階で評価するものです。
「100点満点」とは言いますが、7,000社以上を調査してきた元調査員の私でも、評点が70点以上の会社を見かけることはめったにありませんでした。評価は偏差値のように分布していて、多くの企業は40点台後半から50点前半の範囲に集中しています。
信用調査会社によって評点は違う!
実は、東京商工リサーチや帝国データバンクなど、信用調査会社によって評点のつけ方は異なります。
同じ100点満点でも、各項目の配点や重視するポイントが会社ごとに違うのです。
例えば、東京商工リサーチでは『経営者能力・成長性・安定性・公開性及び総合世評』の4つの視点で評点をつけています。
一方、帝国データバンクでは『業歴・資本構成・規模・損益・資金現況・代表者・企業活力』の7つの視点で評点をつけています。
東京商工リサーチと帝国データバンクの評価基準を以下に掲載しておきますね。
東京商工リサーチの評価基準
帝国データバンクの評価基準
このように、信用調査会社がそれぞれ独自の評価基準を持っています。
評点アップを狙うなら、信用調査会社ごとの評価基準を理解して、それぞれに合わせた対策を取ることが重要になりますね。
こんなにある!評点が使われる場面
「評点は取引先の審査でしか使われない」と思っていませんか?
実は、評点は企業活動のさまざまな場面で活用されています。
例えば、以下のような場面で広く活用されていますね。
評点が使われている場面
- 一般企業の与信審査部門での取引先評価
- 金融機関の与信判断の参考資料
- 官公庁での入札参加資格の審査
- 大手企業の調達部門での仕入先評価
- 経理部門での取引先管理
評点は、企業の経営状況や取引の安全性を表す物差しとして、さまざまな場面で重要な判断材料になっています。
評価基準の全貌を知る!信用調査員の7つの視点
では、信用調査会社は会社のどこをどう見て評点をつけているのでしょうか?
評価基準の全体像を、7つの視点から説明します。
これらの基準を理解することが、高評点獲得への第一歩になりますよ!
数字・数字以外の二刀流評価
信用調査では、決算書の数字だけでなく、数字では表せない情報も評価対象になります。
なぜかというと、数字だけでは会社の「本当の実力」がわからないからです。
決算書の数字は過去の結果を示すものですが、その数字の背景にある「なぜその数字になったのか」という理由が重要です。
例えば、同じ売上増加でも、それが経営者の優れた判断による新規開拓によるものか、一時的な特需なのかによって意味が変わってきます。その売上が取引先との良好な関係によるものか、無理な取引条件によるものかでも、評価は変わってきます。
経営判断や取引関係、さらには問題点や強みなど、数字を見ただけでは判断できないのです。
さらに、その数字が今後も続くのか、良くなるのか、悪化するのか。この将来性を判断するためにも、数字以外のポイントが見られます。
数字で評価されるポイントには、決算書や財務指標がありますね。数字以外で評価されるポイントには、経営者の能力や人柄、社内の雰囲気、取引先との関係性などがあります。
銀行融資に比べると、信用調査会社ではこの数字以外のポイントを重視する傾向が強いです。
専門用語ではこのように表現されることもあります。知っておくと役立つでしょう。
- 定量評価:数値やデータで評価すること。例)売上高や利益、成長率など
- 定性評価:数値で表せない情報を評価すること。例)経営者能力、取引先や銀行との関係性、従業員の士気など
直接取材は序の口!表と裏からの評価
信用調査には「直接調査」と「側面調査」という2つの方法があります。
直接調査は、調査員があなたの会社を訪問して行う取材。側面調査は、インターネット情報の確認や取引先への問い合わせやなど、間接的な方法で情報を集める調査です。
評点は、この両方の調査結果を総合して決まります。
あなたの会社の評価には、取材での回答に加えて、取引先からの評判や業界での知名度なども大きく関わってくるのですね。
決算書は「裏側」と「個性」がカギ
決算書は単なる数字の羅列ではありません。そこには経営者の考え方や会社の個性が表れています。
信用調査では、3期分以上の決算書を見比べ、数字の推移から経営の特徴を読み取ります。
なぜ売上が増加したのか、なぜ利益率が改善したのか。その理由や背景にある”経営判断”をよく見ています。
資金の使い方や調達方法からは、経営者の考え方も見えてきます。
このように決算書には、あなたの会社の経営判断や特徴が表れているものとして評価されるのです。
過去・現在・未来の3軸判定
信用調査は、過去・現在・未来という3つの時間軸で評価を行います。
過去の実績、現在の状況、そして将来の可能性。この3つのポイントをバランスよく見ることで、会社の本当の実力を判断しているのです。
とくに重視されるのは将来性ですね。
たとえ過去や現在の数字が良くなくても、将来性が高く評価されれば、総合評価は大きくプラスになる可能性があります。
逆に、現在は良くても将来性に不安があれば、評価は下がってしまいます。
調査取材で「将来のことなんてわからない」と答える経営者は、将来への展望がない会社だと判断されてしまいます。
資金繰りは評価の核心
会社は資金が続く限り存続できます。逆に、資金がなくなれば存続できません。
ですので、信用調査では資金繰りの状況が最も重要な評価ポイントの1つになっています。
現預金の残高だけでなく、資金の調達力や返済能力まで、細かく評価の対象になります。
金融機関との関係も評価の重要なポイントです。借入金の返済状況はもちろん、新規融資を受けられる関係が築けているかどうかまでチェックされます。
また、経営者の資金管理に対する考え方や、将来の資金計画の具体性も、あなたの会社の評価を左右する重要ポイントとして見られています。
業界や規模が変われば評価基準も変わる
業界によって重視される評価ポイントは異なります。
製造業では品質管理体制、IT業界ではセキュリティ対策、建設業では安全管理体制というように、業界特有の評価基準が存在します。
また、企業規模によっても重視する評価ポイントが変わります。大企業には大企業の、小規模企業には小規模企業の評価基準があります。
自社の業界と規模に応じた適切な対策を取ることが必要になりますね。
会社の評価は経営者で決まる
どんなに良い商品やサービスがあっても、経営者に不安があれば評価は下がります。
なぜなら、会社の将来は経営者の手腕にかかっているからです。
経営者の判断力、リーダーシップ、業界への理解度、そして従業員や取引先との関係づくり。すべてが評価の対象となります。
会社の強みを活かせるかどうかも、結局は経営者次第です。
とくに重視されるのが説明力です。
会社の状況や将来の展望をしっかりと説明できない経営者は、厳しい評価を受けます。
例えば、決算数値の変動理由が説明できない、業界動向を踏まえた事業計画が描けない、といった場合は評価が下がりやすいです。逆に、自社の強みや課題をしっかり把握して、具体的な展望を示せることが大切ですね。
信用調査では、経営者としての総合的な力が、あなたの会社の評価を大きく左右します。
高評点を勝ち取る!これで評価を変える実践ポイント
調査員の評価視点は理解できましたか?
ここでは、高評点を獲得するための具体的な対策をご紹介します。
6つの実践ポイントを押さえることで、着実に評価を上げていきましょう!
「基本力」で信用を勝ち取る
高評点獲得の第一歩は、基本的な体制づくりです。
まずは許認可や登録の管理を徹底しましょう。
更新時期を事前にリストアップし、担当者を決めて管理することが効果的です。建設業許可、古物商許可、宅建業免許など、業界ごとに必要な許認可の更新忘れや年次報告の遅れは、会社の評価で大きなマイナスです。
基本的な管理体制も重要です。
社内規程の整備、情報管理体制の構築、コンプライアンス体制の確立など、会社の土台となる体制づくりも評価のポイントです。
決算公告の掲載も忘れずに。
株式会社は毎年の決算公告が義務付けられています。官報や日刊新聞紙、自社のホームページでの掲載など、法令で定められた方法で確実に開示しましょう。特に電子公告の場合は、公告期間中ずっとホームページで閲覧できる状態を保つことが必要です。
インターネット上の情報も要注意です。
自社ホームページの情報更新を定期的に行い、事業内容や所在地、電話番号などの基本情報は最新の状態に保っておきましょう。クレームや悪い評判がネット上にある場合は、すぐに事実を確認して、必要に応じて対策を取ることが大切です。
このような基本的な対応を確実に行うことで、「きちんとした会社」という印象が強まり、全体評価にもプラスに作用していきます。
本当の実力は"整えて"魅せる
高評価獲得の次なる一手は、見た目や雰囲気をとにかく”整える”ことです。
数字”以外”で評価される「定性評価」の対策ですね。
調査員はあなたの会社に電話をした時点、外観を見た時点から評価を始めています。つまり、会社に足を踏み入れる前から、高評点獲得のチャンスは始まっているのです。
具体的な対策として、まずは職場の整理整頓から始めましょう。
通路や階段に物を置かない、在庫は決められた場所で管理する、書類は整然と保管するなど、基本的な環境整備を徹底しましょう。
社内の雰囲気づくりも重要です。
従業員の挨拶や身だしなみを整える、活気ある職場づくりを心がける、来客や電話の応対を丁寧にするなど、日々の基本動作も見直しておきましょう。
とくに来客対応では、受付での案内方法、応接室の整備、お茶の出し方まで気を配ってください。
「普段から取引先にこのような良くない対応をしているに違いない」とマイナスの印象を持たれないように要注意です。
小さな心配りの積み重ねが、自然と高評価につながっていきますよ。
会社運営の"底力"を見せつける
高評点獲得の次なる一手は、会社の運営力をアピールする対策をしておくことです。
取引先との関係では、支払期日を必ず順守する、クレーム対応は迅速・丁寧に行う、商談では事前準備を万全にするなど、基本に忠実な対応を心がけましょう。
さらに、取引先とコミュニケーションを密に取る、困ったときには率先して助ける、業界の情報交換を積極的に行うなど、信頼関係を深める取り組みも効果的です。
取引基盤の安定性も重要なポイントです。
特定の取引先への依存度を下げる、業界内での確固たる位置づけを築く、サプライチェーンでの重要性を高めるなど、着実な事業基盤づくりを進めましょう。
日々の地道な取り組みを継続することで、取引先から高い信頼を勝ち取り、安定安全な取引ができる会社として、信用調査でも高評価を獲得できるでしょう。
圧倒的な差は”業界特性”でつける
高評点獲得のさらる一手は、業界特性に応じた対策で強みをアピールことです。
業界ごとに求められる体制は異なります。
例えば、製造業ならISO認証取得、IT企業ならPマーク取得など、業界標準の認証や資格を取得することで、評価は大きく上がります。
とくに重要なのは、その業界で重視される管理体制づくりです。
品質管理、情報セキュリティ、安全管理など、業界特性に応じた体制を整えることで、他社との違いを打ち出せます。
管理体制は必ず評価の対象になります。業界に合わせた体制づくりをしっかりと進めましょう。
財務で評価を突き抜けろ!
高評点獲得を次なる一手は、財務体質を常に高め、その強みを的確に説明することです。
財務評価を高めるには、単に数字を良くするだけでなく、その背景をしっかり説明できることが重要です。
売上や利益の増加理由、今後の見通しなど、ストーリー性のある説明を準備しましょう。
とくに注意すべきは資金繰りの説明です。現在の財務状況だけでなく、将来の資金計画もしっかり説明できることが大切です。
金融機関との良好な関係性も積極的にアピールしましょう。
ただし、財務内容に問題がある場合は、説明力だけでは評価アップに限界があります。基本となる財務体質の改善努力も必要です。
経営者力で高評価を制覇する
高評点を確実にものにする最後の一手は、経営者力を磨いて見せつけることです。
経営者の評価は、会社の評価を大きく左右します。
まずは約束を必ず守る、誠実に対応する、説明責任をしっかり果たすなど、経営者としての人間性が問われます。会社の状況を正確に把握して、決算書の数字から従業員の様子まで、すべての情報を説明できるようにしておきましょう。
経営判断の理由や将来の展望も、具体的に説明できることが重要です。「なぜその判断をしたのか」「今後どのように発展させていくのか」をはっきり示せることで、経営者としての手腕が評価されます。
組織づくりも大切です。リーダーシップを発揮して従業員をまとめ、計画的な人材育成を進め、後継者の育成にも取り組む。このような経営者としての総合力が評価の対象となります。
とくに重要なのが危機への対応力です。問題が発生した時の適切な対応、リスクへの備え、従業員や取引先との良好な関係づくりなど、経営者としての器量が試されます。
このように、経営者自身の人間性と経営力、そして将来を見据えた取り組みが、確実な高評価獲得につながります。
これがダメなら0点!企業は情報の”見せ方”が命
最後に大切なことをお伝えします。
それは、同じ内容でも、情報の見せ方で評点が大きく変わることです。
なぜ情報の見せ方で評点が変わるのかというと、評価する側は、提供された情報をもとに判断するしかないからです。
調査員として働いていた頃、実力は十分あるのに、「情報をどう伝えるか」という見せ方が良くないために低い評価を受けてしまう会社をたくさん見てきました。
重要なのは、相手が知りたい情報を適切な表現でわかりやすく伝えること。
それができなければ、あなたの会社の本当の実力は相手に伝わりません。
本当は実力があっても、高評点ではなく、低評点になる可能性があるのです。
例えば、数字が悪化している場合は、その理由と改善策をセットで説明する。
将来の計画を話す時は、「どうしてその計画にしたのか」「本当に実現できるのか」、具体的な理由と実現の可能性を相手に理解してもらえるように伝える。
このような情報の出し方が、評価を大きく左右します。
大事なことですので繰り返しになりますが、
自社の実力を効果的に伝えられるかどうかで、評価は180度変わってしまいます。
「どの情報をどう伝えるか」しっかり準備をして信用調査を受けてください。
ご相談やアドバイスが必要でしたら、お気軽にご相談ください。元調査員の経験を活かし、お力になります。
高評点の獲得は難しいことではありません。
評価基準を理解し、適切な対策を講じることで、必ず実現できます。
この記事がみなさまの評価アップのお役に立てれば嬉しいです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。