このような疑問にお答えします。
東京商工リサーチや帝国データバンクが信用調査に来る。今後新しく取引をする企業が取引審査をしている。
そんな時、決算書を出してほしいと言われたことがあると思います。
信用調査では決算書のどこを見るのか?どんな視点で見るのか?気になりますよね。
そこで本日は、信用調査で決算書をどう見るのかを徹底解説する記事を書きました。
この記事を書いているわたしは、企業信用調査会社(株)東京商工リサーチの元・調査員です。10年間で延べ7,000社以上を調査した実績があります。
実は、高評価を勝ち取る会社は決算書の見せ方が違います。そんな高評価を勝ち取る決算書の見せ方も解説しました。
信用調査対策を万全にしておきたい社長様は必読の内容です。
ぜひ最後までお読みくださいね。
この記事を書いている私のこと
佐藤絵梨子/会社信用ドットコム代表
世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。
*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411)
■メディア掲載情報
▷SMBCグループの経営層向け会報誌『SMBCマネジメントプラス』2024年12月号
▷日本実業出版社『企業実務』2024年12月号 など
10年間で延べ7,000社以上の調査経験から導き出した対策。多くの社長様から選ばれています
なぜ信用調査で決算書を見るか
決算書を見るのは、その会社の経営成績がわかるからです。
「安全な会社かどうか」を数字から読み解くこともできますね。
どちらも重要な情報ですので、信用調査では決算書がチェックされます。
信用調査会社が決算書で重視するポイントは?
信用調査会社が決算書のどこをどう重視して見ているか、確認しておきましょう。
決算数字とその増減
信用調査会社が決算書で重視するポイントの1つ目は、決算書の数字とその増減です。
1期分だけでなく、数期分の決算書を比較し、「過去と現在でどのように変わったのか」を確認します。そして、その変化の理由もチェックします。
例えば、売上高が増加している場合、その理由は何か?現預金が減少している理由は?のように分析します。
信用調査では、数字が変動した理由を明確に説明すると良いでしょう。
資金繰りに問題がないか
信用調査会社が決算書で重視するポイントの2つ目は、資金繰りに問題がないかです。
会社の資金繰りに問題があると、支払いができなくなり、最終的には倒産してしまいます。
そのため、資金繰りに悪影響を与える項目の増減や指標の変化は、特に厳しくチェックされます
問題なく資金調達ができるか
信用調査会社が決算書で重視するポイントの3つ目は、問題なく資金調達ができるかです。
現在の調達額は適正か、借入に依存しすぎていないか、今後は銀行から問題なく資金を調達できそうか、などが見られています。
会社経営には資金が必要ですから、資金調達に関連する数値や指標は厳しくチェックされます。
社長の考えや個性
信用調査会社が決算書で重視するポイントの4つ目は、社長の考えや個性です。
例えば、単純に業界平均と比較して“良い悪い”を判断するのではなく、“この社長は慎重な方だから、常に借入を多めにしている”など、社長の考え方を踏まえて決算書を見ています。
信用調査では、「こういう考えで資金繰りを行っている」と、社長の方針を伝えることが大切です。
将来の予測
信用調査会社が決算書で重視するポイントの5つ目は、将来予測です。
過去数期分の決算書を比較して「昔と今でどう変わったのか」を確認した後、「今後はどうなるのか」チェックされます。
もし、経営状況が危ない・不明瞭と判断されれば、詳細を探るような質問がされることもあります。
将来の予測にプラスになる情報があれば、信用調査の際に積極的に伝えましょう。
記事を最後までお読みいただくと、最適な伝え方がわかります。
業界平均との比較
信用調査会社が決算書で重視するポイントの6つ目は、業界平均との比較です。
社長の個性や考えを考慮しつつも、業界平均値は重要な参考指標となります。決算書を見る際、「業界平均と比べて数値が大きく離れていないか」はチェックされますね。
業界平均と大きく異なる数値がある場合、その理由を説明できるなら、ぜひ伝えておくと良いでしょう。
信用調査会社が決算書でよく見る項目
信用調査会社が決算書で注意して見てくる項目は以下の通りです。損益計算書、貸借対照表どちらも大切なので、しっかり確認してください。
損益計算書で見られる項目
損益計算書では1年間の稼ぐ力が見られています。信用調査でとくに注意して見られる項目をご紹介します。
売上高
損益計算書でよく見られるポイントの1つ目は、売上高です。
売上高は過去と比較して伸びているか、安定して確保できているか、が見られます。
増減の理由もチェックされます。特に、売上高が減少している場合は厳しく審査される傾向があります。
利益
損益計算書でよく見られるポイントの2つ目は、利益です。
売上高と同様に、過去と比較して利益が増加しているか、安定しているかが評価されます。増減の理由も確認されます。
利益が減少していたり、赤字になっている場合は、特に厳しく見られます。
利益率
損益計算書でよく見られるポイントの3つ目は、利益率です。
利益率とは、売上高に対する利益の割合のことです。
過去と比較して利益率が上昇しているか、安定しているかが評価されます。増減の理由も注意深くチェックされます。
利益率が下がっている場合は、厳しい評価になる傾向があります。
製造原価や販管費
損益計算書でよく見られるポイントの4つ目は、製造原価や販管費です。
製造原価や販管費の増減は、利益や利益率にも影響を与えます。過去と比較して、増減があった項目やその理由を確認されます。
とくに、急激な増減があった項目や新たに発生した項目は注意深く見られます。
数値の内訳を把握できるように、製造原価報告書や販管費明細を提出することをおすすめします。
貸借対照表で見られる項目
貸借対照表では財務状況や会社の安定性が見られています。信用調査でとくに注意して見られる項目をご紹介します。
現預金
貸借対照表で注意して見られるポイントの1つ目は、現預金です。
経営に必要な現預金が十分に確保されているかが重要です。
現預金が少ない、または過去と比べて減少している場合、その理由が確認されます。
現預金が不足していると、資金繰りに行き詰まる危険性を心配されますので、「資金調達できる」といったプラスの情報があれば伝えておくと良いでしょう。
純資産
貸借対照表で注意して見られるポイントの2つ目は、純資産です。
まず、純資産がマイナスではなくプラスであるかが確認されます。
プラスの場合でも、自己資本比率(純資産÷総資産×100%)が安全な水準に達しているかが見られます。
債務超過や資本欠損の場合は、特に厳しく内容を確認されます。
売掛金・買掛金
貸借対照表で注意して見られるポイントの3つ目は、売掛金・買掛金です。
売掛金や買掛金をチェックし、回収までの期間が過去に比べて長くなっていないか、支払いが早くなっていないかを確認されます。
期間に変化がある場合、その理由も求められます。
回収と支払の期間を比較し、「支払が回収よりも早い」という視点でも見られます。
棚卸資産(在庫)
貸借対照表で注意して見られるポイントの4つ目は、棚卸資産(在庫)です。
長期間在庫として残っていないか、販売見込みのない不良在庫が存在しないかが確認されます。
過去と比べて販売までの期間が長くなっている場合、その理由を確認され、厳しく見られることがあります。
借入金
貸借対照表で注意して見られるポイントの5つ目は、借入金です。
事業規模に対して適正な水準か、過去に比べて大きく増加していないかが見られます。
借入の内訳(どの銀行から・いくら借りているか)も確認されます。
銀行以外からの借入がある場合、調達先や使用用途を確認され、厳しい評価を受けることがあります。
借入金を返済できる能力も重要な評価ポイントになっています。
固定資産の内容
貸借対照表で注意して見られるポイントの6つ目は、固定資産の内容です。
どのような固定資産があるか、購入や売却の状況はどうか、資金調達時に担保として活用できるかが確認されます。
土地や建物は、取得時と現在の価値が変わっていないか、現在の価値がどの程度かもチェックされます。
ほかにも決算書で見るポイントはありますが、すべてはお伝えできないので、これくらいにしておきます。
「自社の決算書はどこが見られるか教えてほしい」という方は個別にご相談ください。的確なアドバイスをさせていただきます。
数字が悪い時は信用調査で決算書を見せるべき?
数字が悪いから決算書は見せない、というのはおすすめしません。
「情報公開性が低い」とマイナス評価になるからです。
それだけでなく、「実はものすごく悪いのでは?」「悪いから出したくないのでは?」と必要以上に心配される危険性もあります。
実態より悪く思われたら大変です。
決算書の数字が悪い時は、決算書は見せつつ、次の3つの方法で評価マイナスを防ぐことをおすすめします。
- 数字が悪い理由を説明する
- 将来のプラス情報を伝える
- 経営者能力が高いことをアピールする
まず大前提として、数字が悪い理由は必ず説明しましょう。一時的に数字が悪いだけなら、理由を説明すれば大きな評価マイナスを防げる可能性があります。
「今後は回復する」というような、将来のプラス情報もあれば必ず伝えてください。
そして、「この社長なら必ず今の悪い状況を挽回するだろうな」と思ってもらうために、自分(社長)の経営能力が高いことやヤル気をこれでもかとアピールしておきましょう。
高評価を勝ち取る決算書の見せ方
信用調査でできるだけ高評価を取るために、どのように決算書を見せればよいかお伝えします。
正しい内容説明ができないなら0点
高評価を勝ち取る決算書の見せ方の1つ目は、決算書の内容を正しく説明することです。
決算書を出すだけで、説明しないのは絶対にダメです。
「財務分析のプロは数字を見ただけで全て理解する」と思っている社長様がいらっしゃいますが、とんでもありません!
決算書の内容説明がないと、決算書を見た人は「なぜその数字になったのか」「なぜ数字が増減したか」正しい判断ができないです。
説明しないと、決算書を見た人は「たぶんこうだろう」と勝手に理由を推測します。ネガティブな理由を勝手に推測されたら、一大事です。
とくに、過去と比べて大きく変化した数字や、その期だけ特別に発生した数字などは、理由を丁寧に説明しておきましょう。
将来の計画や数字が成功の鍵
高評価を勝ち取る決算書の見せ方の2つ目は、将来の計画や数字を伝えることです。
会社の将来をしっかり考えている点がプラス評価になります。
今状況が悪くても、将来の明るい情報があれば、マイナス評価も挽回できますね。
例えば、「今後は~~~をするから売上が伸びる」「これから黒字が続いて、期末には借入を●●●円まで返済できる」のような具体的な話ができるといいですね。
決算書を見る側も、数字だけで将来を完璧に予想するのは難しいです。将来予測の参考になる情報は漏れなく伝えておきましょう。
社長に自信がなければ台無し
高評価を勝ち取る決算書の見せ方の3つ目は、社長の熱意を存分に伝えることです。
将来計画や計画数値を伝えても、社長に能力やヤル気が感じられなければ、「本当に達成できるのか?」と心配されます。
「必ずやり遂げる」強い想いもしっかり伝えておきましょう。
信用調査では経営者の言動が1番見られています。気を抜いたら負けですよ!
企業は情報の”出し方”が命
信用調査会社の元・調査員として断言します。
情報の出し方次第で、企業評価は変えることができます。
例えば、ただ決算書を提出するだけでなく、その内容について適切な説明を加えることで、企業に対する評価は大きく変わります。さらに、その説明の仕方によっても評価は変化するのです。
決算書のどこが見られるか、相手は何を知りたがっているかを考え、必要な情報を正しく伝えることが必要ですね。
この記事では信用調査における決算書の見られるポイントをお伝えしましたが、融資審査、補助金審査、株主向けの説明など、相手によっても重視されるポイントは異なります。
相手の特性を理解した適切な見せ方ができれば、資金調達でも信用力アップでも、望む成果を勝ち取ることができるようになりますよ。
「うちの場合は決算書のどこが見られるのか」
「自社に最適な見せ方がわからない」
もし、このようなお悩みがあれば、ご相談ください。
当事務所「会社信用ドットコム」では、信用調査対策から企業評価アップ、決算書の説明方法まで、元調査員の経験とノウハウで幅広くご相談をお受けしています。お気軽にお問い合わせください。
貴社が信用調査をはじめとするあらゆる場面で高評価を勝ち取り、事業を成長させていかれることを心より願っています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。