このようなお悩みに効く情報をお届けします。
企業の倒産が増えていますね。
良さそうに見えても実は苦しい。じわじわと悪くなっている。そんな会社も増えています。
与信管理をしないリスクは相当高まってます。
「少し前は問題なかった」
「あの会社は大丈夫だろう」
そんな甘い考えが通用しなくなってきました。
そこで本日は、「与信管理体制の整え方」を解説したスタートガイドをお届けします。
この記事を書いている私は、信用調査会社(株)東京商工リサーチの元・調査員です。調査員1,000人中、営業成績1位を獲得した与信管理のプロフェッショナルです。
与信管理は、単なる未回収債権撲滅の手段ではありません。
重要な経営戦略です。
企業全体の信用力を高め、安定した取引先との関係を維持するために欠かせない仕組みです。
これから与信管理を始める方、与信管理体制を見直す方も、ぜひ最後までお読みください。
<メディア掲載情報>
与信管理や信用調査のテーマでも掲載されています
■SMBCグループの経営層向け会報誌『SMBCマネジメントプラス』2024年12月号
「危険な取引先・優良な取引先がわかる 決算数字と信用調査の活用法」(P7~9)
■日本実業出版社『企業実務』2024年12月号
「元調査員が教える!信用調査会社の上手な使い方」(P70~72)
※メディア情報一覧はこちら
与信管理は「経営戦略」です
安心安全な取引に与信管理は欠かせません。
焦付きや納期問題など、取引のトラブルを防ぐだけでなく、取引先の”その先の取引先”から受ける連鎖的な影響も防ぎます。
さらに、与信管理をしていれば、銀行や株主、他の取引先から「取引先の管理体制が整った良い会社」「焦付きや財務悪化の防止に真剣」と信頼感を持ってもらえます。
「安心安全な取引」
「自社の信用を守る」
そのためにも、経営戦略の一環としてしっかり与信管理をしておきましょう。
与信管理が必要な理由を詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しています。
いざスタート!与信管理の始め方ガイド
そんな方は、次のステップ1~4の順番に進めていくと、万全の与信管理体制が整いますよ。
ステップ1:社内体制の整備
与信管理を効果的に行うためには、社内体制の整備が不可欠です。
ステップ1「社内体制の整備」では、主に以下のポイントを整備しましょう。
担当部署と責任者の決定
営業、経理、管理部門など、与信管理を行う部署をピックアップし、連携を強化します。与信管理の担当者も決めましょう。
担当者は取引先の信用情報を収集し、社内方針に基づいて管理策を実行します。
定期的な社内教育や情報共有も行いましょう。
必要なツールと予算の明確化
取引先の信用情報をリアルタイムで管理するための「管理ツール」を決めましょう。
社内の表計算ソフトや管理システムだけでなく、外部データベースなども必要に応じて活用していく必要があります。
暫定的なルールの整備
いま現在、与信管理のルールがない場合は、簡易的にでも取引先の評価基準や支払条件を整えておきましょう。
本格的なルールが決まるまでの間に、問題が起きても対処できるようにしておいてください。
ステップ2:管理ルールの策定
与信管理を効果的に進めるためには、明確なルール設定が必要です。
ステップ1「管理ルールの策定」では、主に以下のルールを決めておきましょう。
情報収集方法の決定
どのように取引先の情報収集をするのかを決めておきましょう。
与信管理の情報収集には次の2つの方法があります。うまく組み合わせて網羅的に情報を集めましょう。
社内調査:営業部門や審査部門で情報を集めます。取引先への直接調査から、売掛金の回収状況や納期遵守の状況など、取引データを集め分析します。
外部調査:信用調査会社への調査依頼、官公庁データ(商業登記、不動産登記など)、銀行や他の取引先からの情報収集など、社内では集められない情報を集め分析します。
与信枠の設定
各取引先に対して売掛金の上限を設定します。
与信枠を超えないよう管理することが、過剰なリスクを避けるための基本です。
支払い条件や納期の明確化
支払いサイトや遅れが発生した際のペナルティを事前に取り決め、取引先と確認します。
万が一の売掛回収や納期が送れば場合に、すばやく対応できるようにしておきます。
契約書の確認
リスクを減らすために適切な条項が設定されているか、契約書内容をチェックしましょう。
例えば、解除条項・期限の利益喪失条項を盛り込んでおくと、トラブル発生時にダメージを軽減できます。
不備がないか定期的に見直しを行うことも必要です。必要に応じて法的な専門家からアドバイスも受けましょう。
ステップ3:取引先リストと評価基準の整備
取引先の管理は、新規先と既存先で分けて考えることが重要です。
ステップ3「取引先リストと評価基準の整備」では、新規先・既存先それぞれで与信管理の方法を決めておきましょう。
新規取引先の評価
新規取引先の場合は、情報を網羅的に集め、慎重に分析することが重要です。
初回取引の前に信用調査会社のレポートを取得し、自社で収集した情報とあわせて広く情報を集め、分析すると良いでしょう。
また、必要に応じて面談や現地訪問を実施し、企業の実態を把握することも必要です。
既存取引先の再評価
既存取引先の場合は、半年から1年のように期間を決めて、過去の支払い実績や財務状況を定期的に見直します。
状況に応じて、信用調査会社に定期調査を依頼することで、潜在的なリスクを早期に発見することが大切です。
ステップ4:定期的なモニタリング体制の構築
取引先の信用状況はつねに変動します。
ステップ4「定期的なモニタリング体制の構築」では、モニタリングの具体的なルールを決めておきましょう。
定期的な財務データの確認
決算や半期決算の後など、年に1〜2回、売上高や利益率などの財務データをチェックし、取引先の経営状況を把握します。
必要に応じて、与信枠や取引可否の見直しも必要です。
業界動向と立ち位置の確認
取引先が属する業界全体の動向をチェックし、現状の立ち位置の確認と、今後どうなりそうかを予想します。
取引先の動向を注視しながら、成長予想の業界では取引枠拡大の検討をし、下降予想の業界では取引枠の縮小等を視野にいれるなど、先回りして機会獲得やリスク発生予防につなげます。
信用調査会社の活用
信用調査会社から最新のレポートを定期的に取得し、外部からも取引先の最新情報を確認します。
自社だけでは収集できなかったリスクを早期に発見し、取引可否や取引枠の見直しの参考にします。
事前に決定!トラブル発生時の対処法
トラブルが発生した場合は、すばやく対応することが重要です。
事前にトラブル発生時にどう対応するか、ルールを決めておきましょう。
未払い発生時
支払い期日を確認し、再度支払い依頼を行います。
電話やメールなどの軽い催促から始め、それでも支払いが遅延したままの場合は、請求書の再送付や督促状の送付をします。
内容証明郵便を利用すると、法的手続きの証拠としても有効です。
それでも支払いがない場合は、一定期間内に取引停止や法的措置を検討します。
納期遅れ
仕入先の場合は、納期遅れへの対応も考えておきましょう。
複数の供給元の確保や、在庫に余裕を持たせることも有効です。
ほかの顧客や取引先にも影響が出るケースも想定して、状況説明や情報開示のルールも決めておきましょう。
取引停止基準の設定
トラブルを未然に防ぐためには、具体的な取引停止基準を決めておくことが重要です。
基準を設定する際には、主に以下のポイントを考えておきましょう。
- 未払い期間:支払遅延が30日以上続いた場合など、具体的な期限を設定
- 未払金額の規模:取引額に対して一定割合以上の未払いが発生した場合
- 取引先の財務状況:財務データの悪化や倒産リスクが高まった場合
このような基準をあらかじめ取引先と共有しておくことで、トラブル発生時にもすばやく公平な対応ができるようになります。
与信管理で失敗しないためのポイント
与信管理の失敗には、いくつか共通したパターンがあります。
これまで多くの企業の与信管理をサポートしてきた経験から、「これは避けるべき!」と感じた失敗ポイントを厳選してご紹介します。
大手企業や長年の取引先を甘く見ない!
「大手企業だから安心」「長年の付き合いがあるから大丈夫」といった思い込みは禁物です。
大手企業でも経営状況が悪化している場合や、急に業績が悪くなるケースは珍しくありません。一見問題がないように見える取引先でも、実は経営が苦しいこともあります。
信頼関係だけに頼るのではなく、定期的に取引先の状況を確認することが重要です。
与信管理は、信頼を裏付けるデータや情報をしっかり確認することがポイントになります。
第三者情報を徹底活用する
自社での情報収集には限界があります。情報の見落としや情報収集の遅れで大ダメージを負うケースも少なくありません。
信用調査会社や官公庁データなど、外部情報も積極的に活用しましょう。
例えば、東京商工リサーチや帝国データバンクに調査を依頼したり、データベースを利用したりすることで、自社では把握しきれない情報を補完できます。
客観的なデータや専門家の分析を参考にすることで、より正確な与信判断ができるようにもなりますよ。
自社データと外部データは組み合わせが命
取引先の与信を正しく判断するには、自社データと外部データを効果的に組み合わせることが欠かせません。
例えば、自社では把握しきれない情報は外部調査を活用して補います。一方で、外部調査だけに頼らず、自社で蓄積してきた取引データも重視することが大切です。
自社と外部のデータをどちらも上手く活用することで、与信管理の精度をさらに高めることができます。
7,000社を調査した与信管理のプロからアドバイス
私は、信用調査会社でNo.1の成績を収めた与信管理のプロとして、多くの企業の与信管理体制を見てきました。
その経験から感じるのは、
経営戦略として与信管理に力を入れている会社は、安定した取引基盤を持ち、会社を順調に成長させ、まわりから信用も獲得しているということです。
この記事を読んでいるみなさまも、今回ご紹介したステップを順に実践して、強い与信管理体制をつくり上げ、信頼性の高い取引基盤を築いてください。
「自社の与信管理体制をどう整えるべきか」
「取引先評価の基準をどう決めるべきか」
「外部データを効率よく活用したい」
そんなお悩みがある場合は、専門家のアドバイスを受けることもおすすめします。
自社に合った与信管理体制の構築や、より精度の高い管理が実現できます。
当事務所「会社信用ドットコム」でも、与信管理に関するご相談をお受けしています。お気軽にお問い合わせください。
取引先の与信管理を怠ると、大ダメージや取り返しのつかない危険リスクが高まります。
みなさまが安心・安全な取引を土台に、さらに会社を成長させていけることを心より願っています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。