調査員時代から現在まで、私が出会ってきた『地域で愛される企業』は、資金調達も取引も上手くいっています。
なぜでしょうか?
実は、地域で愛される企業には、「企業を見る側」から高評価を勝ち取る特別な力があるのです。
本記事では、地域で愛される企業がうまくいく秘密や、経営者の皆さまがマネできるポイントをお伝えします。
この記事を書いている私のプロフィール
佐藤絵梨子(さとうえりこ)
会社信用ドットコム代表・会社信用クリエイター
世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。
*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411)
調査員時代にタクシー運転手から学んだ「地域で愛される企業の強さ」
私が調査員をしていた頃、とある金属加工会社の調査取材をさせていただきました。
創業から100年以上の歴史を持ち、当時の社長は4代目にあたる方という、まさに老舗企業。
社屋は最寄り駅からかなり離れた場所にあり、そこまでのバスは通っていません。
タクシーを利用したのですが、当時はまだ今ほど車にカーナビが普及していなかった時代。周囲には目立つ建物もなく、住所と会社名を伝えるしかありませんでした。
すると、運転手の方はすぐに「あぁ、あの会社ね。この辺の人はみんな知ってるよ」とおっしゃったのです。
東京のような都市部では、会社は至るところにあります。よほどのことがない限り、近隣住民が1社1社覚えていることはありません。
ですが、この会社のように地域で愛されている企業の場合は、違いました。
道中、運転手の方はその会社について色々と話してくださいました。
「あそこの工場ではこの辺の人がたくさん働いているんだよ」
「社長はインタビューを受けると、いつも地元の話をしててね」
「今はこうだけど、昔はこんな製品も作っていたんだよね」
「先代の社長は町内会によく顔を出す人でさ」
どれもその会社に対して好意的な話ばかり。言葉の端々から、その会社が地域に深く浸透し、長年にわたって信頼を得てきた様子が伝わってきました。
会社に着くまでのわずかな間に、企業評価レポートが1件書けてしまう情報を収集できたほどです。
まだ取材をしてもいないのに、私の中では「きっと良い会社に違いない」と評価が一気に高まっていました。
「でも、地元の人は悪く言わないのでは?」と思われるかもしれません。
ところが実際は、この会社とは逆のケースもよくあります。
「リストラがあった」「労働環境が悪いらしい」「給料が低い」「社長が横柄」など、地域の方から厳しい評価を耳にすることは少なくありません。
むしろ、良い話以上に、悪い話のほうが強い感情を伴う分、長く記憶に残るのでしょう。人づてに聞くことが多いものです。
だからこそ、地域住民の「好意的な声」はとても貴重で、嘘偽りのない評価の可能性が高い。
そしてそれは、企業を見る側にとって大変参考になるものです。
あなどれない地域住民の声
地域の方々から良い印象を持たれている企業は、それだけで周囲に「信頼できる会社」と思わせる力を持っています。
その会社のことをよく知らない人でも、「地元の人たちがそこまで良く言うなら、きっと良い会社なのだろう」と感じやすくなりますよね。
もしこれが、融資担当者や取引先の担当者だったらどうでしょうか。
「ぜひ取引したい」「積極的に支援したい」という気持ちが自然と生まれるはずです。
実は、大手企業や有名企業が地域でさまざまな活動をしているのも、この力をよく理解しているからです。
たとえばサントリーが行っている水に関する活動は有名ですよね。水源地の環境整備や農家への支援を行い、美しい水を守る取り組みが行われています。
地域や自然環境を守るという本来の目的もありますが、それと同時に「地域とともにある会社」というプラスのイメージを育て、自社の信頼に上手くつなげています。
大手企業ではこれを「CSR(企業の社会的責任)」と呼んで、企業イメージを高めたり、社会やお客様からの信用を得たりするために組織的に力を入れています。
わざわざ大々的に取り組むくらい、“地域からの評価”には大きな影響力があることがわかりますね。
地域の声が「企業評価」になる
会社を見て評価する立場にいると、「他の誰かが良い評価をしている事実」がとても大きな意味を持ちます。
自分自身がその企業を高く評価する理由にもなるからです。
地域の好意的な声は、まさに「他の誰かが良い評価をしている事実」です。
しかも、その企業を近くでずっと見ている地域住民の、ありのままの声の影響力は絶大です。
銀行や取引先、その会社の従業員などと違い、地域住民はその企業と利害関係も損得もありませんから、たとえ厳しいことを言ったところで痛くもかゆくもありません。その地域住民が「あの会社は良い」と言っているのですから、その声は嘘偽りのない信ぴょう性の高い評価というわけです。
実は、会社を見る立場の人間は、とても警戒心が強いです。
融資の面談や取引の商談、信用調査のような場では、みな会社をできるだけよく見せようとしますよね。
なので、企業を見る側は、それを見越して、本来の会社の姿を見極めないといけません。「この情報は本当か」「話を盛っていないか」とじっくり検証します。
「この会社は良いな」と思っても、本当か、と時には不安になることもあります。
そこに「誰かが良い評価をしている」という情報があったら、どうでしょうか。
「他でも良い評価をしてるなら、良いと思った自分のこの評価は間違いない」と自信をもって評価できるのです(※もちろん、じっくり検証はします)。
融資の面談や取引の商談などの場で、良い評価を獲得する企業は、このような「他の誰かが良い評価をしている事実」の使い方がとても上手いですね。
「企業を見る側の人間」は愛され企業にめっぽう弱い
さらに、地域で愛されている企業には、もう1つ素晴らしい力があります。
企業を見る側の人間に「地域から愛されている企業をないがしろにはできない」と思わせる力があるんですね。
たとえば地域に密着した地方銀行や信用金庫では、地域住民や中小企業とのつながりを何よりも大切にしています。このような金融機関にとって、地域で愛されている企業は「応援しなければ」と思わせる存在です。
資金調達で言えば、補助金もそうですね。
国や自治体が管轄する補助金は税金を原資としています。なので、運営側は「できるだけ地域の役立つ企業に支給したい」と思っている。
地域のためになる活動をして、地域から愛される企業なんて、ぜひとも支給したい対象です。
実際、補助金申請のご支援をしていると、地域に根ざした取り組みをしている企業は、補助金を勝ち取れることが多いです。
企業を見る側の人間は「地域からの支持」にめっぽう弱い。
この心理を理解しておくと、資金調達や取引で自社に有利なアピール材料にすることができますよ。
大手に負けない!中小企業ならではの愛され方
ところで、「大手だから地域貢献にお金も人も時間もかけられるのであって、中小企業では難しい」と思った方はいませんか?
それは誤解です。
中小企業だからこそできる“地域に愛される工夫”があります。
たとえば、地元の特産品を原材料に使う。採用では地域の人材を積極的に雇う。経営者自身が町内会活動に顔を出す。地元の学校・団体と連携する。
これも立派な地域貢献です。
むしろ中小企業の方が、大手企業に比べて一般市民との距離も近く、地域に馴染みやすいので、効果が出やすいのではないでしょうか。
小さな積み重ねが、地域からの信頼を確実に育てていきます。
冒頭でご紹介した金属加工会社も、決して大規模な地域貢献をしていたわけではありません。
それでも「地域貢献をしている企業」として高い評価を得ていましたし、取引銀行からも「この地で絶対に支えるべき企業」として信頼を寄せられていました。
さらにポイントとして、自社の取り組みを「数値」で示す工夫をすると、企業を見る側にとってわかりやすくなります。
たとえば、原材料のうち地元産の割合、地元メディアへの掲載回数、地域イベントへの参加頻度、地元出身の従業員比率など。
具体的な数値も一緒に伝えることで、「地域での愛され度」がより具体的に企業を見る側に伝わり、高評価につながります。
「地域で愛されている」のは強力な武器
ここまでお伝えしてきたように、地域から愛されていることは、資金調達や取引の場面で大きな力を発揮します。
この記事をお読みいただいている経営者の皆さまも、ぜひ「どれだけ地域で愛されているか」を積極的に伝えてみてください。
その際は、活動の具体例や数値とともに示すなど、「どう伝えれば相手に深く納得してもらえるか」を考えて、伝え方を工夫してくださいね。
資金調達や取引は、業績数値や財務状況だけで評価されるものではなく、地域での愛され具合のような数字以外の強みも見られています。
地域での愛されれているという"見えにくい強み"を上手く活かして、皆さまが資金や取引を獲得できれば、嬉しく思います。
そして、ますます事業を発展させていかれることを心から願っています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
会社信用ドットコム代表 佐藤絵梨子
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