その低評価、もしかしたら「危ない会社」に見えているからかもしれません。
会社の評価は、外部の視点から非常にシビアに行われます。
本当は良い会社でも、伝え方や見せ方が悪ければ「危ない会社」と判断されることがあるのです。
そこで本日は、このような状況を避けるために、危ない会社に見えてしまう特徴と、それを回避するための具体策を解説します。
この記事を書いている私は、信用調査会社(株)東京商工リサーチで10年間に延べ7,000社以上を調査した元・調査員です。
良い会社なのに悪く見えてしまったり、実力以下の評価をされてしまうことは、会社にとって大変なマイナスです。
スムーズな融資が受けられない、取引先からの信頼を損なう、株主からの評価が下がるなど、重大な影響を及ぼす可能性があります。
しかも、この「危ない会社に見えてしまう現象」は決して他人事ではありません。
油断や甘え、評価されるポイントを知らないことが原因で、どの会社にも起こり得る問題です。
ぜひ最後までお読みいただき、正しい評価を勝ち取るためのヒントをつかんでくださいね。
<メディア掲載情報>
■SMBCグループの経営層向け会報誌『SMBCマネジメントプラス』2024年12月号
「危険な取引先・優良な取引先がわかる 決算数字と信用調査の活用法」(P7~9)
■日本実業出版社『企業実務』2024年12月号
「元調査員が教える!信用調査会社の上手な使い方」(P70~72)
※メディア情報一覧はこちら
危ない会社に見える最悪のデメリットとは?
「危ない会社」に見られると、信用力が低下します。
新たな取引のチャンスを失うだけでなく、既存の取引先からも不安がられる可能性があります。
融資の審査も厳しくなり、株主や投資家からの信頼も損なわれ、資金調達の選択肢は狭くなります。経営の自由度が著しく制限されるでしょう。
優秀な人材の採用にも悪影響が出ます。既存社員の士気は下がり、「将来性がない会社」と見られることで離職率が高まる危険もあります。
このような状況が重なれば、企業として成長機会を逃すどころか、存続そのものが危機にさらされます。
危ない会社に見えてしまう10の特徴
「危ない会社」に見られてしまう会社には、いくつか共通する特徴があります。
調査員として7,000社以上の企業を見てきた経験から、10の特徴を厳選してご紹介します。
業績が不安定に見える
危ない会社に見えてしまう特徴の1つ目は、業績が不安定に見えることです。
売上や利益の変動が大きいと、企業の安定性に疑問を抱かれ、ネガティブな印象を与えることが多いです。とくに急激な増減は、「経営に問題があるのでは?」と見られがちです。
また、決算書や財務データが適切に公開されていない場合、信頼性に欠けると判断され、悪い印象を持たれる原因になります。
もし何か特別な理由がある場合には、積極的に説明したり、改善に向けた努力を見せることが必要です。
資金繰りに不安を与える兆候
危ない会社に見えてしまう特徴の2つ目は、資金繰りに不安を与える兆候があることです。
借入金に頼りすぎている、または支払いの遅延が頻繁に発生している場合、「資金繰りに問題がある」と見なされやすくなります。
さらに、事業全体の安全性に対する信頼も失い、評価が下がる原因になりがちです。
企業の印象を良くするためには、資金繰りの問題を改善しようと努力することが必要です。
不安視される財務情報がある
危ない会社に見えてしまう特徴の3つ目は、不安視される財務情報があることです。
例えば、負債比率が高すぎる場合や、現預金が著しく少ない場合、営業キャッシュフローのマイナスが大きい場合などは、「経営が不安定だ」と見なされることがあります。
企業の安定性や将来性への信頼が揺らぎ、評価が大きく低下する可能性があります。
改善の取り組みを進め、正確で分かりやすい財務情報を提示することが求められるでしょう。
取引先の信頼が揺らぐ状況
危ない会社に見えてしまう特徴の4つ目は、取引先の信頼が揺らぐ状況があることです。
取引先が頻繁に入れ替わる、または長期的な取引関係が続かない企業は、「継続的な信頼関係を築く能力がない」と見なされがちです。
口コミや噂が広まり、顧客や取引先の不満や不備が外部に漏れ出て警戒されることもあります。
主要取引先が倒産するリスクを抱えている場合も、その影響が企業全体に及ぶ可能性があり、警戒されることがあります。
事業の安定性を示すためには、信頼できる取引先との長期的な関係維持が不可欠です。
経営陣の交代や重要人物の退職
危ない会社に見えてしまう特徴の5つ目は、経営陣の交代や重要人物の退職が見られることです。
経営者や役員の頻繁な交代は、「経営が安定していない」「リーダーシップに問題がある」と見なされ、低評価になりやすいです。企業のビジョンや方向性に疑念が生じることもあります。
財務担当者や営業部門の重要人物が突然退職すると、「社内で何か問題が起きているのでは?」と心配されることもあります。場合によっては、経営破たんの前兆と見なされるため、企業としては慎重な対応が必要です。
経営陣の安定を保ち、従業員が長期的に定着する健全な経営体制をつくる必要もあります。もし退職や交代に特別な理由がある場合は、取引先や金融機関にその理由を積極的に伝える努力も必要です。
経営者の「信用」に疑問
危ない会社に見えてしまう特徴の6つ目は、経営者の「信用」に疑問があることです。
経営者の資質が問われる場合、企業全体が「危ない会社」と見なされやすいです。一貫性のない方針を示したり、急激な事業拡大を進めたり、突然の方向転換が目立つケースでは、「経営の方向性が不明確」と警戒されます。
明確で一貫性のあるビジョンを持つこと、また、業界や市場の動向に合わせた慎重な成長戦略を示すことが求められます。
業界や市場への対応力が弱い
危ない会社に見えてしまう特徴の7つ目は、業界や市場への対応力が弱いことです。
市場や業界の変化に適応できていない企業は、「時代に取り残され、成長が見込めない」と見なされることが多いです。とくに、新しいトレンドや技術への対応が遅れると、競争力の低下を心配されます。
ライバルに勝てるイメージが見えない場合も、企業の将来性に対する信頼が薄れ、評価が下がる可能性があります。
つねに変化を意識して、柔軟に対応できる体制を整えることが必要です。
法的リスクが心配される
危ない会社に見えてしまう特徴の8つ目は、法的リスクが心配されることです。
過去の訴訟や行政指導が多いと、「法的に問題がある」と見なされやすいです。とくに契約トラブルが繰り返し発生している場合は、企業の信頼性が大きく損なわれます。
法的な問題発生を予防し、再発防止策を徹底することで、企業の信用力を保つことが求められます。コンプライアンス強化を続けていくことが、評価を向上させるために不可欠です。
社内の士気低下や不満爆発
危ない会社に見えてしまう特徴の9つ目は、社内の士気低下や不満爆発です。
従業員の離職率が高い場合や、社内の雰囲気が悪化している場合は、「職場環境に問題がある」と見なされ警戒されやすいです。とくに、従業員からの不満が多く聞かれる場合は、企業の内部管理に対する信頼が低下します。
従業員の士気が低い場合も、業務の効率や生産性、従業員定着率にも悪影響があると判断され、外部からの評価が下がる原因になります。
定期的な意見交換の場を設けたり、従業員満足度の調査を実施することで、早期に問題を把握し改善に取り組むなどの努力が必要です。
情報開示が不足しがち
危ない会社に見えてしまう特徴の10個目は、情報開示が不足しがちなことです。
会社の財務状況や活動内容が外部にほとんど公開されていない場合、「透明性が欠けている」「不明瞭な企業」として低評価になりやすいです。
最近では、SNSの発達で情報開示に積極的な企業が増え、情報を公開しないことが逆に不安を与えやすくなっています。とくに、決算書や事業内容があまり公開されていない企業は、「何か隠しているのでは?」と疑われやすいです。
信頼を築くためには、積極的に情報を開示することが大切です。
「危ない会社」に見えてしまう会社の10の特徴をまとめます。
「危ない会社」に見えてしまう会社の特徴
- 業績が不安定に見える
- 資金繰りに不安を与える兆候
- 不安視される財務情報がある
- 取引先の信頼が揺らぐ状況
- 経営陣の交代や重要人物の退職
- 経営者の「信用」に疑問
- 業界や市場への対応力が弱い
- 法的リスクが心配される
- 社内の士気低下や不満爆発
- 情報開示が不足しがち
もし本当に危ないなら…まず急ピッチで改善を!
本当は良い会社なのに悪く見られている場合、その原因は「見せ方」にあることが多いです。
企業の強みや実力を相手にしっかり理解してもらえるように、言葉を尽くして伝えることが大切ですね。情報公開性を高めるための努力も必要です。具体的な対策については、次のパートで詳しくお伝えします。
一方で、もし実際に経営が不安定で「危ない会社」と見られている場合には、すぐに改善を進めることが一番大切です。
現状を冷静に分析して、課題や改善点をはっきりさせ、改善策を着実に実行していくことが求められます。取引先や金融機関に改善策を示し、その進捗を定期的に報告して信頼を取り戻していく努力もしましょう。
残念ながら、実際に問題がある場合には、現状より良く見せることはできません。
まずは、改善に向けた努力が絶対に必要です。
危ない会社に見られないために取るべき行動
実態や実力よりも悪く見られないために、どのような対策をしておくべきか。繰り返しになりますが、多くの場合、原因は会社の「見せ方」や「伝え方」にあります。
ここでは、危ない会社に見られないための対策をご紹介します。
定期的な財務情報の公開
危ない会社に見られないための対策の1つ目は、定期的に財務情報を公開することです。
「財務情報を公開したくない」と感じるかもしれませんが、取引先や銀行など、まわりが最も知りたいのは財務情報です。
相手が知りたいことに応えていくのが信頼構築の第一歩。財務データを定期的に共有することで、信頼を確実に勝ち取ることができます。
貸借対照表や損益計算書を決算期ごとに公開し、過去の推移や現状を理解してもらいましょう。将来の計画数値も加えると、信頼感がさらに高まります。
信用を劇的アップする情報発信
危ない会社に見られないための対策の2つ目は、信頼感のある情報発信をすることです。
ホームページでは、経営理念や企業概要、事業内容を明確に発信することが大切です。SNSでは日々の活動や成長を感じさせる変化を意識して発信すると良いでしょう。
具体的な数字や事例で実績を示すと、信頼感が一層高まりますね。定期的なニュースレターの配信も効果的です。
ちなみにですが、信用調査会社や大手企業の取引審査では、ホームページの更新頻度やSNSの発信内容から企業の活動状況をくみ取り、評価に反映することがあります。しっかり取り組むことが大切です。
「実力を正しく伝える力」を磨く
危ない会社に見られないための対策の3つ目は、実力を正しく伝える力を磨くことです。
本当は良い会社でも、それが相手に伝わらなければ、正しく評価されません。実力以下に見られないためにも、強みや成果を「相手に理解されるように伝える技術」を磨きましょう。
ホームページや信用調査票、営業資料、事業計画書、さらには融資や商談など、企業はさまざまな場面で見られ、評価されています。
それぞれの場面で自社が高く評価されるポイントを見極め、相手にそれを伝える最適な表現や伝え方を真剣に考え抜いてください。
元調査員が本気で伝える!企業は情報の「出し方」が命
先日、Xにこんな投稿をしました。
事業計画書の添削をしているといつも感じます。どんなに優れた会社でも、相手はあなたが紡ぐ言葉からしか、あなたの会社を理解できない。だからこそ、「伝え方」に真摯に向き合う。それが評価される第一歩だと思います。
— 佐藤絵梨子@会社信用クリエイター (@satoeri7) November 12, 2024
私は信用調査会社で延べ7,000社以上の企業を調査し、その中で、伝え方が悪いばかりに実力よりずっと低く評価される企業をたくさん目にしました。
評価が低いせいで、金融機関や株主からの資金調達、新規取引獲得や取引拡大が上手くいかないケースも、数えきれないほど見ています。
取引先や金融機関、株主、調査会社など、相手はあなたが紡ぐ言葉からしかあなたの会社を理解できません。
どんなに優れた会社でも、それが正しく相手に伝わらなければ「良い会社だ」とは思ってもらえないのです。
情報の「出し方」で企業の評価は大きく変わります。
会社の実力が正しく伝わるように、「相手に理解されるように伝える」努力をしてください。
まず、相手が見るポイントを見極める。そして、自社が高く評価されるポイントと、それを「どのように伝えるか」を考え抜き、相手に理解されるように伝える。
そうすれば、あなたの会社はまわりから信頼を集め、飛躍的な成長を遂げます。
「うちの場合は何をどう見せたらいい?」
「具体的な伝え方や表現を相談したい」
「相手によって伝え方をどう変えるべき?」
もしこのようなお悩みがある場合はご相談ください。
7,000社以上の企業評価経験と、企業分析レポートを作成してきた表現力を活かし、全力でお力になります。
この記事を通じて、みなさまが自社で実践できる具体策を見つけていただければ幸いです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。