2025年に募集がスタートした経済産業省の大型補助金が、
採択率70%以上で審査に通りやすいのでは?と話題になっていますね。
そんな補助金獲得への期待が高まる中、
相変わらず会社信用ドットコムには、
「補助金で不採択になってしまって…」
という経営者様からのご相談が多く寄せられています。
採択率が高い補助金で不採択になたり、
まわりがスムーズに採択されていると、
「うちの計画では補助金は難しいのかも…」
と落ち込んだり、諦めてしまいたくもなりますよね。
ですが、その前に一度、
事業計画書の書き方に問題がないか確認してみてください。
というのも、
計画自体は良いものなのに、
事業計画書の書き方が悪いばかりに
採択を逃してしまっているケースがかなり見られます。
2022年に初めてご相談に来られたK社も、
まさに“事業計画書の書き方が悪くて採択を逃している会社”でした。
本日の記事では、そのK社の成功の秘密をご紹介します。
この記事を書いている私のプロフィール
佐藤絵梨子(さとうえりこ)
会社信用ドットコム代表・会社信用クリエイター
世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。
*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411)
採択を勝ち取った企業の特徴
- 社名:K社
- 地域:東京都
- 従業員数:3人
- 主業種:インターネット付随サービス業
- 年商:1億5,000万円
- 業歴:30年
ご相談に来られた当時、代表のほかには従業員が3名いらっしゃいました。…とは言っても、営業や主な事務は社長が行っている、いわゆる“社長の肩にすべてがかかっている”会社です。
工場や店舗を持つ企業の課題を解決するために、独自に開発したアプリやシステムを使ったサービスを提供していました。
30年かけてさまざまな事業を行っていく中で、社長ご自身にシステム開発の知見がある強みと、工場や店舗を持つ企業の悩みに触れてきたご経験をかけあわせた、ほかではあまり見ない独自のサービスを生み出しておられました。
今回の補助金で採択された『企業のクレーム処理を効率化するアプリサービス』のお話を伺ったとき、工場や店舗では確かにそのような悩みがあるだろうなと思うと同時に、「どうにもならない」と感じていた企業が多いだろうなと思いました。
そんな悩みを見つけ出し、解決につながるサービスの構想を考えついたのは、K社がお客様に真剣に向き合ってきたからこそだと思います。
とても誠実でお客様思いの企業というのが、私のK社に対する第一印象でした。
採択された補助金・金額・計画内容
- 補助金名:事業再構築補助金
- 申請枠:通常枠
- 既存事業の主業種:電気機械器具修理業
- 新規事業の業種:アプリケーション・サービス・コンテンツ業
- 再構築の類型:業種転換
- 採択された年:2022年
- 採択金額:3,200万円(うち2/3の2,000万円の補助金を受領)
- 対象経費:サービス専用システムの構築費、広告宣伝・販売促進費、専門家によるシステム点検費用
- 計画内容:システム開発で新サービス「企業のお客様クレーム対応を解決するサービス」をリリースする計画
K社は採択されたのは、事業再構築補助金という経済産業省の補助金です。
この事業再構築補助金は、コロナ禍の2021年に始まった大型補助金として、大変話題になりましたね。
コロナの感染拡大が続く中で、社会や経済、人々の意識や行動が変わっていく。そのような環境の変化をチャンスととらえて、新しい事業を始める企業を支援する補助金でした(※現在は募集終了)。
採択されたご計画は、工場や店舗を持つ企業のクレーム処理を効率化するアプリサービス、こちらを新しい事業として始めるというものです。
このアプリシステムの開発費用や、顧客獲得のための広告宣伝費、システム開発で専門的な知見をいただく専門家への費用として、約3,000万円の投資を行い、そのうちの2/3の2,000万円を補助金として受け取られました。
2回不採択になってしまった理由
K社の社長がご相談に来られたのは、事業再構築補助金で2回不採択になってしまった後でした。
1回目と2回目は、計画を考えるところから、事業計画書の作成、電子申請まで、すべてご自身で頑張ってこられたそうです。そして、2回目の申請では、事業計画書の修正もして、万全の準備で再チャレンジなさったとおっしゃっていました。
それでも、不採択になってしまったのです。
ご自身で作成された事業計画書を拝見し、社長からもお話を伺ったところ、ご計画は本当に素晴らしいものでした。
ターゲットになるお客様の業界リサーチもばっちりで、新サービスはお客様のお悩み事を解決する工夫が満載です。想定しているお客様層は、工場などを持つメーカーや店舗を持つ飲食店でしたが、私もお話を聞いて「このサービスがあれば、メーカーや飲食店は絶対に利用したいでしょうし、すごく効果も出るものだな」と思える内容でした。
システム開発の内容や、スムーズにサービス提供を進めるためのスケジュール・体制など、ご準備にも特段問題は感じられません。まさに、あとは補助金で採択されるだけという段階だったのですが、1つだけ大きな問題がありました。
社長からお話を伺うと、確かに「素晴らしい!」と思うのですが、事業計画書を読んでみると、その素晴らしいサービスの内容や、サービス開始のためのご準備が整っていることが、まったくわからないのです。
事業計画書の書き方に大きな問題があったんですね。
実は、「計画そのものは素晴らしいのに、その良さを事業計画書に上手く書き表せていない」経営者様はとても多いです。
しかも社長ご自身は「しっかり書けているつもり」なので、書き方が悪いことに気付いていません。「計画が良くないのか…」と落ち込んでしまったり、何がダメなのかさっぱりわからない状況になっていることもよくあります。
K社はまさに、この沼にはまっていました。
補助金の事業計画書は簡単に書けそうに思えますが、いざ書き始めると「何をどこにどう書けばよいか」悩み、気づけば作成にかなり時間をかかってしまいます。K社も2回の申請に向けて、事業計画書の作成や修正に100時間以上かかっていました。
そこまで努力を重ねて完成させた計画書に問題があるとは思えなかったようで、一体何が問題なのか探している状況でしたね。
そして、3回目の申請に向けて、事業計画書の問題点を確認し、書き方を丁寧に見直していくことになりました。
審査突破につながった事業計画書の改良ポイント
では、K社は事業計画書のどのようなポイントを見直したのか、主な改良ポイントをお伝えします。
内容整理とアピールポイントの絞り込み
事業計画書の改良ポイントの1つ目は、内容整理とアピールポイントの絞り込みです。
計画に強いこだわりや思い入れがあると、事業計画書にも色々記載したくなる気持ちはわかります。
ですが、当初の事業計画書は色々書きすぎていて、読む側はとにかく理解するのが大変でしたし、何が重要かもわからないような内容になっていました。似通った内容が、事業計画書の至ところに何度も書かれているのも気になりましたね。
一方で、補助金の事業計画書は、「こんな内容を記載してほしい」「ここを重点的に審査する」というポイントが決まっています。無駄な記載やルールを守っていない記載は、むしろマイナス評価になってしまいます。
そこで、まずは事業計画書に記載する内容と、とくにアピールする内容を丁寧に整理することから始めました。
不足していた重要項目の追記
事業計画書の改良ポイントの2つ目は、不足していた重要項目の追記です。
K社は、お客様の業界リサーチもばっちりで、新サービスはお客様のお悩み事を解決する工夫が満載。スムーズにサービス提供を進めるスケジュールや体制など、ご準備もばっちりでした。
ところが、どのようなリサーチをしたか、具体的にどの工夫にそのリサーチ結果が反映されているかの記載が不十分でした。
スケジュールや、従業員・協力会社の配置などの体制も、実際は細かいところまで決まっているのに、補助金ではここまで書くべき!というレベルまでか書けていませんでした。
そして1番問題だったのが、肝心かなめの新サービスを提供するために必要な「システム開発」について。
社長がシステムに知見がある方でしたので、内容がシステムに使う技術の素晴らしさや構造のような、専門的な内容に偏ってしまっていました。
「なんだかすごそうなシステムではあるけれど、どの技術がサービスのどの部分を良くするものなのか?」「普通のシステムとどう違う?K社なりの工夫点はどこ?」のような、審査員に疑問を持たれる内容になってしまっていたんですね。
システムの効果がよくわからないので、「本当にこのシステム開発は必要?」と思われかねない内容にもなっていました。
このような審査員が持つであろう疑問点を解消できるように、記載する内容をすべて見直しています。
冗長な文章→図や表に
事業計画書の改良ポイントの3つ目は、どうしても文章で説明しようと思うと長くなってしまうような箇所は、図や表でまとめたことです。
K社の当初の事業計画書は、ほぼ文章のみの内容でした。
写真や図で見ればすぐ理解できる内容も、文章だとイメージしにくいことがありますよね。文字ビッシリの計画書は、読み手も内容理解に時間がかかりますし、読んでいて疲れやすいです。
K社が新事業で行う「企業のクレーム対応を改善するサービス」も文章で説明すると、どのような場面で効果を発揮するのかイメージしにくいものでした。
そこで、サービスをすぐ理解してもらえるように、具体的な活用場面がぱっと見てわかるイラストや図解をいくつか入れました。
システム開発は複数の技術を使用し、それぞれが新サービスに良い効果を与えるものでしたので、「どの技術がサービスのどの部分に効果を与えるか」がすぐわかるように表でまとめました。
とくに図解は、事業計画書を見たときにパッと目を引くので、審査員に確実に理解してもらいたいところに入れています。
「どうしてそうなる?」を明確に
事業計画書の改良ポイントの4つ目は、「どうしてそうなる?」と審査員が疑問に思うであろう点をしっかり説明することです。
審査員は、「それが妥当か」「実現できる内容なのか」をよく見ています。
K社の場合は、とくに目標の業績数値でその記載が弱いと感じました。
どうしてその売上高になるのかの説明は、「サービス単価×顧客数」で計算したことを説明し、1年目から5年目で徐々に増えていく顧客数は、なぜ増やすことができるのか、各年で行う顧客獲得策を具体的に盛り込みました。
また、今回のシステム開発計画では、システム開発の費用だけでなく、広告宣伝や専門家に払う費用も発生するものでしたが、当初の事業計画書ではこの内訳や内容の記載も不十分でした。
そこで、どのような費用が必要か、その費用が本当にこの計画で必要なものかも、理解してもらえるように記載を修正しました。
代表経歴・社史の魅せ方
事業計画書の改良ポイントの5つ目は、代表経歴や社史を効果的に盛り込むことです。
実は、社長は過去にシステム開発に携わった経験があり、豊富な知見をお持ちでした。どの技術を活用すれば良いシステムになるか、どのような機能が必要かも判断できる方だったんですね。開発会社に的確な指示も出せる強みもお持ちでした。
社長からお話を伺っていくうちに、そのご経験やK社の歴史に、今回のご計画がうまくいく「理由」がたくさん見つかったんです。
ところが、このような素晴らしい情報が、当初の事業計画書にはほぼ書かれていませんでした。
そこで、修正では、その内容を「ここでアピールすべし」という最適な個所に、丁寧に盛り込んでいきました。
審査員にも「そんな社長が考えた計画なら、絶対成功するだろうな」と思ってもらえる事業計画書になったと思います。
「自社をまったく知らない」審査員に向けて書く
事業計画書の改良ポイントの6つ目は、自社をまったく知らない審査員に向けて書くことです。
補助金の審査員は、はじめて申請者の会社を知り、理解しようとする方ばかりです。
そのような方々にでも、計画の良さがしっかり伝わるよう、専門用語はなくすか注釈を入れ、説明の仕方や表現、伝える順番を修正し、読みやすくわかりやすい文章に改良しました。
「そうするのは当たり前じゃない?」「うちはできている」と思われるかもしれません。
でも、さまざまな業界事情や企業の特性をそこそこ理解していると思われる私でも、これまで数百件の事業計画書を添削してきた中で、すっと内容を理解できたものはほんの一握りでした。
「わかるように書けている」と思っていても、意外とできていないものです。
そのような点をあらためて見直し、1つずつ修正することで、採択を引き寄せる事業計画書になったと思います。
企業は情報の出し方が命
ここまで、K社が2回の不採択を乗り越え、3回目で採択されるまでに行ったことをご紹介しました。
K社の社長が初めてご相談に来られ、そのご計画を伺った時、『この計画にこそ補助金を』と本気で思いました。
それくらい、お客様のことを考えた素晴らしいサービスで、社長の熱い想いも伝わってきたからです。
ですが、事業計画書からは、その良さがまったく伝わってきませんでした。
専門用語や整理されていない文章は一目見ただけで難しく、読みにくい。記載すべき項目も、審査で見るポイントも書かれていない。
おそらく、審査をする方々も、内容を理解しようと努力し、どこかに書かれていないかと必死に探してくれたのではないかと思います。
でも、そもそも、そんなふうに審査員のストレスになる事業計画書ではいけません。
審査員の目線でわかりやすい事業計画書を作れるかどうかも、審査を突破するために必要な能力です。
たくさんの事業計画書を拝見していると、計画に思い入れがあり、強いこだわりがある方ほど、事業計画書の作成が上手くいかないことがよくあります。
『自分の伝えたいこと』が溢れすぎて、ルールや審査のポイントを見失ってしまいがちなんですね。
素晴らしい計画はそのままに、伝え方を変えただけで見事に採択されたK社のような企業様がたくさんいらっしゃると思います。
いま不採択で悩んでいるみなさまの計画も、きっと素晴らしいものなはずです。
計画がダメなのでは…と落ち込む前に、いま一度、事業計画書にも目を向けてみてください。
伝え方次第で道は開けます。
諦めずに、審査員の目線で見直してみてくださいね。
実は、K社はこの後、別のご計画でも経済産業省の補助金で採択され、社長もいまではご計画内容にも審査突破にも大変な自信を持って事業を拡大しておられます。
立て続けに採択を勝ち取った秘訣は、以下の記事でご紹介しています。ご興味のある方はお読みになってみてくださいね。
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みなさまが補助金で採択され、事業をますます成長させていかれることを心から願っています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
会社信用ドットコム代表 佐藤絵梨子
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