企業間の取引審査を突破するコツ

取引先の与信審査に通らない…審査の目的と落ちる原因

2021年2月16日

取引先の与信審査に通らない…審査の目的と落ちる原因|会社信用ドットコム

取引したい相手がいるのに、与信審査に通らないと悔しいですよね。

なぜ審査に落ちたのか、理由を教えてもらえないことも多いですし、対策が立てられず困っている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、取引先が与信審査を行う理由や、審査に通らない原因を解説しました。

企業が取引先を審査する「取引審査の現場情報」満載の内容です。

与信審査に通らない原因を特定し、すぐに対策を立てましょう。

この記事を書いている私のプロフィール

佐藤絵梨子(さとうえりこ)
会社信用ドットコム代表・会社信用クリエイター

世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。

*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411

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<メディア掲載情報>

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与信審査とは?

与信審査とは?|会社信用ドットコム

与信審査は、企業が取引を行う際に、相手先の安全性を見極めるために行われる審査です。

「この会社と安心して取引できるか?」のチェックですね。新しく取引をはじめる時に行われることが多いです。

すでに取引がある場合でも、取引量や条件を変更する場合には、「新しい条件でも安心して取引できるか」を見極める与信審査が行われることがあります。

自社で調べて審査をする場合もありますし、信用調査会社のような専門機関に相手先の調査を依頼して審査をすることもありますね。

とくに、大手企業や上場企業のような取引先管理に厳しい企業では、与信審査は“当たり前”に行われ、審査もかなり厳格です。

用語の補足

「安心安全な取引ができる企業か」見極める審査やチェックをすることを、与信審査のほかに「信用調査」「取引審査」「与信管理」ということもあります。中でも「信用調査」という言葉はよく使われますね。「信用調査会社」という専門の調査会社も存在しているくらいです。どれも「取引先の審査やチェックのことだ」と知っておきましょう。

 

取引先が与信審査をする理由

取引先が与信審査をする理由|会社信用ドットコム

では、取引先がなぜ与信審査を行うのか、主な理由をいくつか見てみましょう。

取引先が与信審査をする理由

  1. 取引の安全性確保:代金未回収や納品遅れなどの問題やトラブルの発生回避
  2. 適切な取引条件の設定:相手の状況に応じて最適な取引限度額や支払い条件を設定
  3. 長期的な取引関係の構築:業績悪化や倒産の可能性はないか、長く取引できる企業かの見極め

取引は会社にとって重要な決断です。

上手くいくかどうか業績にも影響しますし、トラブルになれば損失も発生します。だからこそ、与信審査で相手を見極め、リスクがある取引を避けているのです。

皆さまも、取引先から代金を回収できなかったり、相手の倒産で取引が急に中断してしまったりしたことはありませんか?会社経営ではこのようなことがあると大変困りますよね。

そんな状態にならないように、安心安全な取引先と取引をしていくために、与信審査は行われています。

 

取引先の与信審査に通らない原因

取引先の与信審査に通らない原因|会社信用ドットコム

では、安心安全な取引先かを見極める「与信審査」になぜ落ちてしまうのでしょうか?

取引先が警戒しやすいポイントに絞って、その原因を解説します。

 

公開情報が少ない

公開情報が少ない、いわゆる「情報不足」は、審査をする側に不安を与えます。正確な経営状況がわかりませんから、安心して取引できる会社かどうか判断もできません。

状況が悪くても情報があれば対策を取れますが、情報がなければそれもできません。まさにお手上げ状態です。

例えば、ホームページがない、掲載されている情報が古いまま、信用調査会社の調査に答えない、調査に対応はしても決算書は出さない、このような状態だと相手は警戒します。

特に大手企業や上場企業のような取引先をしっかり管理する会社は、情報公開性が低いだけで「取引をしない」という方針のところも多いので、注意してください。

 

決算書の数字が悪い

決算書は企業の1年間の業績や財政状況を表す『成績表』です。最近は倒産も増えていますし、この決算書の数字が悪いと審査をする側もやはり不安になります。

売上がずっと下がっていたり、赤字が続いていたり、借入金が過大だったり、資金繰りの苦しさが読み取れる場合などは、審査は厳しくなります。いままでは数字が良くても、最新の決算で大幅に数字が悪化すれば、警戒されます。

数字が良くても大目に見てもらえる魔法のような裏技はありません。数字が悪いなら地道に改善を進めてください。

 

約束を守らない可能性

取引の現場でよく問題になる支払や納期の遅延、品質低下、契約違反など、約束を守らない行為があると信用を失います。

実はこれ、隠すのは難しいです。約束を破られた相手の怒りは相当なもので、業界内では誰もが知っていたり、情報提供等で発覚することは少なくありません。

過去に約束を守らなかった事実があると、相手の審査をするような“取引に厳格な会社”との取引は難しいです。普段から誠実な取引を心がけてください。

 

焦付きの存在

売掛金が回収できな「焦付き(こげつき)」(※貸倒れともいいます)があると、与信審査で低評価になります。

特に、複数の取引先で焦付きが発生していたり、繰り返し焦付きが発生している場合、影響は深刻です。「代金回収に無頓着」「取引先の管理もしていない」「財務にも悪影響が出る」と厳しい目で見されるからです。

「あの会社、焦付きがあったようなのだけど大丈夫か…?」と焦付きの発生を機に経営状態が心配されるケースは決して少なくはありません。

焦付きは自社とその相手だけの問題だけではなく、あなたの会社と取引を検討している企業やほかの取引先にも不安を与えます。決して甘く見ないでください。

 

社内外の不和

役員間や株主、従業員、取引先や金融機関など社内外の関係者との関係が悪いと、審査をする側は不安を感じます。業績や資金調達への影響が心配されるからです。

取引をするための審査ですから、取引先との不和は「うちにも同じことが起こるかも…」と心配されます。支払や納期のトラブル、無理な値引き要請、高圧的な態度などは、その事実だけで取引が見送られるケースもよくあります。

私が調査員時代に見ていて特に不安を感じたのは、代表や役員・株主の仲が険悪な状況です。とくに同族経営の会社で親族間の仲が険悪な様子が伝わってしまうのは良くありません。意思決定が進まない、もめごとが起こりやすいという理由で、「健全な経営や取引どころではないのでは?」と取引を見送られがちです。

取引先は社内の関係も大変よく見ています。

 

悪い噂やトラブルがある

今はインターネットやSNSが普及しているので、過去のトラブルや悪評が簡単に表に出ます。これは中小企業も例外ではありません。

退職者や求職者、取引先、消費者が発信した情報は審査担当者に必ずチェックされます。特にマイナス情報は真偽までしっかり確認されています。訴訟歴も厳しく見られています。

今は問題がなくても、過去のトラブルが記録に残っていれば警戒されます。思い当たる節があれば、対策が必要です。

 

経営者に不信感

与信審査で1番見られるのは経営者です。会社の方向性を決め、主導し、その言動が会社の将来を左右するからですね。

他のすべてが素晴らしくても、経営者に不安があれば審査はとたんに厳しくなります。

例えば、過去の経営失歴や、不誠実な言動、将来計画やビジョンが不明瞭、経営方針や考えに一貫性がないと見られると、与信審査に通りにくいです。社長の言動を問題視して取引が見送られる場面は、私も何度も目にしてきました。

最近だとパワハラ気質や倫理観・モラルが問題視されることも多いです。経営者が信頼される人物でなければ、会社全体が信用されなくなります。言動には十分気を付けましょう。

 

元調査員の編集後記

元調査員の編集後記|会社信用ドットコム

先日、私の事務所にとある経営者の方からお問い合わせがありました。

後日しっかり面談にてお話を伺ったところ、「ずっと赤字で取引先の審査に通りません。赤字でも審査に通る方法はありませんか?」とおっしゃるのです。

ずっと経営が厳しくて、赤字が続いており、借入も多く資金繰りは苦しいとのこと。相手の企業は誰もが知るような大手企業で取引の審査が厳しく、必要書類と決算書も提出しているが、いつも審査に通らず取引を断られてしまう。その会社とはどうしても取引がしたいので、赤字でも審査に通る方法を教えてほしいとのことでした。

そこで私は「もし貴社が相手の立場なら、連続赤字で借入が多く資金繰りが苦しい会社と取引をしますか?」とお尋ねました。すると、その経営者の方はハッとした表情で「そうですよね…しないですよね…」とお答えになったのです。

状況が悪いのに審査に通るような裏技や魔法はありません。

どの会社でも、取引ではトラブルや損害が起きないことを望んでいます。最近は業績悪化や倒産する企業が増えていますから、審査も厳しくなっています。

まずは、相手の立場になって「自社と取引したいと思うか」客観的に見ることが大切です。

そして、もし問題があるのなら、そこは改善していきましょう。

その経営者様も、赤字や借入の多さ、資金繰りの苦しさなど、何が審査で引っかかっているか、相手が自社をどう見ているか、本当はちゃんとわかっておられました。

やみくもに取引を打診するではなく、改善が必要なことにも気づいていました。

この記事をお読みいただいている皆さまも、もしいま取引先の与信審査に通らない状況なのであれば、問題点を見つけて、改善を進めてください。

本記事が少しでもそのお役に立てれば、元調査員として嬉しく思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
 
会社信用ドットコム代表 佐藤絵梨子


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