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経営革新計画とは?メリットと申請の流れをプロが解説

2024年11月17日

経営革新計画とは?メリットと申請の流れをプロが解説|会社信用ドットコム

経営革新計画の申請を検討している方の中には、どのような計画が対象になるのか詳しく知りたい方もいるでしょう。

承認を取得するメリットを理解しておくことも大切です。

この記事では、経営革新計画の対象とメリット、申請の流れについて、必ず知っておきたいポイントを解説しています。

承認取得支援の専門家として、申請を検討している方からよくある質問にも回答していますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いている私のプロフィール

佐藤絵梨子(さとうえりこ)
会社信用ドットコム代表・会社信用クリエイター

世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。

*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411

詳しいプロフィールはこちら

<メディア掲載情報>

SMBCグループの経営層向け会報誌『SMBCマネジメントプラス』2024年12月号
日本実業出版社『企業実務』2024年12月号 など

メディア掲載情報|会社信用ドットコム

※メディア情報一覧はこちら

経営革新計画とは?

経営革新計画とは、中小企業が、新しい事業や新しい商品・サービスなどを展開する『新事業活動』を行う場合に、その成長戦略を計画書にまとめ、国や都道府県の承認を受ける制度です。

計画が承認されると、融資や補助金の優遇措置など、さまざまなメリットが受けられます。

自社の進むべき道が明確になる効果や、優良な企業として会社の信用力も高まる効果があります。

「名前も聞いたことがない」とおっしゃる社長様も多いですが、「中小企業等経営強化法」という法律に基づいて運営されている信頼性の高い国の制度です。

自社が対象になるか、どのような承認のメリットがあるか確認しておきましょう。

 

経営革新計画の対象になる事業者

経営革新計画の対象になるのは、中小企業基本法で定義される中小企業です。

製造業、小売業、サービス業など幅広い業種の事業者が申請することができますが、以下の従業員基準を満たす必要があります。

主たる事業を営んでいる業種従業員基準
(常時使用する従業員の数)
製造業等500人以下
卸売業400人以下
サービス業300人以下
小売業300人以下

 

どのような計画が経営革新計画の対象か?

経営革新計画の対象になる計画は、「新事業活動」「経営の相当程度の向上」にあてはまる計画です。

どれだけ素晴らしい計画でも、この条件に当てはまらない計画は対象ではありません。申請前にしっかり確認しておきましょう。

 

「新事業活動」とは?

経営革新計画が対象とする「新事業活動」とは、以下の5つに該当する取り組みです。

  1. 新商品の開発または生産
  2. 新役務(サービス)の開発または提供
  3. 商品の新しい生産または販売方式の導入
  4. 役務の新しい提供方式の導入
  5. 技術開発やその成果の活用、その他の新たな事業活動

中小企業庁が発表している『経営革新計画進め方ガイドブック』に掲載されている「具体的な取組事例」を見ると、対象になる計画のイメージがつかみやすいと思います。

以下に詳細を載せておきますので、自社の計画が対象になるか確認してみてください。

「新事業活動」の具体例

項目具体例
①新商品の開発又は生産建設業者が、産業廃棄物である下水汚泥などを甘味料としても知られる植物を用いて処理し、新たに肥料を生産し販売する。
木製品製造業者が、これまで建具の材料として利用が困難とされていた間伐材を加工するための切削用刃物を開発。更に開発した天然の塗料で仕上げることで、防腐、防かび効果が高められ、環境と健康にやさしい建具を生産、販売をする。
業務用の大型で強力な空気清浄機を製造していた企業が、きれいな空気に対するニーズの高まりを受けて、小型化に挑戦し、一般家庭用の小型で強力な空気清浄機を開発する。
産業廃棄物業者が、茶がらやさとうきびかす等の植物性廃棄物を、生分解可能な容器にリサイクルする技術を開発。これらの製品は環境に負荷を与えることなく、廃棄処理ができる。
②新役務の開発又は提供美容室が高齢者や身体の不自由な方など、自分で美容室に行くことが困難な方のために、美容設備一式を搭載した車で美容師が出張し、カットやブローの基本コースからへアメイクや着付けなどのサービスを行う。
老舗の旅館が、空室を日帰り客向けのリラクゼーションルームとして改装し、新しいサービス事業を行う。それにより昼間の時間帯の増収を図るとともに、そこから新規宿泊客の拡大に結びつける。
畜産農家向け飼料販売業者が、新たに畜産農家の繁忙期・旅行時に社員を畜産農家に派遣して、家畜の世話等を行うとともに、畜産農家の経営効率を向上させるためのコンサルティングサービスを行う
③商品の新たな生産又は販売の方式の導入果物の小売業者が、本格的なフルーツパーラーを開店。果実店で培われた果物についての知識などの強みを活かすとともに、フルーツ&ベジタブルマイスターの資格を持つ店員が常駐し、高品質フルーツを使ったスイーツや、フルーツや野菜のフレッシュジュース、健康を意識した野菜を取り入れたランチメニューも提供。
金属加工業者が、金属熱加工製品の開発に伴う、実験データを蓄積することにより、コンピュータを利用して、熱加工による変化を予測できるシステムを構築する。それにより、実験回数を減らし、新商品開発の迅速化とコスト削減を図る。
④役務の新たな提供の方式の導入不動産管理会社が、企業の空家となった社員寮を一括借り上げして、それを高齢者向けに改装し、介護サービス、給食サービスを付加して、高級賃貸高齢者住宅として賃貸する。
タクシー会社が、乗務員に介護ヘルパーや介護福祉士の資格を取得させ、病院や介護施設への送迎などのタクシー利用者を獲得し、高齢者向け移送サービスで介護サービス事業へ進出して多角化を図る。
⑤技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動これまで加工が困難とされてきた新素材の大量加工に関する研究を行い、研究の成果として得られた加工技術・ノウハウを自社の製造ラインで活用する。
介護用ロボットの利便性向上を図るための研究開発と実証実験を行い、その成果を元に介護ロボットを開発し、自社の事業に活用する。

 

「経営の相当程度の向上」とは?

「経営の相当程度の向上」とは、以下の①②の2つの指標が、事業期間の3年~5年で相当程度向上することを指します。

  1. 「付加価値額」又は「一人当たりの付加価値額」の伸び率
  2. 「給与支給総額」の伸び率

それぞれで達成すべき数値は下表で確認しておきましょう。

「経営の相当程度の向上」で達成すべき数値

 「付加価値額」又は「一人当たりの付加価値額」の伸び率
(注)年率3%以上の伸び率
「給与支給総額」の伸び率
(注)年率1.5%以上の伸び率
事業期間が3年の場合9%以上4.5%以上
事業期間が4年の場合12%以上6%以上
事業期間が5年の場合15%以上7.5%以上

 

経営革新計画で承認を受けた事例

会社信用ドットコムでは、経済産業省から認定を受けた経営革新等支援機関として、経営革新計画の承認取得サポートや、事業計画書の添削・書き方指導を行っています。

経営革新計画の承認取得事例が知りたい方は参考にしてください。

会社信用ドットコムの承認取得支援事例

※本制度では支援者名は公表されないこと、また、革新的な計画ゆえの機密漏洩防止の観点から、概要のみ紹介させていただきます。

  • 承認日:令和7年10月
  • 計画期間:3年
  • 業種:日用雑貨製造・販売業
  • 従業員数:1〜5人

これまで日用品雑貨の製造販売を行っている事業者様。新しい事業を開始し、製品改善と供給体制の強化、販路拡大を進めるご計画です。

以下の記事で計画の概要や審査突破のポイントを解説していますので、気になる方はご覧ください。

◆審査突破対策をしていた事業者様が経営革新計画の承認を取得しました|社長の審査対策と感想もご紹介

どのような計画が対象経費になるか、もっとたくさん事例を知りたい方は、「経営革新計画 承認事例」などのキーワードで検索してみましょう。各都道府県などが事例を発表しています。

なお、お考えの計画が対象になるかを確認したい方は、完全個別のオンライン説明会への参加も検討してみてください。

経営革新計画の完全個別オンライン説明会|会社信用ドットコム

こ難しい制度解説ではなく、「どのような制度か」をざっくり把握し、「対象になりそうか」を判断できるようにする説明会です。「せっかく承認を獲得したのに、結局うまく使えなかった…」とならないために、「承認後はどう活用すればいいか」もお伝えします。

“超初心者向け”の説明会ですので、「経営革新計画という名前くらいしか知らない…」「難しい説明は無理!」という方のご参加大歓迎です。

説明会は完全個別対応です。他の参加者を気にすることなく、説明の途中でもお気軽質問もできますし、私の説明をじっくり聞くスタイルでも構いません。説明会後には個別相談の時間も設けています。お気軽にご参加いただけます。

◆経営革新計画の完全個別オンライン説明会の開催日程はこちら

 

経営革新計画の承認を受けるメリット

経営革新計画にはたくさんのメリットがあります。あまり知られていないメリットもご紹介しますので、チェックしてくださいね。

 

有利な条件で融資を受けられる

経営革新計画の承認を受けると、以下のような融資獲得のメリットがあります。

  • 融資の審査で高評価を獲得できる
  • 日本政策金融公庫の低利融資を獲得できる可能性
  • 信用保証の枠が広がり資金調達が容易に

金融機関にはそれぞれ独自の審査もあるので、経営革新計画の承認を受けているからといって、上記のメリットが必ず得られるとは限りません。

ただ、承認を受けていること自体は良い印象につながります。金融機関からの信用を高めたい方は、十分挑戦する価値があるでしょう。

 

補助金獲得の可能性が高まる

経営革新計画に承認されることで、ものづくり補助金などの補助金申請時に加点がもらえる場合があります。

「加点項目」とは、プラスでもらえる点数のことです。該当する取り組みをしていれば、点数がプラスされ、採択されやすくなる仕組みです。

※加点対象になる補助金は、随時変わります。各補助金の最新の募集要項で確認してください。

 

販路開拓の支援を受けられる

経営革新計画の承認を受けると、中小企業基盤整備機構の「販路開拓コーディネーター」から助言を受けられます。

販路開拓や海外展開の実行支援、専門家派遣なども受けられるため、リスクを抑えつつ新事業活動にチャレンジできますよ。

 

会社が進むべき道がはっきりする

経営革新計画の策定を通じて、会社の将来計画や在り方を真剣に考えることで、以下のような効果もあります。

  • 事業計画を作ることで、経営課題が明確になる
  • 会社や事業について外部の専門家から評価を受け、改善点や強みを知ることができる
  • 計画的に経営を進められるようになる
  • 社内や取引先、銀行などに取り組みを説得力を持って説明できる
  • 社長のノウハウや経験を後継者や社員に伝える「しくみ」ができる
  • 事業や会社の停滞感を打破し、前進するきっかけを作れる

「経営革新計画を策定をしてみて、会社の進むべき道がはっきりしました!」という社長の喜びの声をよくいただきます。

融資や補助金のメリットが注目されがちですが、このようない素晴らしい効果もありますよ!

 

会社の信用力が高まる

経営革新計画の承認を取得すると、まわりの見る目も変わりますよ。

  • 銀行や取引先から高評価
  • 公的な認定による信頼性アップ
  • 「成長志向の企業」として評価される

融資や取引の審査現場では、経営革新計画のような「国や地方自治体に評価される取り組み」をしている企業に好印象を抱く審査担当者が多いです。

私が在籍していた信用調査会社もそうです。

自社の状況を見つめて、将来計画をしっかり立てる企業には信頼が集まりますよ!

 

経営革新計画の審査難易度と承認率

経営革新計画の承認率は公表されていません。

ただ、国による審査が行われる難易度の高い制度ですから、承認率はかなり低め、一説によれば10~30%とも言われています。

承認された「件数」のみ公表されていますので、下記の表で確認してみてください。

経営革新計画の承認件数(中小企業庁の公開データより作成)

年度年間承認件数
令和元年度4,284件
令和2年度8,410件
令和3年度5,853件
令和4年度4,571件
令和5年度3,976件

※都道府県年度別内訳も公表されています。→詳しくはこちら

 

経営革新計画を申請する流れ

経営革新計画は、以下の4つのステップで申請をするとスムーズです。

step
1
都道府県担当部局等へ問い合わせ

都道府県によっては、申請前の事前問い合わせが必須となっている場合もあります。申請前に、まずは都道府県の担当部署に連絡し、自社の計画が申請対象になるかや不明点などを確認しましょう。

step
2
必要書類の作成・準備

申請書類は各都道府県によって異なる場合があります。企業所在地の都道府県サイトで確認し、作成と準備を進めましょう。

step
3
各都道府県の担当部局に申請書を提出

申請書の提出方法は各都道府県によって異なる場合がありますので確認しましょう。審査結果が出るまで1か月~2か月ほどかかります。

step
4
都道府県知事・国の地方機関等の長の承認

都道府県等による審査を経て、経営革新計画が承認されます。融資や補助金の優遇措置などは、支援策の実施機関の審査が別途あります。計画開始後、フォローアップのために、計画進捗状況調査などが行われます。

 

よくある質問と回答

経営革新計画の承認取得のお手伝いをさせていただいている現場で、よくいただく質問にお答えします。

 

小さな会社でも申請できる?

小さな会社でも申請することができます。経営革新計画で承認を受けた事例でご紹介した事業者様も、社長お一人の会社です。従業員5名以下の企業でも承認を受けている例はたくさんありますよ。

 

「新しい取り組み」ならどんな計画でも対象?

本記事のどのような計画が申請対象か?に記載した5つの取り組みが対象になります。具体例も確認してください。

専門家の目から見ると、「このご計画は対象ではない」と感じるケースも多いです。

自社の計画が対象かよくわからない方は、申請前に都道府県の担当部署や専門家に相談をして、対象かどうか早めに確認してもらいましょう。

 

計画が未達成の場合、ペナルティはある?

経営革新計画が未達成の場合、直接的なペナルティは基本的にはありません。ただし、以下の点には注意が必要です。

再申請の制限:経営革新計画が却下された場合、一定期間は再度提出しても門前払いになる可能性があります

支援先・関係先の影響:経営革新計画の承認を見越して融資の相談をしていたり、取引先に報告をしている場合などは、金融機関や取引先への報告も必要になるでしょう。

 

承認を受けると融資や補助金で有利?

経営革新計画の承認を受けることで、融資や補助金の審査で有利になる場合があります。

例えば、銀行からは金利の優遇、信用保証協会からは保証枠が広がるなどの措置の対象になることがあります。補助金申請では加点の対象になることもあります。

ただし、これらの有利な条件は、金融機関や補助金の種類、または申請者(会社)の状況によって対象外となる場合もあります。

そのため、計画申請前に融資担当者や補助金の公募要領を確認し、経営革新計画の承認が該当するかどうか確かめることが大切です。

さらには、融資の場合、経営革新計画の承認とは別に金融機関の審査もあります。必ず有利な条件で融資が受けられるわけではないことを知っておきましょう。

 

相談先の選び方は?

初期の相談や基本的な疑問を解決するのなら、商工会議所や商工会などに確認するのも良いでしょう。専門的なアドバイスや密な支援を必要とするなら、中小企業診断士や税理士・公認会計士、金融機関の担当者に相談するのも良いと思います。

業界特有の課題や丁寧な支援、こだわりの支援者に相談したいなら、専門家や専門のコンサルタントに相談するのもおすすめですね。

もし相談先で迷うようなら「経営革新等支援機関(認定支援機関)」に相談するのも一つの手です。

経営革新等支援機関(認定支援機関)は、経済産業省から認定を受けた中小企業支援者。税務、金融、企業財務に関する専門的知識や中小企業支援に関する実務経験が一定レベル以上ある支援者が認定されていますので、安心して相談することができると思います。

相談は相手との相性も大切ですから、相談先の属性だけでなく、相手の人柄や相性もよく確認しましょう。将来計画の相談先ですから、信頼できる専門家を選ぶことをおすすめします!

会社信用ドットコムも認定支援機関です。詳細は事務所のご案内ページでご確認いただけます。

 

準備から承認までどれくらい時間がかかる?

私のところにご相談に来られる方の標準的な準備期間と、承認までの期間をお伝えします。

  • 計画の内容相談:1~2週間
  • 計画策定:2~3週間
  • 申請~承認:1~2ヶ月

  合計:2~3ヶ月程度

「そんなにかかる?」と聞かれることもありますが、例えば、ご自身では「完璧な計画だ。すぐ申請できる」と思っていても、お話を聞きながら進めていると、「この部分はもう少しきちんと計画を考えておく必要がありますね」などの不足点や改善点が見つかることがよくあります。

その指摘に対して、再度計画を考えながら進めていると、1~2か月という期間はあっという間です。

承認までの期間は都道府県によって異なります。基本的には書類審査のみで、申請から1か月~1か月半程度で承認されるケースが多いですね。

中には面接審査がある都道府県もありますので、ご自身の会社がある都道府県の標準的な承認期間や、面接があるかどうかを事前に確認しておきましょう。

みなさまが考えているよりも申請には時間がかかります。あなたの会社の大切な計画ですので、余裕を持って準備を始めてください。

 

審査突破のプロから大切なメッセージ

経営革新計画は、融資や補助金などの資金調達の優遇措置があり、人気のある制度です。

一方で、承認取得の難易度は高く、計画を考える段階から丁寧な準備が必要になります。

「自社が考えている計画が対象か」の確認や、申請書類の作成が少し難しいと感じるかもしれません。

心配な方は、支援機関や専門家に相談して進めることをおすすめします。

なお、申請書類や面接の有無、承認期間は、申請する都道府県によって変わります

どのような準備が必要か知りたい方は、会社所在地の都道府県の経営革新計画申請先に、事前に確認をしておきましょう。

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