
そんな耳寄りな情報をお届けします。
令和6年度から始まった画期的な助成金制度をご存知ですか?
その名も「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」。
一見すると難解な名称ですが、中小企業の未来を切り開く可能性を秘めた制度です。
この記事を書いている私は、企業信用調査会社(株)東京商工リサーチで10年間で7,000社以上を調査した元・調査員です。
現在は、企業審査のプロフェッショナルとして、補助金や融資の審査突破をサポートしています。
本助成金では、第3回以降、申請をサポートしてきた実績があります。
New!!→第8回(11/14締切)の申請をサポートさせていただいた2社の事業者様も、無事に書類審査と面談審査を通過し、採択されました。おめでとうございます!
本記事では、本助成金の概要から対象企業の条件、そして採択率を高めるための秘訣まで、すべてを徹底解説しています。
助成金や補助金の獲得は、着実な企業成長と末長い事業継続を強力に後押ししてくれます。
ぜひ最後までお読みいただいて、資金獲得への道筋を掴んでください。
次回公募スケジュール
2024年の募集は令和7年3月14日(金)に終了しました。2025年の募集スケジュールは発表され次第、こちらに記載いたします。
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業とは?
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業は、ポストコロナ等における事業環境の変化を課題と捉え、これまで営んできた事業(既存事業)の深化又は発展に取り組む事業者を支援する助成金です。東京都の助成金ですので、都内中小事業者の経営基盤を強化することを目的としています。
ポストコロナによる消費者ニーズの変化、物価・エネルギー価格の高騰など、中小企業を取り巻く事業環境の変化に対して、『これまで営んできた事業の質を高める取組』や『既存事業を基に新たな事業展開を図る取組』が対象になります。
取り組みが経営基盤の強化につながると認められると、かかった費用の一部が補助されます。
例えば:600万円の費用がかかった場合、その2/3の400万円が後から補助される仕組みです。
事前にお金をもらえる制度ではないことを覚えておいてください(←まれに誤解している方がいます)
この助成金を運営しているのは、公的機関である『東京都中小企業振興公社』です。制度のチラシ画像を掲載しておきますので、確認しておきましょう。
対象者・対象経費・補助金額は?
対象者、受け取れる金額、対象となる経費を確認しておきましょう。
対象者・対象経費・補助金額
対象者 | ・東京都内で事業を行う中小企業者(個人事業主を含む) ・直近決算期の売上高が「2019 年の決算期以降いずれかの決算期」と比較して減少している、または直近決算期において損失を計上している中小企業者 |
補助対象期間 | 交付決定日から最大1年間 |
対象経費 | ●原材料・副資材費 ●機械装置・工具器具費 ●委託・外注費 ●産業財産権出願・導入費 ●規格等認証・登録費 ●設備等導入費 ●システム等導入費 ●専門家指導費 ●不動産賃借料 ●販売促進費 ●その他経費 ※委託・外注費のうち「市場調査費」「専門家指導費」「販売促進費」「その他経費」の単独の申請はできません。 ※販売促進費は、既存事業に係る販売促進については対象外となります。 |
補助上限額 | 800万円 |
補助率 | 助成対象経費の3分の2以内 |
対象は東京都内で事業を行う事業者です。売上減少、損失計上という条件もあります。
その他の細かい条件は、公式サイトや募集要項に掲載されていますので確認しておきましょう。
助成金の対象になる取り組みは?
既存事業の「深化」または「発展」につながる取り組みが助成金の対象になります。
申請のご相談をお受けしていると、この「対象になる取組」に当てはまっていない事業者様が多く見られます。しっかり内容を理解して、自社の計画が対象か見極めてくださいね。
対象になる取り組みの例
項目 | 取り組み内容 |
既存事業の「深化」 | 経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業自体の質を高めるための取組 ・高性能な機器、設備の導入等による競争力強化の取組 ・既存の商品やサービス等の品質向上の取組 ・高効率機器、省エネ機器の導入等による生産性の向上の取組 |
既存事業の「発展」 | 経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業を基に、新たな事業展開を図る取組 ・新たな商品、サービスの開発 ・商品、サービスの新たな提供方法の導入 ・その他、既存事業で得た知見等に基づく新たな取組 |
対象外の取り組み
- 申請者が営んできた事業内容との関連性が薄い、又は全く無い取組
- 法令改正への対応など、義務的な取組
- 単なる老朽設備の維持更新など、競争力や生産性の向上に寄与しない取組
主な提出書類
会社の実態が確認できる書類や、取り組み内容がわかる書類が必要です。
- 申請書類一式
- 履歴事項全部証明書
- 決算書(損益決算書)
- 確定申告書
- 誓約書
- 法人事業税納税証明書
- 法人都民税納税証明書
- 見積書や設計図 など
発行後3か月以内のもの、直近のものなど、有効期限の定めがある書類もあります。

審査方法・審査項目
審査は『書類審査』と『面接審査』の2つです。
2つの審査を突破した事業者が、晴れて採択企業となります。
1次審査:書類審査
審査は専門家が行います。書類審査で一定の基準を満たした事業者だけが、面接審査に進むことができます。
書類審査の結果は、申請から約1か月後に通知されます(※申請件数や内容によっては前後する場合があります)
2次審査:面接審査(対面)
申請書類の内容について、専門家による面接審査が行われます。
経営者(社長)や役員が書類の内容を説明し、その結果、一定の基準を満たすと判断された場合のみ採択となります(※採択とは、資金補助の権利を得ることです)。
結果は、面接からおおよそ1か月以内に通知されます(※申請件数や内容によっては、通知時期が前後することがあります)。
審査項目(1次審査・2次審査共通)
- 発展性(既存事業の深化・発展に資する取組か)
- 市場性(ポストコロナ等における事業環境の変化前後の市場分析は十分か)
- 実現性(取り組むための体制は整っているか)
- 優秀性(事業者としての創意工夫、今後の展望はあるか)
- 自己分析力(自社の状況を適切に理解しているか)
企業の成長可能性や取り組みの実行力、そして力強い経営能力がチェックされます。
審査のハードルは高めです。とはいえ、本気で経営に取り組んでいる方には、挑戦する価値がありますね。

募集スケジュール
2024年に続き、2025年も募集が行われる予定です。
基本は毎月募集が行われる予定で年間スケジュールが発表されます。
ただし、応募者多数の場合は、翌回の募集がスキップ(中止)されるケースが出ていますので、必ずしも毎月募集が行われるわけではありません。
早めの準備と申請をおすすめします。
New!!→2月の募集はなくなり、次回募集は3月3日9:00からになりました。
募集回 | 申請受付期間 |
---|---|
第1回 | 令和6年4月1日から4月15日まで |
第2回 | 令和6年5月1日から5月15日まで |
第3回 | 令和6年6月3日から6月14日まで |
第4回 | 令和6年7月1日から7月12日まで |
第5回 | 令和6年8月1日から8月15日まで |
第6回 | 令和6年9月2日から9月13日まで |
第7回 | 令和6年10月1日から |
第8回 | 令和6年11月1日から11月14日まで |
第10回(予定) | 令和7年1月6日から1月14日 |
第12回(予定) | 令和7年3月3日から3月14日 |
申請から入金までの流れも確認しておきましょう。
\本助成金の対象かどうか、確認をご希望の方はこちらからどうぞ/
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の採択率は?
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の採択件数などは、現時点では発表されていません。
ほかの東京都中小企業振興公社の助成金に採択された企業は、こちらのページで公開されています。
本助成金の情報も今後更新される可能性がありますので、更新され次第、この記事でもご紹介しますね。
採択率を高める申請書作成のコツと注意点
申請書は採択の可否を左右する重要な書類です。
私も本助成金では沢山の申請書類を拝見し、書き方をアドバイスさせていただいていますが、パッとみてすぐに「これでは審査は通らない」と思う申請書も散見されます。
良い計画でも相手に理解される伝え方ができなければ台無しです。さらにルールに沿った記載ができていることも重要です。
以下に、作成における重要なポイントをご紹介します。作成のポイントを押さえて、より説得力のある申請書を作成してくださいね。
審査員目線でなければ0点!
申請書作成のコツの1つ目は、審査員の視点に立った記述をすることです。
自分の伝えたいことだけを書いた独りよがりな事業計画書では、審査員の知りたいことに応えておらず、審査通過が難しくなってしまいます。
まずは募集要項をよく読み、審査基準を十分に理解して作成することが大切です。
各項目をなんとなく埋めるのではなく、「審査員が特に知りたい点は何か」「どの情報を詳しく説明すべきか」を意識して記載していくことも大切ですね。
さらに、各項目の記載内容に矛盾がないかも確認しましょう。申請書の添削をさせていただいていると、「(あれ?)この項目ではこう書いているのに、別の項目では違うことを言っている」といった矛盾を見かけることがよくあります。
また、一発で不採択となる可能性が高いと思われるような、「この記載は助成金の制度趣旨を理解していないのでは?」と感じる記載も時折見られます。
まずは募集要項をよく読んで、自社の計画が助成金の趣旨に合っているかを慎重に確認し、作成を進めましょう。
数値目標は「根拠」が大事!
申請書作成のコツの2つ目は、数値目標の設定根拠を明確にすることです。
事業計画を記載する申請様式には、「将来の収益数値」や「定量的な効果」について説明する欄があります。
書類審査を通過した後の面接でも詳しく聞かれる可能性が高い部分です。「なぜこの数値なのか」をわかりやすく説明できるようにしておきましょう。
「私はこう思う」という主観ではなく、市場データや過去の実績、具体的な戦略との関連性を示しながら、客観的な根拠も含めて説明することが大切です。
添削をしていると、「この数値は無理があるのでは?」と思う計画を目にすることがあります。その数値が本当に達成可能かどうかをよく検証して、審査員を納得させるだけの「達成可能な根拠」を示しましょう。
数値目標がどのように事業の成功や成長につながるのかが明確に伝わることで、計画の信頼性が高まります。
独自性・優位性・将来性はアピールし尽くす!
申請書作成のコツの3つ目は、独自性・優位性・将来性のアピールです。
申請様式の「計画4」のシートではとくに、これらの点に関する記載が求められます。
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業の申請様式では、「計画1」のシートでまずSWOT分析の記載が求められます。
そこでしっかり自社を分析していると思いますので、「計画4」のシートでは、それを踏まえた上で事業の独自性・優位性・将来性を具体的に説明しましょう。
特許や独自技術、ユニークなビジネスモデルなど、他社にはない自社の特徴を十分にアピールしてください。このような強みを活かして市場をどのように拡大していくのか、将来戦略もはっきり伝えましょう。
この部分を主観的に書いてしまう方も見られますが、他社との違いや市場データも含めることで、客観的に見ても独自性・優位性・将来性があることを伝えてください。
例えば、「他社ではこうだが、自社はこうする」「一般的にはこうだが、自社はこのように工夫してより高い効果を出す」といった視点も意識してみてください。
なぜ自社の取り組みが優れているのかを明確に伝えることで、事業の効果に説得力を持たせることができます。
面接審査突破のための必須対策
新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業には面接審査があります。
私がサポートさせていただいた事業者様の中でも、順調に書類審査を通過し、面接審査を経て採択されている方が出てきました。
詳しくお伝えすることはできませんが、面接でも丁寧な審査がされていることは間違いありません。その上で、審査突破のために必要な対策を3つお伝えしますね。
プレゼンの構成と時間配分
面接審査突破のための必須対策の1つ目は、効果的なプレゼンテーションの構成と時間配分です。
面接審査では、決められた時間内でプレゼンを行い、審査員からの質問にも答えていく必要があります。
基本的には申請書類に沿ってわかりやすく説明することが必要ですが、事業の概要、市場分析、独自性、実現可能性、期待される効果など、特にアピールしたいポイントはピックアップし、適切に伝えられるよう伝え方と時間配分を工夫する必要があります。
バランスの取れたプレゼンテーションを心がけてください。
想定Q&Aの準備
面接審査突破のための必須対策の2つ目は、綿密な想定Q&Aを準備することです。
想定される質問とその回答を事前に準備しておきましょう。
とくに、事業計画の弱点や課題、事業遂行の効果、計画数値、想定販路については、具体的に説明できるようにしておくことを忘れないでください。
もう一度申請書類を見直してシミュレーションすることもお忘れなく。記載内容のどの方向から質問が来ても対応できるよう準備すれば、自信を持って面接に臨むことができます。
質問に対する回答は「簡潔に」を心がけ、審査員にしっかり内容を理解してもらえるよう工夫しましょう。
熱意と自信の伝え方を工夫
面接審査突破のための必須対策の3つ目は、適切な熱意と自信の伝え方を工夫することです。
事業に対する熱意と自信を伝えることは重要です。ただし、過度な自信は避け、謙虚さとのバランスを取ることが心掛けてください。
具体的には、事業に取り組む動機や背景、これまでの努力や成果を簡潔に説明し、将来のビジョンを熱意を込めて語るなど、審査員に好印象を持って受け止められる情報はしっかり伝えることです。
質問に対しては誠実に答え、わからないことは正直に認めつつ、その課題にどう取り組む予定かを説明する。誠実さと前向きな姿勢をアピールしてください。
まとめ:高採択な申請準備にコツ
本助成金は2025年度も募集が続けられる予定です。
これまで数多くの補助金申請をサポートしてきた立場から見ると、
「この事業者様は対象外だな…」
(※ご自身では対象とお考えになっている)
「この計画では採択の可能性が低そうだな…」
「別の補助金の方が通りやすいのでは…」
と思うケースが少なくありません。
募集要項を読み、制度内容をよく理解して、自社がこの助成金の対象かをしっかり確かめましょう。
申請書類の作成や準備には時間がかかります。早めに準備を進めてくださいね。
みなさまが助成金に採択され、事業を成長させていかれることを心より応援しています。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。