こんなお悩みを解決します。
みなさまは、銀行との融資面談で「余裕資金として…」と言って借りようとしていませんか？
それ、融資審査に通らない典型パターンです。
このままだと、思うように融資を取れなくなってしまい、大変危険です。
この記事を書いている私は、信用調査会社（株）東京商工リサーチの元調査員です。現在は企業審査の経験を活かし、融資や補助金の審査突破をサポートしています。
この記事では、「余裕資金を借りたい」「余分に借りておきたい」と伝えると、なぜ融資に通らないのか—その原因と余分に借りるコツを解説します。
知らず知らずのうちに、審査落ちの“失敗パターン”にはまってしまわないように。
ぜひ最後まで読んで、対策をしてくださいね。
「余分に資金を借りておきたい」と思うのは当然です
会社経営ではいつ何が起こるかわかりません。
予想以上に資金が必要になったり、思わぬ資金トラブルが起こったり。
将来に備える姿勢は、とても大切ですよね。
「少し余裕を持って借りておきたい」と思うのは、ごく自然な感覚です。
将来を見据えた前向きな考えです。
慎重で責任ある経営者として、好印象を持たれることもあります。
もし過去に余裕資金が借りられなかった経験があっても、「余裕資金＝ダメ」と思わないでくださいね。「余分に資金を借りておきたい」というのは、経営者として健全な考え方です。
銀行は余裕資金を「どう思う」のか？
では、余裕資金を借りられないとき、銀行は「余裕資金」や「余分に借りたい」という申し出をどう思って断っているでしょうか？
融資担当者の受け止め方を知っておくことで、うまく借りるヒントが見えてきます。
ひとつずつ確認してみましょう。
「なんだか判断が難しい会社だな…」
もしかしたら、「なんだか判断が難しい会社だな…」と銀行に思われているかもしれません。
融資の審査は、「何に使うお金か」がはっきりしていることが基本です。
使い道を明確にせず、ただ「余裕資金がほしい」と伝えると、銀行はその金額が本当に必要か、適切な金額か判断できません。
もし貸した場合、その資金は事業にどう役立つのか、売上や利益にどうつながるのかもわかりません。
そうなると、「返済できるか」の判断も難しいです。
全体的に「どう評価したらいいか判断しづらい会社だな」と思われてしまう。そして借りられなくなってしまうのですね。
「もしや資金繰りがキツイのでは？」
「もしかして資金繰りがキツイのでは？」と銀行に思われる可能性もあります。
健全な会社であれば、ある程度の資金計画は立てられる―。銀行はそう思っています。
なので「余裕資金」のような”いつどう使うかわからない資金”が必要と聞くと、銀行は「もしかして資金に不安がある？」と受け取る可能性があるんですね。
実際には将来を見越した備えであっても、「先行きが不安だから、とりあえず借りておきたい」という印象を与えてしまうことも。
全体として「なんだか不安な会社だな」と思われ、借りられなくなってしまいます。
「安心して貸せない」
1つ目でもお伝えした通り、銀行は「何に使うお金か」を知りたがります。
使い道を聞いて、資金が会社の成長に繋がるか、返済できるかまでを予測して、そこで「大丈夫だ」と思えてはじめて、銀行は融資をしてくれます。
貸すからには大切に使って、そしてキッチリ返してほしいですからね。
その判断の土台になる”使い道”がわからないと、銀行は安心して融資することができません。
「余裕資金」という言葉だけでは、そうした判断材料が足りず、銀行を不安にさせてしまいます。
「そのお金、本当に必要？」
余裕資金を「そのお金、本当に必要なの？」と思っている可能性もありますね。
余裕資金がほしい方の多くは、「運転資金として借りておきたい」のではないでしょうか。
設備資金であれば見積書などを見せることができますが、運転資金だとそうはいきません。
そのぶん、融資担当者に使い道を納得してもらえる説明が必要です。
その説明が上手くできていないと、「そもそも本当に必要なのか？」と疑問を持たれ、借りられなくなってしまいますね。
銀行が余裕資金を「どう思うか」をお伝えしました。
「うちもそう思われてるかも…」とドキッとした方もいるかもしれませんね。
余裕資金を借りるためには、押さえておきたい重要ポイントがあります。
次のパートでお伝えしますね。
余裕資金はダメではない！融資審査に通る「借り方」がある
銀行が余裕資金を貸してくれないのは、「使い道がわからない」と感じているからです。
ということは、
「何のために必要なのか」を、銀行に納得してもらえる形で説明できれば、余裕資金でも借りられる可能性は十分ある、ということです。
実際、余裕資金を希望しても借りられない方の多くは、その中身をうまく説明できていません。
ただ「余裕資金がほしい」とだけ言ったり、「借りられるだけ借りたい」と伝えてしまっていませんか？
これでは、銀行から見て「使い道がわからない」と判断されてしまいます。
使い道を説明しなくても余裕資金を借りられるのは、銀行から「ぜひ借りてください！」と声がかかるような、限られた優良企業だけです。
でも、この記事を読んでいるみなさんの多くは、
「余裕資金を借りようとしたけどうまくいかなかった」
「ちゃんと借りられるか不安だ」
そんな苦い経験や不安がある方なはず。
であれば、銀行から確実に余裕資金を借りるために、誠実に、一生懸命に、「何に使うのか」を伝える努力が必要です。
「知り合いの会社は“余裕資金”って言って借りられたって言ってたけど…」
という成功例があるのなれ、その会社はきっと、“余裕資金”を借りられるだけの説明や準備をしていたのでしょう。
成功した結果だけ見て、その過程を見ないのはダメですよ。
これで余裕資金は借りれる！融資の審査に通る具体例
これまでの説明で、余裕資金を借りるには、銀行に「何を使うのかを説明し、その資金が必要だと納得してもらう必要があることはわかりましたね。
では、具体的にどう伝えれば余裕資金を借りることができるのか。ここでは「伝え方の具体例」をご紹介します。
“万が一”ではなく“起こりうるズレ”として説明する
余裕資金の審査に通る1つ目の伝え方は、“万が一”ではなく“起こりうるズレ”として説明することです。
「念のために余裕資金がほしい」では、内容がぼんやりしていて銀行に「何に使うのか」理解されません。
「いつ、どんなズレが起きる可能性があるか」を具体的に伝えてみましょう。
たとえば、広告宣伝の効果は、通常は3ヶ月後に出るけれど、「場合によっては5ヶ月かかるかもしれない」と説明する。
そうすれば、その2か月分のズレに備えた“計画的な備え”として、銀行からも受け入れてもらいやすくなります。
支払と入金のズレを伝える
余裕資金の審査に通る2つ目の伝え方は、支払と入金のズレを伝えることです。
たとえば「仕入れから入金までに3ヶ月あるので、その間の資金が必要」というように、仕入れの支払いが先に発生し、売上の入金はあとになる。その間の資金が必要。
というように具体的に説明しましょう。
なんとなく「余裕資金」と伝えるのではなく、“必要な運転資金”と銀行に思ってもらうことが大切です。
黒字化までの期間は長めに見積もる
余裕資金の審査に通る3つ目の伝え方は、黒字化までの期間は長めに見積もることです。
たとえば、新規事業や経営改善が軌道に乗るまでには、時間がかかることがありますよね。
そんなとき、「どれくらいかかるかわからないから、とりあえず余裕資金と言っておこう」「必要資金はとり急ぎ短めに見積もって、万が一伸びた分を余裕資金で借りよう」という借り方はやめましょう。
最初から黒字化までの期間を長めに見積もって、その期間の資金が必要と伝えるのです。
必要資金を慎重に見積もった計画のほうが、銀行からの信頼も得やすいです。
支出から成果が出るまでの“時差“をはっきり伝える
余裕資金の審査に通る4つ目の伝え方は、支出から成果が出るまでの“時差“をはっきり伝えることです。
広告宣伝、人材育成、商品開発など、戦略的な支出はすぐに成果が出ませんよね。
お金が出て行ってから、（売上などの成果として）入ってくるまで時間差があります。
この成果が出るまでの期間をしっかり見積もり、その期間の資金を借りたいと明確に伝えましょう。
銀行にも筋の通った話として理解してもらえるはずです。
重要なのは「必要な資金だ」と銀行に理解してもらうことです。そのために、伝える努力を怠らないでくださいね。
【実例】余裕資金は“使途不明金”!?
先日、ある経営者の方が、銀行融資がうまくいかなかった時の話をしてくれました。
原材料の仕入れや広告宣伝費、人件費など、具体的な使い道を説明して融資をしてほしいと銀行に伝えた。そして、それとは別に、同じくらいの金額を「何かあったときのために、余裕をもって借りておきたい」と伝えたそうです。
すると、融資担当者に、
「社長、何に使うかわからないお金なんて貸せませんよ。悪い政治家の使途不明金じゃないんだから」
と言われたそうなんです。
使途不明金とは、衝撃的な表現ですよね。
実は、その経営者の方の頭の中では、「広告の効果が出るのが遅れた時に備えて」とか「原材料が高騰した場合に対応できるように」など、ぼんやりと使い道のイメージがあったそうです。
でも、それを“余裕資金”という一言で済ませてしまった。
使途不明金と指摘された後に、どうにか説明しようとしたそうですが、上手く説明できず。
結果は、希望額よりもずっと少ない融資しか通らなかったそうです。
頭の中にある考えは、曖昧な言葉にせず、きちんと言葉にしなければ相手に伝わりません。
銀行は「説明された内容」でしか判断できないからこそ、こちらは丁寧に、誠実に、理解してもらえるように説明することが大切です。
この融資担当者の方は、社長と比較的”気安い”関係だったので、こうしてちょっとドギツイ言葉で教えてくれましたが、もし銀行とそこまでの関係性が築けていなかったら―。
こんな指摘すらもしてもらえず、「使い道がよくわからない」と思われ、さくっと融資を断られて終わってしまうかもしれないですよね。
みなさまも、「余裕資金」が「使途不明金」と受け取られないよう気をつけて、十分に準備をして融資に臨んでくださいね。
まとめ：“念のため”はダメ！伝え方次第で余裕資金は借りれる
単に「余裕資金」と伝えただけでは、銀行の審査は通りません。
でも、余裕資金の中身を言葉にして、銀行に納得してもらえるような説明できれば―。
それは“余裕資金”ではなく“必要な資金”になり、借りられる可能性が高まります。
資金を貸してくれる銀行には、誠心誠意言葉を尽くしましょう。
銀行は、前向きで現実的な資金計画に対しては、良心的な対応をしてくれるものですよ。
ぜひ銀行から信頼され、良い関係を築き、思い通りに融資を勝ち取ってくださいね。
みなさまの融資の成功を心から応援しています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
会社信用ドットコム代表 佐藤絵梨子
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