補助金の採択通知を受け取ると、「これで補助金をもらえる」と考えがちですが、それは大きな誤解です。
採択はあくまで「内定」です。採択後もいくつかの手続きを行い、審査を通過しなければ補助金は受け取れません。
本記事では、採択後の手続きの一つ『交付申請』について、実務的なコツを解説します。
※本記事は、新事業進出補助金の第2回公募要領の内容をもとに作成しています。申請時は必ず最新の公募要領を確認してください。
この記事を書いている私のプロフィール
佐藤絵梨子(さとうえりこ)
会社信用ドットコム代表・会社信用クリエイター
世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。
*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411)
新事業進出補助金の「交付申請」とは
交付申請とは、採択時に提出した事業計画書等に記載した経費の金額を、正式な見積書に基づいて確定させる手続きです。
新事業進出補助金では、交付申請後に補助金事務局から「交付決定通知書」を受け取った後でなければ、補助事業(※契約(発注)、納入、検収、支払など)を進めることはできません。
「交付決定通知書」を受け取る前に行った事業は補助金対象外となり、補助金の減額や全額不支給等になります。
交付申請は、原則2か月以内に行う必要があります。期限内に申請しない場合は、採択の取消や次回以降の応募申請ができなくなります。
補助事業の実施期間も交付決定日から 14 か月以内(ただし採択発表日から 16 か月以内)と決められています。
早めに交付申請をしないと、補助事業を行える期間が短くなりますので、採択後は速やかに交付申請を開始しましょう。
採択でも油断禁物!交付申請の注意点
採択後の交付申請は、ルールに沿って正しく進めないと、補助金の減額、全額不支給、採択の取り消しになる危険性があります。
よくある失敗ケースと手続きのルールをご紹介しますので、しっかり理解をして手続きを進めましょう。
交付決定前に発注・契約・支払をしない
新事業進出補助金では、採択後に交付申請の手続きを行い、「交付決定通知書」を受け取ります。
この交付決定通知書に記載されている「補助事業の開始日」の前に、契約(発注)、納入、検収、支払などを行ったものは補助対象外となります。補助金の減額や全額不支給となる場合もありますので、十分に注意しましょう。
例えば、以下のようなケースが該当します。
交付申請で補助金減額や全額不支給になり得るケース
- 採択までの審査では対象経費とみなされていたが、交付申請で詳細な書類を提出したことで補助金対象外経費と判明した場合
- 応募申請時に提出した事業計画書等に記載した経費の金額よりも、交付申請で提出した正式な見積り書の金額が安くなった場合
- 交付決定通知書の発行及び書類に記載された「補助事業の開始日」より前に、補助事業を開始した場合や、契約(発注)、納入、検収、支払、役務の提供等が行われた場合
- 決められた申請期限内に交付申請の手続きを行わない場合 など
採択後の「交付申請」の作業の流れ
交付申請では、オンライン説明会への参加、決められた様式の書類を準備、電子申請システムで入力・申請をするなど、さまざまな手続きが必要になります。
【必須参加】事務局主催のオンライン説明会
採択事業者は、原則として事務局が主催する「交付申請に関する説明会」への参加が必須です。
この説明会では、交付申請の具体的な手続き方法、提出期限、補助対象外経費の判断基準など、最新かつ重要な情報が提供されます。
事前に今後の手続きの関連書類を読み込み、疑問点を整理して説明会に参加すると、ミスや漏れがなくなり、スムーズに手続きを進めることができます。
必要書類の準備
交付申請では、下記の書類が必要です。
交付申請の必要書類
| 必要書類 | 概要 | |
|---|---|---|
| ① | 経費明細表 | 補助事業に要する経費の詳細を記載する書類です。事務局指定のフォーマットを使用します。補助対象となる経費を明確に示すことで、適正な補助金額の算定と経費の妥当性を審査するために必要。 |
| ② | 見積依頼書 | 発注先に対して見積を依頼する際に仕様・要件を明示し、書類を作成する必要があります。具体的な仕様・機能などと、見積書との整合性や価格の妥当性がチェックされます。 |
| ③ | 見積書 | 発注予定先から見積書を取得する必要があります。50万円以上(税抜)の場合は3社以上、50万円未満は1社以上(広告宣伝・販売促進費は2社以上)の見積が必要です。価格の妥当性、仕様の一致、有効期限内であることなど、適正な競争原理に基づいた発注先選定が行われているかがチェックされます。 |
| ④ | 追加資料 | 申請する経費の種類に応じて、別途補足資料が必要になる場合があります。機械装置・システム構築費ではカタログや仕様書、建物費では設計図や配置図、広告宣伝・販売促進費では価格妥当性を証明する資料などが求められます。 |
| ⑤ | リース共同申請に係る書類 | ※リース共同申請として採択された場合のみ必要 リース会社が交付申請を行う際に必要な書類です。申請事業者としての確認書、リース料軽減計算書、リース取引に係る宣誓書などを提出します。リース契約の適正性とリース料の軽減効果などがチェックされます。 |
| ⑥ | 組合特例に係る書類 | ※組合特例として採択された場合のみ必要 組合として補助事業を行うことについて、総会等の議決を得ていることを証明する書類(組合定款や議事録等)が必要です。組合の正式な意思決定プロセスを経て事業実施が決定されているかがチェックされます。 |
| ⑦ | その他事務局より提出を依頼した書類 書類 | ※事務局から個別に依頼があった場合のみ必要 個別の事業内容や申請内容に応じて、事務局から追加で提出を求められることがあります。審査の過程で不明点や確認事項が生じた場合に、その解消のために必要となります。 |
交付申請の必要書類の中でも、とくに「見積書」は経費金額確定のための重要書類です。
この「見積書」の不備で差戻しになるケースがよく見られますので、作成ルールやチェックポイントをしっかり確認してください。
例えば、見積書と相見積書は同一条件、名称不一致は認めないなど、細かくルールが決まっています。
また、申請する経費によって必要書類が異なるので、各経費の必要書類を確実に準備しましょう。
必ず公式サイトの「採択された方」のページに掲載されている最新の交付申請ガイドで、詳細を確認してください。
電子申請(交付申請)
電子申請システム「Jグランツ」で必要事項の入力や書類添付を行い、交付申請を提出しま す。
公新事業進出補助金の公式サイトの「採択された方」のページには、交付申請の電子申請の手順を解説した「電子申請システム操作マニュアル(交付申請~補助事業実施中)」も掲載されています。
詳細を確認しながら申請を進めましょう。
交付申請完了後に「交付決定通知書」を受け取る
交付申請を行うと、提出書類や経費内容等がチェックされます。その審査を通過すると「交付決定通知書」が発行されます。
この「交付決定通知書」を受け取ったら、まず以下の重要事項を必ず確認しましょう。
- 交付決定額: 確定した補助金の上限額(※採択時と異なる場合あり)
- 補助事業期間: 経費の支払いと事業実施が認められる具体的な期間(開始日と完了期限)
交付決定通知書に記載されている交付決定日以降に、契約(発注)、納入、検収、支払などを開始してください。
まとめ
新事業進出補助金は、採択後も「交付申請」という重要な手続きがあります。
決められたルールに沿って手続きを行わない場合は、補助金の減額や全額不支給、採択取り消し等になる危険性もあります。
手続きのルールをしっかり確認し、採択後は速やかに手続きを進めてください。
交付申請の詳細は、公式サイトの「採択された方」のページに掲載されている資料を必ず確認しましょう。
採択実績豊富な審査突破のプロが、補助金申請から入金までをトータルサポートします。
※訪問による相談をご希望の方は、代表電話:03-4500-1527もしくはお問い合わせフォームから対応可否をお問い合わせください。




