中小企業省力化投資補助金(一般型)の申請で重要なのが、「事業計画書」の作成です。
採択されるかどうかを左右する大切な資料です。内容次第で結果が大きく変わります。
この記事では、中小企業省力化投資補助金(一般型)の事業計画書の全体構成と作成の注意点、そして各項目の書き方のポイントを解説しました。
私が事業計画書の書き方指導で実際よく行うアドバイスをもとにお伝えしています。事業計画書を作成する方は参考にしてみてください。
※本記事は中小企業省力化投資補助金(一般型)の第4回公募要領をもとに作成しています。
この記事を書いている私のプロフィール
佐藤絵梨子(さとうえりこ)
会社信用ドットコム代表・会社信用クリエイター
世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。
*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411)
事業計画書はその1~3を作成する
中小企業省力化投資補助金(一般型)では、2種類の事業計画書を作成する必要があります。参考様式や指定様式がありますので、公式サイトからダウンロードしておきましょう。
作成する事業計画書の種類
※表は横にスクロールしてご覧ください
| 書類名 | 様式 | 内容 |
|---|---|---|
| 事業計画書(その1・その2) | Word形式(参考様式) | 事務局が公開している【参考様式】をもとに作成します。事業の概要・省力化内容・効果などを文章で説明します。参考様式はそのまま使用することをおすすめしますが、自社の計画に合わせて内容を調整して構いません。審査基準を満たしていることや、強みや特徴が伝わる形に整えて作成しましょう。 |
| 事業計画書(その3) | Excel形式(指定様式) | 【指定様式】です。数値計画や省力化指数などを数値で示します。公式サイトからダウンロードして使用します。6シートが用意されており、【指定様式】事業計画書及び(別紙1~3)の4つは提出必須、【参考書式】と表示されているシートは参考として活用するものになります。 |
事業計画書作成の注意点
事業計画書の作成に取り掛かる前に、確実に採択される事業計画書を作成するための3つの注意点をお伝えします。必ず確認してください。
公募要領や事業計画書作成の参考ガイドを活用する
中小企業省力化投資補助金(一般型)の公式サイトに掲載されている「事業計画書作成の参考ガイド」には作成のポイントが示してあります。また、事業計画書その1・その2の参考様式内にも、記載のポイントや審査の観点も示してありますので、上手く活用しましょう。
事務局が示すポイントを外している事業計画書をよく見かけますので、資料は必ず確認してください。どちらも公式サイトからダウンロードできます。
作成では5つの観点を意識する
公式サイトの事業計画書作成の参考ガイドに掲載されている次の5つの観点を意識して事業計画書を作成することが大切です。経営資源を再配置し、持続的な生産性向上を目指す計画であることが明確に伝わるように記載しましょう。
- 現在の経営環境や具体的な業務プロセスを十分に把握していることを示す
- 設備投資でどの部分を省力化できるかを明確に示す
- 導入設備が自社固有の課題に対応していることを伝える
- 省力化で生まれるリソースをどこに活かすかを示す
- 実行体制・スケジュール・資金計画が現実的であることを示す
4つの審査項目も意識して作成する
中小企業省力化投資補助金(一般型)の審査では、とくに以下の4項目が見られます。作成時もこの4つの項目を満たす計画だと伝わるように記載することを心がけましょう。
- 適格性:補助金の目的・要件に合致するか
- 技術面:省力化指数・投資回収期間・付加価値額などが妥当か
- 計画面:実施体制やスケジュールが現実的か
- 政策面:地域経済・賃上げ・社会的意義に貢献するものか
事業計画書の具体的な書き方とポイント
事業計画書(その1・その2・その3)に記載すべき内容、各項目ごとの書き方のポイントをまとめました。事業計画書は審査で特に重視されますので、記載ポイントを押さえて、丁寧に作成をしましょう。
事業計画書(その1・2)の書き方とポイント
事業計画書(その1・その2)では、主に6つの大項目について記載する必要があります。
1.事業者の概要(現状分析・経営課題)
ここでは、自社の全体像を伝えます。
数字を含めて経営現状を整理するだけでなく、どんな考えで事業に向き合い、何を大切にして成長してきたのかもわかりやすく伝えましょう。理念や方針など、会社が大切にしている芯を伝えることで、経営の方向性や強みを理解してもらいやすくなります。
この部分が丁寧に書かれていると、省力化投資が単なる設備導入ではなく、自社の理念や長期戦略の延長線上にあることが伝わり、計画全体の実現可能性が高いと感じてもらいやすくなる効果があります。
ワンポイントアドバイス
冒頭部分で「何をしている会社か」「どのような理念・将来像を描いているか」を正しく伝えられないと、その後に続く計画内容は十分に理解してもらえません。私の事業計画書の書き方指導でも、この冒頭部分の記載は特に大切にしています。自社の場合はどのように書けば正しく伝わるのかをよく考え、手を抜かず丁寧に作成してみてください。
1-1.現状分析
自社の現状を整理して示し、この後のパートで「なぜ今、省力化投資が必要なのか」を納得させる土台をつくるパートです。
市場環境や競合の動き、自社の強み・弱みを具体的に示し、課題がどこにあるのかをはっきり伝えることが大切です。SWOT分析や3C分析などを活用すると、社内外の状況を整理しやすくなります。
感覚ではなく、売上や人員などのデータを用いて客観的に示すことで、後の計画に説得力が生まれます。
1-2.経営課題
現状分析を踏まえて、自社が抱える経営課題を整理し、「なぜ今、省力化投資が必要なのか」をさらに納得させることを意識して記載しましょう。現在の「どの工程で」「どのような課題があり」「なぜ生じているのか」をはっきり伝えることがポイントです。
この部分が次の「補助金活用の動機・目的」につながります。課題と改善方向の関係性が伝わるように記載することが大切です。
1-3.省力化補助金活用の動機・目的
省力化補助金を活用してどのような課題を解決し、どのような成果を目指すのかを分かりやすく記載しましょう。省力化できるところはどの部分で、逆により注力すべき(時間や労働力の投入で業績向上に繋がる)ことは何かを明確に伝えてください。
本補助金が単なる設備導入ではなく、経営課題を解決するための戦略的投資であることが伝わるように意識して記載しましょう。
2.省力化投資の具体的内容(投資全体金額と補助申請金額を含む)
導入予定の機械設備等について、具体的にどのような機械・システムなのか、性能や金額などを具体的に記載しましょう。発注予定先などが決まっている場合は併せて記載する必要があります。
導入設備に自社の課題を解決する独自性や革新性があることを明確に伝えることが大切です。
汎用性がある設備の場合も、自社専用にカスタマイズしていたり、複数組合せて配置や工程を工夫するなどして、高い省力化効果や付加価値を生み出す効果があることをわかりやすく記載することがポイントです。
2-1.設備導入による業務プロセスや配置のビフォーアフター
この項目では、設備導入によってどのように業務プロセスや人員配置が変わるのかを具体的に示しましょう。
事業計画書その3の「省力化業務プロセス図」を活用し、導入前後の変化を配置図や写真などで視覚的に示すと効果的です。
2-2.省力化投資により期待される効果と事業者全体への波及効果
設備導入によってどのような効果が期待できるのか、導入効果がその事業の改善だけにとどまらず、企業全体の効率化につながることを審査員に納得してもらえるようにわかりやすく記載しましょう。
事業計画書その3「省力化算定シート」で算出される省力化指数も踏まえて、効果を定量的に説明してください。例えば、「作業時間〇%削減」のように具体的に数値を入れて説明することが必要です。
3.省力化投資で生まれる経営資源の活用による新たな付加価値の創出
省力化によって生まれた時間や人員といった経営資源を、どこにどのように再配分して会社を成長させていくのかをわかりやすく伝えましょう。例えば、既存業務で人手が不足している高付加価値業務への再配置や、新規顧客開拓、新商品・サービスの開発への活用など、具体的に説明してください。
省力化による業務削減をどう価格戦略やサービス向上に活かすかという視点で記載することがポイントです。省力化することだけが目的ではないことをしっかり伝えてください。
また、新規事業開発を伴う場合には、市場環境や競争優位性を踏まえて、経営戦略の説明も必要です。再配置した従業員のスキルアップや人材育成の方法にも触れる必要があります。
地域貢献やシナジー効果がある場合は審査で高評価です。必ず記載してください。
補助金を支給する価値があるのかをチェックされるパートです。丁寧に記載してください。
3-1.労働生産性と給与支給総額等の向上
申請者自身が設定した「高い」賃上げ目標があれば、審査で考慮されますので説明しておきましょう。
大幅な賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を利用し、大幅賃上げに取り組む事業者は、達成に向けた詳細な取り組み内容をこちらに具体的に記載する必要があります。
4.財務計画(資金調達と今後の数値計画)
補助事業に必要な資金の調達の方法をわかりやすく記載しましょう。自己資金か借入か、補助金が活用できない場合の資金調達の方法も記載する必要があります。
事業計画書その3を作成し、付加価値額、労働生産性、給与支給総額、投資回収期間などの数値との整合性も確認しながら、その数値の実現方法をわかりやすく記載してください。
本当にその計画数字を実現できるかどうかという「実現可能性」が見られる大切なパートです。中小企業省力化投資補助金(一般型)は数字的な効果を重視して見ていますので、丁寧に記載をしてください。
数値の作成や事業計画書の書き方が心配な方は、審査突破のプロが添削をします。下記からお問い合わせください。
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5.事業の実施体制とスケジュール
事業の実施体制や社内外の役割分担を整理して、わかりやすく記載しましょう。
導入システムや設備がその体制で使いこなせるか、経営者が先頭に立ってその体制構築に関与しているかもチェックされます。審査員に納得してもらえるように記載しておきましょう。
省力化や付加価値創出が期待通りに進まなかった場合の対応策や、そうならないためのリスク管理策も記載が必要です。3~5年の中長期的なスケジュールを立て、無理なく進められることをしっかり説明しましょう。
6.補足事項
任意記載です。本文で説明しきれない特記事項やアピールポイント、審査員の疑問を解決する内容がある場合は記載しておきましょう。
事業計画書(その3)の書き方とポイント
Excelの指定様式に「労働生産性」「給与支給総額」「1人当たり給与支給総額」「省力化指数」「投資回収期間」「付加価値額」の数値を整理し、数値の算出根拠とともに記載します。
記載のポイントは、事業計画書その1・その2で記載した内容と整合性を考えて記載すること。設備導入による効果を無理なく反映させた数値を示すことです。
中小企業省力化投資補助金(一般型)は数字的な効果をかなり重視して見ていますので、丁寧に記載をしてください。
作成した数値は、補助事業終了後の効果報告でも達成状況を確認されます。理想値ではなく、実際に到達できる現実的な水準、計画内容を考慮しても無理のない水準の数値であることがポイントになります。
算出根拠の記載が甘いケースが目立ちますので、数字の根拠を明確に、納得感のある説明を心がけてください。
事業計画書(その3)の作成で苦戦している方がかなり多いです。スケジュールに余裕を持って、早めに作成に取り掛かってください。
審査突破のプロからのメッセージ
中小企業省力化投資補助金(一般型)の事業計画書は、「なぜその投資が必要なのか」「その結果、どう生産性や賃上げにつながるのか」を一貫したストーリーで伝えることが採択の重要ポイントになります。
どれだけ素晴らしい計画でも、書き方が悪ければ、審査員にその良さを理解してもらえません。
参考様式や「事業計画書作成の参考ガイド」を上手に活用し、審査の観点で基準を満たし、良い成果を上げていくことを審査員に理解してもらえるように、丁寧に作成を進めましょう。
貴社が作成した事業計画書の内容チェックや改善点のアドバイスを必要とされる方は、審査突破のプロが添削・書き方を指導します。下記からお問い合わせください。
中小企業省力化投資補助金(一般型)では第1回公募から書き方指導を行い、採択実績もあります。安心してご相談ください。
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■添削をする書類:補助金の事業計画書





