前回の記事(「補助事業の具体的取組内容」の書き方)に続き、今回は事業再構築補助金の「将来の展望」の書き方をお伝えします。
再構築で行う新規事業の内容を詳しく書いていくパートですね。
下記見出しの黄色部分の7項目を解説しています。
事業計画書の見出し
1:補助事業の具体的取組内容
(1)現在の事業内容
(2)SWOT分析
(3)事業環境
(4)事業再構築の必要性
(5)事業再構築の具体的な内容
(6)既存事業の縮小・廃止・省人化について
2:将来の展望
(1)ユーザーと想定顧客ニーズ
(2)マーケット及び市場規模
(3)競合との差別化
(4)既存事業との差別化
(5)既存事業とのシナジー効果
(6)想定される課題・リスクとその解決策
(7)その他(審査項目(4)政策点の項目等)
3:本事業で取得する主な資産
4:収益計画
(1)実施体制
(2)スケジュール
(3)資金調達計画
(4)収益計画
(5)付加価値額の算出根拠
事業再構築補助金の事業計画書はフリーフォーマットです。必ずこの見出し・順番である必要はありません。みなさまの計画内容にあわせて見出しの追加・順番を変えるなど色々と工夫なさってください。*上記は単独申請かつ通常枠or回復・再生応援枠での申請を想定した構成です。
この記事は、はじめて事業計画書を作成する方向けにわかりやすく・簡単な言葉で書き方をお伝えしています。
書き方のイメージがつかみづらい箇所には記入例も入れました。
私が事業計画書を添削させていただいていて、
ここの書き方で苦労する方が多いな
ここは記載ポイントとズレやすいな
と感じた箇所は念入りに解説しています。
3分半ほどで読める記事です。
ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
▼事業再構築補助金の書き方の記事▼
(↑まず最初にお読みください↑)
この記事を書いている私のこと 世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。同社退職後、大手企業との取引実現から銀行融資や補助金獲得まで支援するサービスを展開中。佐藤絵梨子/会社信用クリエイター
*詳しいプロフィールはこちら
事業再構築補助金のサポート実績(2021年3月〜2022年3月)
もくじ
「将来の展望」で伝えること
まず初めに「将来の展望」で記載する内容をザックリ把握しておきましょう。
「将来の展望」では主に次の3つを記載していきます。
「将来の展望」のパートで記載すること
- 新規事業で進出する市場
- 再構築にあたり検討したこと
- 再構築で期待される効果
「将来の展望」で説明するのは再構築で新しく行う事業(新規事業)のことです。
ターゲットや市場動向で既存事業の内容を書いたり、既存事業と新規事業の内容がごちゃごちゃになっている方がいるので、注意してくださいね。
さらに、このパートではただ単に市場動向や競合を調べて記載するだけでは情報不足です。
調べた結果、みなさまの会社はどのような戦略で再構築に取り組み、どのような成果を出せるのか
まで伝えることができてはじめて、事業計画の実現性に説得力が出てきます。
1つずつ記入ポイントをお伝えしますね。
ユーザーと想定顧客ニーズの書き方
新規事業のユーザー(ターゲット層)をはっきり示し、そのユーザーがどのようなニーズを持っているのか(想定ニーズ)を記載します。
ユーザー(ターゲット層)は「一般個人」「法人」のようなサラッとした記載だけではダメですよ。
それぞれ次のような項目も含めて具体的に記載しましょう。
ユーザーが一般個人の場合 | ユーザーが法人の場合 |
・顧客が存在するエリア ・性別 ・年齢層 ・職業 ・家族構成 ・抱えている悩みや課題 ・製品・サービスへのニーズ | ・顧客が存在するエリア ・業界や業種 ・売上規模 ・顧客数 ・抱えている悩みや課題 ・製品・サービスへのニーズ |
「抱えている悩みや課題」「製品・サービスへのニーズ」はお客様の声を記載するイメージです。
『新規事業にはニーズがある』『新規事業はこのようなニーズを取り込む事業だ』(だからこそ新規事業は成功する!)ということ伝えましょう。
具体的なユーザーと想定ニーズを記載するだけでなく、「そのユーザーがどれだけ存在するのか」(想定される顧客規模・数)についても必ず記載してください。
例えば、飲食店などの場合、周辺エリアの人口推移などのデータから顧客規模を算出できるはずです。

マーケット及び市場規模の書き方
この「マーケット及び市場規模」をどう書いたら良いかわからない、難しいと感じている方は多いと思います。
前回の記事(「補助事業の具体的取組内容」の書き方)で、
事業再構築補助金の事業計画書では、
我が社はこの「強み」とこの「市場機会」を活かして事業再構築を成功させます
という成功ストーリを伝えることが大事です
とお伝えしたのですが、「マーケット及び市場規模」は、まさにこの「市場機会」を説明する項目になります。
つまり、「マーケット及び市場規模」で説得力のある説明できないと、新規事業の実現性(できるよ!成功するよ!)が審査員にきちんと伝わらなくなってしまいます。
説得力のある説明にするために、次の内容を意識して記載するようにしましょう。
「マーケット及び市場規模」で明確にすること
- そもそも新規事業の市場はどこなのか
(新規事業が飲食店経営であれば「外食市場」などになるはずです) - どれくらいの市場規模なのか
(市場規模●●●億円など) - 市場は近年どのように推移しているのか・トレンド
(市場は右肩上がりで推移・●●●が求められる傾向にあるなど) - 将来どのような推移が見込まれるか・将来のトレンド予測
(市場はこれからも拡大予想・●●●のニーズが高まりそうなど)
みなさまが再構築でこの市場への参入を決めたのは、
そもそも市場ニーズがあり、それなりの市場規模もあり、将来伸びていく(安定した推移が見込まれる)市場だと感じたから
だと思います。
ですので、そのような市場の”良い状態”をしっかり・はっきり伝えることを意識して、この項目を記載してください。
根拠になるグラフやデータ、数字、トレンドも入れて市場の好調ぶりを説明をしましょう。
公募要領では、市場動向等を簡易に把握できる統計分析ツールも紹介されています。こちらもチェックしておくと良いですね。
文末では「だからこそこの市場に決めた」「この市場なら新規事業は上手くいく」という結論に持っていくと、説得力を持って内容を伝えることができると思います。
競合との差別化の書き方
「競合との差別化では」では、新規事業の製品・サービスが競合他社と比べて、
- 価格・性能的に優位であること
- 収益性があること
という2つの切り口で記載しましょう。
「価格」は具体的な数字を入れて説明すること。「性能」も”どのような性能が優れているか”具体的に記載します。
「我が社はここが良いと思う」「収益性はある」という主観ではなく、「他社は●●●だけど、我が社は▲▲▲」というように競合他社と比較してください。

具体的な競合(A社・B社など)を記載し、比較すると良いですね。
下記のような表で差別化のポイントをまとめるのも良いと思います。
他社との比較で優れているところを明確に伝えられれば、みなさまの事業が市場で競争力があること(強い!勝てる!)や、収益性があること(稼げる!)も伝わります。
よく「競合はいない」とおっしゃる方がいますが、よほど革新的な事業でもない限り、競合が存在しない事業なんてありません。
完全に同じことをしている競合がいなくても、類似事業や、代わりとなる事業(貴社でなくても他で代用できる)が存在するはずです。
競合をきちんと調べた上で事業計画を立て、調査・検討した内容を詳しく記載してくださいね。
既存事業との差別化の書き方
「既存事業との差別化」はとくに熟考して丁寧に記載することをお勧めしています。
この項目は、サラッと記載して終わり!ではもったいないです。
差別化というのは「既存事業と新規事業の違い」ということですよ。
事業再構築補助金には「全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか」という審査項目があります。
既存事業と新規事業が大きく違うことは、リスクが高く、思い切った大胆な計画として受け取ってもらえるんです。
ですので、既存事業と新規事業で「何がどう違うのか」はわかりやすく記載し、しっかりアピールしておきましょう。

既存事業とのシナジー効果の書き方
シナジー効果は「新規事業を行うことで既存事業の売上も伸びる」「新規事業を行うことで既存事業にお客様を誘導できる」のような、お互いに良い効果(相乗効果)が生まれることです。
例えば、既存事業「日本料理店」、新規事業「そば・うどん店」の場合、
新規事業の店舗に来店したお客様が、既存店舗にも興味を持ち、来店する可能性が期待できる
などのシナジー効果が考えられますし、
既存事業「出版業」、新規事業「オンライン通信教育事業」の場合、
オンライン通信教育を受けた受講生が、講師の出版物・書籍を購入し、既存事業の売上が上がることが期待される
などのシナジー効果が考えられます。
2〜3つほど記載しましょう。
「新規事業は既存事業でシナジー効果が見込めるか」という点は事業再構築補助金の審査ポイントの1つです。
「シナジー効果が見込めるのであれば、それぞれの事業の一層の発展が期待されるので、この再構築は効果的な取り組みと言えますね!」ということですよ。
既存事業と新規事業にシナジー効果がないのは、計画そのものが少し弱い印象です。
会社のより一層の発展のためにも、シナジー効果がある事業計画を再考することも検討してください。
想定される課題・リスクとその解決策の書き方
「想定される課題・リスクとその解決策」では、「補助事業の課題が明確になっており、その課題の解決方法が明確かつ妥当か」という点が審査ポイントになっています。
どのような課題・リスクがあるか洗い出し、その課題・リスクへの対処策を記載しましょう。必ず「課題・リスク」「その解決策」をセットで書いてくださいね。
次のような表でまとめることをオススメします。
解決策は具体的に。「その対処法なら安心だ」「それだけ備えていれば大丈夫だろう」と感じてもらえるような説得力のある対策を記載します。
「課題・リスク」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、「事業化までにクリアしておくこと」「将来起こるかもしれない事態(起きないように対処する)」と考えてください。
補助期間(補助金経費の対象になる期間)の課題・リスクだけでなく、補助期間を終えた後の「将来起こると考えられる課題・リスクと対処法」も記載しておくことがポイントです。
「その他」の書き方
ここには「審査項目の(4)政策点」に記載されている項目や、応募する枠によって記載が求められる項目などについて、該当する方は記載をしておくと良いです。
下の表に内容をまとめておきました(第6回公募要領より抜粋)。
(3)再構築点 | |
④ | 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベ ーションに貢献し得る事業か |
(4)政策点 | |
② | 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。 |
③ | 新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。 |
④ | ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。 |
⑤ | 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、雇用の創出や地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。 |
⑥ | 異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供 するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。 |
もちろん、他の見出しで上記の内容を上手く盛り込むことができていれば、改めてここで記載する必要はありません。
「該当するものがあるけれど、他の項目では書ききれていないな」というものだけ記載してください。

この表の中で、「先端的なデジタル技術の活用」(政策点の②)と「地域貢献」(政策点の⑤)には必ず触れてください。
不採択になってしまった方からお話を伺うと、「先端的なデジタル技術の活用」と「地域貢献」が明確に記載されていないという指摘を受けている方が多いです(*)
*事業再構築補助金で不採択になった場合、事務局に電話で問い合わせると不採択コメントを教えてもらえます
「そもそもデジタル技術を活用するつもりはない」
「我が社の計画では地域貢献は関係ない」
という方は、計画そのもののレベル感が少し弱い印象です。
事業をより一層発展させるための試みとして、デジタル技術活用や地域貢献を盛り込んだ計画を改めて考えることも検討してください。
本日のまとめ・図表のダウンロード
本日のブログでは、事業再構築補助金の「2.将来の展望」に記入する7項目の具体的な書き方をお伝えしました。
わかりやすさ・読みさすさも意識し、必要に応じて図表や写真等も入れてくださいね。
本日の記事でご紹介した参考図表はこちらダウンロードできます。
参考図表のダウンロードはこちら
前回の記事でもお伝えしましたが、みなさまがせっかく良い事業計画を立てていても、事業計画書の書き方がマズければ計画の良さは正しく伝わりません。
「それぞれの項目で何を伝えたいのか」
「どのように伝えれば正しく計画の良さが伝わるのか」
この2点を意識して、1つ1つの項目を具体的に丁寧に記載してくださいね。
事業再構築補助金の書き方については下記の記事も公開しています。必要であればお読みください。
公開準備中(近日公開)
↑1番最初にお読みください↑
・事業再構築補助金の「補助事業の具体的取組内容」の書き方
・事業再構築補助金の「収益計画」の書き方(作成中)
事業再構築補助金の事業計画書を添削します 延べ7,000社を調査分析した実績と、事業再構築補助金の事業計画書を80件以上添削してきたノウハウを活かし、「会社の強み」と「事業計画の良さ」を正しく伝える事業計画書の書き方をアドバイスします。 補助金申請書/事業計画書の添削サービスのご案内です。事業再構築補助金・小規模事業者持続化補助金・ものづくり補助金に対応可能です。 続きを見る オンライン相談受付中 補助金の申請でお悩みの方のためのオンライン相談を受け付けています。 補助金申請書の添削サポート
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