本記事ではこのような疑問を解消します。
「将来の展望」は再構築で行う新規事業の見通しを詳しく説明するパートです。
私が事業計画書の添削をしていて、
ここの書き方で苦労する方が多い
ここは記載ポイントとズレやすい
と感じた箇所は、とくに詳しく解説しています。
書き方のイメージがつかみづらい箇所には、記載例も載せました。
ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
この記事を書いている私のこと
佐藤絵梨子/会社信用クリエイター
世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。同社退職後、大手企業との取引実現から銀行融資や補助金獲得まで支援するサービスを展開中。
*国が認定する経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411)です
<事業再構築補助金のご支援実績>
- 累計100件以上の事業計画書を添削
- 事業計画書の作成支援で累計14件採択
- 作成支援の累計採択金額2億2,300万円
*第1回〜9回(2021年3月〜2023年4月)
この記事で解説する項目
この記事で解説するのは、目次の2つ目のパート「2:将来の展望」に記載する6項目の書き方です。
事業計画書の目次(コピーOK)
1:補助事業の具体的取組内容
(1)事業再構築要件について(*1)
(2)現在の事業内容
(3)SWOT分析
(4)事業環境
(5)事業再構築の必要性
(6)事業再構築の具体的な内容
(7)既存事業の縮小・廃止・省人化について(該当者のみ記載)
2:将来の展望
(1)ユーザーと想定顧客ニーズ
(2)マーケット及び市場規模
(3)競合との差別化
(4)既存事業とのシナジー効果
(5)想定される課題・リスクとその解決策
(6)その他(審査項目の政策点の項目など)
3:本事業で取得する主な資産
4:収益計画
(1)実施体制
(2)実施スケジュール
(3)資金調達計画
(4)収益計画
(5)売上高の算出根拠
(6)付加価値額の算出根拠
【重要】
↓失敗しないために必ず確認↓
■1ページ目、2ページ目以降の記載について(*1)
第10回公募から下記の指示が追加されました。
▶️1ページ目に「既存製品と新製品、既存市場(顧客)と新市場(顧客)、既存事業と新事業などについて、これまでのものとこれからのものが、それぞれ何が異なるか」を具体的に記載すること(⬅︎この点をしっかり説明することで「事業再構築の定義」に合致する計画だと示してほしいということです)
▶️「現在の事業内容」以下の項目は2ページ目以降に記載すること
第10回公募要領(サプライチェーン強靱化枠を除く)P42ページに太線&下線で記載されています。必ず公募要領で詳細を確認し、記載ルールを守りましょう。
■見出しの項目・順番について
事業計画書の目次は上記の順番でなくても大丈夫です。計画内容にあわせて項目を追加したり、順番を変えるなど、工夫してください。
■「事業再構築の具体的な内容」について
「事業再構築の類型・指針との関連性」「提供する商品(サービス)」「提供価格」「導入する設備」「申請経費」のような”小見出し”を入れ、内容を整理して伝えましょう。
■「申請枠」や関連する助成金利用予定者が記載すべき項目について
上記の目次はどの申請枠でも記載すべき項目です。申請枠によっては追加で記載が必要な項目もありますので、必ず公募要領をご確認ください。サプライチェーン強靱化枠はその他の枠と公募要領が異なりますので、別途確認しましょう。
「将来の展望」で伝えること
まず初めに「将来の展望」で記載する内容を把握しておきましょう。
「将来の展望」では主に次の3つを記載していきます。
「将来の展望」のパートで記載すること
- 新規事業で進出する市場の状況
- 再構築にあたり検討したこと
- 再構築で期待される効果
「将来の展望」で説明するのは再構築で新しく行う事業(新規事業)の検討事項や効果です。
既存事業のことばかり記載しているケースをよく目にするので、ご注意くださいね。
また、ただ単に市場の状況や検討したことを記載するだけでは情報不足です。
その結果、みなさまの会社はどのような戦略で再構築に取り組み、どのような成果を出せるのか
ここまで伝えることができてはじめて、事業計画の実現性に説得力が出てきます。
1つずつ書き方のポイントをお伝えしますね。
ユーザーと想定顧客ニーズの書き方
新規事業のユーザー(ターゲット層)を示し、そのユーザーがどのようなニーズを持っているのか、どれだけの数存在するのかを記載します。
ユーザー(ターゲット層)については、「一般個人」「法人」のようなサラッとした記載ではダメですよ。
それぞれ次のような項目も含めて具体的に記載しましょう。
ユーザーが一般個人の場合 | ユーザーが法人の場合 |
・顧客が存在するエリア ・性別 ・年齢層 ・職業 ・家族構成 ・抱えている悩みや課題 ・製品・サービスへのニーズ | ・顧客が存在するエリア ・業界や業種 ・売上規模 ・顧客数 ・抱えている悩みや課題 ・製品・サービスへのニーズ |
「抱えている悩みや課題」「製品・サービスへのニーズ」は”お客様の声”と考えるとわかりやすいですね。
『新規事業にはニーズがある』『新規事業はこのようなニーズを取り込む事業だ』(だからこそ新規事業は売上が伸びて成功する!)ということを明確に伝えましょう。
「そのユーザーがどれだけ存在するのか」(想定される顧客規模・数)も必ず記載してください。
例えば、飲食店運営の場合は、周辺エリアの人口推移のデータなどから、どれだけの数が存在するかを算出できるはずです。

マーケット及び市場規模の書き方
この「マーケット及び市場規模」をどう書いたら良いかわからない、難しいと感じている方は多いと思います。
前回の記事(「補助事業の具体的取組内容」の書き方)で、
事業再構築補助金の事業計画書では、
我が社はこの「強み」とこの「市場機会」を活かして事業再構築を成功させます
という成功ストーリを伝えることが大事です
とお伝えしたのですが、「マーケット及び市場規模」は、まさにこの「市場機会」を説明する項目になります。
つまり、「マーケット及び市場規模」で説得力のある説明できないと、新規事業の実現性(できるよ!成功するよ!)が審査員にきちんと伝わらなくなってしまいます。
説得力のある説明にするために、次の内容を意識して記載するようにしましょう。
「マーケット及び市場規模」で明確にすること
- そもそも新規事業の市場はどこなのか
(新規事業が飲食店経営であれば「外食市場」などになるはずです) - どれくらいの市場規模なのか
(市場規模●●●億円など) - 市場は近年どのように推移しているのか・トレンド
(市場は右肩上がりで推移・●●●が求められる傾向にあるなど) - 将来どのような推移が見込まれるか・将来のトレンド予測
(市場はこれからも拡大予想・●●●のニーズが高まりそうなど)
みなさまが再構築でこの市場への参入を決めたのは、
そもそも市場ニーズがあり、それなりの市場規模もあり、将来伸びていく(安定した推移が見込まれる)市場だと感じたから
だと思います。
ですので、そのような市場の”良い状態”をしっかり・はっきり伝えることを意識して、この項目を記載してください。
根拠になるグラフやデータ、数字、トレンドも入れて市場の好調ぶりを説明をしましょう。
公募要領では、市場動向等を簡易に把握できる統計分析ツールも紹介されています。こちらもチェックしておくと良いですね。
文末では「だからこそこの市場に決めた」「この市場なら新規事業は上手くいく」という結論に持っていくと、説得力を持って内容を伝えることができると思います。
競合との差別化の書き方
「競合との差別化では」では、新規事業の製品・サービスが競合他社と比べて、
- 価格・性能的に優位であること
- 収益性があること
という2つの切り口で記載しましょう。
「価格」は具体的な数字を入れて説明すること。「性能」も”どのような性能が優れているか”具体的に記載します。
「我が社はここが良いと思う」「収益性はある」という主観ではなく、「他社は●●●だけど、我が社は▲▲▲」というように競合他社と比較してください。

具体的な競合(A社・B社など)を記載し、比較すると良いですね。
下記のような表で差別化のポイントをまとめるのも良いと思います。
他社との比較で優れているところを明確に伝えられれば、みなさまの事業が市場で競争力があること(強い!勝てる!)や、収益性があること(稼げる!)も伝わります。
よく「競合はいない」とおっしゃる方がいますが、よほど革新的な事業でもない限り、競合が存在しない事業はありません。
完全に同じことをしている競合がいなくても、類似事業や、代わりとなる事業(貴社の製品・サービスがなくても他で代用できるもの)が存在するはずです。
競合をしっかり調べ、自社が競合よりも上回っている点が審査員に伝わるように記載してくださいね。
既存事業とのシナジー効果の書き方
シナジー効果は「新規事業を行うことで既存事業の売上も伸びる」「新規事業を行うことで既存事業にお客様を誘導できる」のような、お互いに良い効果(相乗効果)が生まれることです。
例えば、既存事業「日本料理店」、新規事業「そば・うどん店」の場合、
新規事業の店舗に来店したお客様が、既存店舗にも興味を持ち、来店する可能性が期待できる
などのシナジー効果が考えられますし、
既存事業「出版業」、新規事業「オンライン通信教育事業」の場合、
オンライン通信教育を受けた受講生が、講師の出版物・書籍を購入し、既存事業の売上が上がることが期待される
などのシナジー効果が考えられます。
考えられるシナジー効果を2〜3つほど記載しておきましょう。
新規事業は既存事業でシナジー効果が見込まれるのであれば、それぞれの事業の一層の発展も期待されるので、今回の再構築が効果的な取り組みであることの説得力も増します。
逆に、既存事業と新規事業にシナジー効果がなければ、今回の再構築計画そのものが少し弱い印象ですので、シナジー効果がある事業計画を再考を含め、計画のブラッシュアップを検討した方が良いかと思います。
想定される課題・リスクとその解決策の書き方
「想定される課題・リスクとその解決策」では、「補助事業の課題が明確になっており、その課題の解決方法が明確かつ妥当か」という点が審査ポイントになっています。
どのような課題・リスクがあるか洗い出し、その課題・リスクへの対処策を記載しましょう。必ず「課題・リスク」「その解決策」をセットで書いてくださいね。
次のような表で整理するとわかりやすいです。
解決策は具体的に。「その対処法なら安心だ」「それだけ備えていれば大丈夫だろう」と感じてもらえるような説得力のある対策を記載します。
「課題・リスク」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、「事業化までにクリアしておくこと」「将来起こるかもしれない事態(起きないように対処する)」と考えてください。
補助期間(補助金経費の対象になる期間)の課題・リスクだけでなく、補助期間を終えた後の「将来起こると考えられる課題・リスクと対処法」も記載しておくことがポイントです。
「その他」の書き方
ここには「審査項目の(4)政策点」に記載されている項目や、応募する枠によって記載が求められる項目などについて、該当する方は記載をしておくと良いです。
下の表に内容をまとめておきました(第10回公募要領より抜粋)。
(4)政策点 |
ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に伴い、今後より生産性の向上が見込まれる分野に大胆に事業再構築を図ることを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資するか。 |
先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の 活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。 |
新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有 46 効な投資内容となっているか。 |
ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格 な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有 しているか。 |
地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果 を及ぼすことにより、雇用の創出や地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を 牽引する事業となることが期待できるか。 |
異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供 するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。 |
ほかの見出しで上記の内容を上手く記載できていれば、わざわざここで記載する必要はありません。
「該当するものがあるけれど、ほかの項目で書ききれていないな」というものだけ記載しておくと良いでしょう。
★ワンポイント・アドバイス★
不採択になってしまった方からお話を伺うと、「先端的なデジタル技術の活用」と「地域貢献」が明確に記載されていないという指摘を受けている方が多いです(*)
*事業再構築補助金で不採択になった場合、事務局に電話で問い合わせると不採択コメントを教えてもらえます
「先端的なデジタル技術の活用」と「地域貢献」は、他の見出しでうまく記載できていると思っても、この欄で改めて(念押しとして)記載しておくと良いかなと思います。
「そもそもデジタル技術を活用するつもりはない」
「我が社の計画では地域貢献は関係ない」
という方は、計画そのもののレベルが低いと思われる可能性があります。
事業をより一層発展させるための試みとして、デジタル技術活用や地域貢献を盛り込んだ計画を考えることも検討してください。
ここまでが「2:将来の展望」に記載する6項目の書き方の解説になります。最後までお読みいただきありがとうございました。
みなさまが補助金に採択され、ますます会社が発展していくことを心から応援しております!
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