このような疑問にお答えします。
2025年1月以降の中小企業向け支援策が発表されました。
今年の夏以降、国のコロナ資金繰り支援は収束に向かっています。
「コロナ融資の借り換えや返済猶予が必要」
「コロナの影響で資金繰りが厳しい」
このような状況なら、早めに金融機関や専門家に相談することが必要です。
そこで本記事では、コロナ融資の借り換えや返済猶予で利用できる中小企業向け資金繰り支援について解説します。
本記事を書いている私は、信用調査会社(株)東京商工リサーチの元・調査員です。企業審査のプロフェッショナルとして、融資審査や与信審査など、さまざまな審査突破を支援しています。
国の中小企業向け資金繰り支援について、よくある誤解とその真実もご紹介します。
資金繰り改善が厳しいと感じた場合の対処法も最後にお伝えしています。
お見逃しのないように、ぜひ最後までお読みくださいね。
この記事を書いている私のこと
佐藤絵梨子/会社信用ドットコム代表
世界最大の企業情報を保有する (株)東京商工リサーチに入社後、個人から売上1兆円企業まで10年間で延べ7,000社以上を調査。商業登記簿から会社の信用度を見抜くほどになり、全国1,000人以上の調査員中、営業成績1位獲得の実績を誇る。2017年同社を退職。現在は大手企業との取引実現から銀行融資・補助金獲得まで支援するサービスを展開。小さな企業の救世主として期待されている。
*経済産業省認定 経営革新等支援機関(認定支援機関ID:107713006411)
国の中小企業向けコロナ資金繰り支援はいつまで?
国によるコロナ資金繰り支援策は、2024年6月末でほぼ終了しました。
一部の施策は同年12月まで延長されていましたが、先日、その後の支援策として、2025年1月以降の支援全体像が発表されています。
以下の図は、中小企業庁が公表した資料です。
2024年12月で終了する制度、2025年1月以降も延長される制度、そして現行制度から改良・新設される制度があります。それぞれの内容をしっかり確認しておきましょう。
図中の緑色で示された制度は、コロナに限定されない一般的な支援策です。2025年1月以降はほぼすべてが緑色ですから、コロナ支援もいよいよ最終局面を迎えていることがわかりますね。
「コロナ」に関する返済猶予や借り換え、またはコロナ関連の支援を希望している事業者の方は、早急に金融機関や専門家に相談し、必要な対応を進めることをおすすめします。
コロナ融資の借り換えや返済猶予で使える中小企業向け資金繰り支援
中小企業向けの資金繰り支援について、コロナ融資の借り換えや返済猶予に利用できる各制度を簡単にご紹介します。
民間金融機関
経営改善サポート保証(コロナ対応)※2024年12月末から3か月延長
経営改善サポート保証(コロナ対応)は、中⼩企業が経営改善・事業再⽣を実⾏するために必要な資⾦を、保証付融資で支援してもらえる制度です。
コロナ禍から続いている「経営改善サポート保証(コロナ対応)」は、2025年3月まで延長されます。
終了後は、新たに「経営改善・再生強化型」という制度が新設され、コロナに限らない支援制度として実施される予定です。
経営サポート会議(※)や中⼩企業活性化協議会などの⽀援者と経営改善・再生計画を策定した上で申し込む流れになります。認定経営⾰新等⽀援機関に相談し、経営改善計画策定⽀援事業で作成した事業再⽣計画で申し込む場合は、全債権者の合意を得ることが条件になります。
コロナ借換保証制度の概要
制度概要 | 中⼩企業が経営改善・事業再⽣を実⾏するために必要な資⾦を、保証付融資で⽀援し、経営改善・事業再⽣の取組を後押しする制度 |
対象者 | 認定支援機関や中小企業活性化協議会、経営サポート会議などの指導または助言を受けて作成された経営改善・再生計画に基づいて経営改善・事業再⽣の取り組みを行う中小企業 |
制度詳細 | 融資上限:2億8,000万円、保証料率:0.2%等 、据置期間:5年以内、保証割合:責任共有保証(80%保証)。100%保証およびコロナ禍のセーフティネット保証5号からの借換は100%保証 |
上記は、2025年3月までの条件です。3月以降の「経営改善・再生強化型」の条件は今後発表される予定です。
コロナ借換保証 ※通常申込は2024年6月終了・一部地域のみ7月以降も延長中
コロナ借換保証は、民間の金融機関からの既存借入(民間ゼロゼロ融資)を借り換えることができる制度です。
月々の返済額や保証料負担が軽減されるだけでなく、追加の運転資金も支援してもらうことが可能です。
申込み直前の売上や利益の減少率、セーフティネットの利用など、融資対象の条件をよく確認してください。
「経営行動計画書」の提出や、金融機関の伴走支援を受けるなどの条件もあります。
通常の申し込みは2024年6月末で終了しました。
能登半島地震の影響が残る地域については、2024年7月以降も利用可能。当初、2024年12月終了予定でしたが、3か月延長され、2025年3月まで申し込み可能です。
コロナ借換保証制度の概要
制度概要 | 民間ゼロゼロ融資等の保証付融資や新規資金需要にも対応する保証制度 |
対象者 | 2024年7月以降の対象者は、令和6年能登半島地震による災害に関し、災害救助法の適用を受けた事業者。石川県信用保証協会に保証申込がなされたもの。売上または利益が5%以上減などの条件あり。 |
制度詳細 | 融資上限:1億円、保証料率:0.2%等 、据置期間:5年以内、100%保証の融資は100%保証で借換え可能 |
政府系金融機関
日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付 ※現行制度は2024年12月末で終了→以降は新制度創設予定
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等により必要とする運転資金を支援してもらえる制度です。
現在の制度は2024年12月で終了。その後は、新たに「危機対応後経営安定貸付」が創設される予定です。小規模事業者に対しては、コロナ前から続いてる「小口零細企業保証」(100%保証)で借り換え等が支援される予定です。
現行制度が終了する2025年1月以降は、コロナに限らない支援制度として実施される予定です。
新型コロナウイルス感染症特別貸付
制度概要 | 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等により必要とする運転資金を支援する制度 |
対象者 | コロナの影響で、売上が5%以上減少又は債務負担が重い者 |
制度詳細 | 低利上限(中小事業)4億円、(国民事業)6,000万円、貸付期間20年以内、据置期間最大5年(※令和6年7月1日(月)の申込受付分から、融資後3年間の0.5%利率引下げおよび設備資金の取扱廃止 |
日本政策金融公庫の新型コロナ対策資本性劣後ローン ※2025年2月末まで延長
日本政策金融公庫が、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者向けに展開している融資です。
「借入を自己資本とみなす」特徴があるため、資金繰りの安定だけでなく、負債を増やさずに財務を強化する効果があります。
現行制度は、2025年2月まで延長されます。終了後は、日本政策金融公庫が通常提供する「通常資本性劣後ローン」で事業者の成長を支援する形になります。
終了後の「通常資本性劣後ローン」では、省力化投資に取り組む事業者を精度の対象に追加し、適用利率見直しや限度額の拡充(10億円→15億円)が実施されます。
新型コロナ対策資本性劣後ローンの概要(2025年2月末まで)
制度概要 | 新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者に対し、事業を行うために必要な設備資金および長期運転資金を支援する制度 |
対象者 | コロナの影響を受けているスタートアップ事業者や、事業再生に取り組む事業者、コロナの影響収束後の事業の発展・維持に向けて民間金融機関等の協調支援を受けることが可能な事業者など |
融資条件 | 中小企業事業15億円、国民生活事業7,200万円 |
日本政策金融公庫のセーフティネット貸付
社会的、経済的環境の変化などにより、一時的に業況が悪化している事業者の経営基盤強化を図る支援制度。
資材費等の価格高騰の影響を受けている事業者、ウクライナ情勢の変化の盛況を受けている事業者なども対象になります。
現在行われている日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付(利益率▲5%等の対象の場合、金利▲0.4%)」は、2025年3月まで継続されます。
日本政策金融公庫のセーフティネット貸付の概要(2025年3月末まで)
制度概要 | 社会的、経済的環境の変化などにより、一時的に業況が悪化している事業者の経営基盤強化を図る支援制度 |
対象者 | 売上の5%以上減少、損失の発生、取引条件の悪化、債務負担が重い事業者など |
融資条件 | 中小企業事業7億2,000万円、国民生活事業4,800万円。※原材料・エネルギーコスト増、ウクライナ情勢の影響を受け、利益率▲5%等の対象で、基準金利▲0.4%となる現行制度は2025年3月まで継続。 |
国の中小企業向け資金繰り支援でよくある誤解
国の中小企業向け資金繰り支援について、よくある誤解とその真実をご紹介します。
誤解したままだと、資金調達で予期せぬトラブルや失敗につながる可能性があります。必ず確認してくださいね。
必ず審査に通る
国の中小企業向け資金繰り支援でよくある誤解の1つ目は、必ず審査に通るという誤解です。
国の支援策だから、銀行は必ず返済猶予や借り換え、新規融資に応じてくれる!
残念ながら、これは間違いです。
審査基準を満たしていない場合は、やはり融資を受けることはできません。
コロナ感染拡大の最中と現在では、状況が大きく変化しています。銀行も以前のように「何としても資金繰りを支援しなければ」という姿勢ではなく、融資を行う企業を慎重に選別する方針に変わりました。
とくに、資金繰りが厳しい事業者の場合、苦しい原因や再発防止策、そして具体的な返済計画を明確に説明できなければ、融資が承認される可能性は非常に低いです。
融資交渉に臨む際は、十分に対策を講じて、しっかり準備をして臨むことが大切です。
必要書類さえ出せば審査は通る
国の中小企業向け資金繰り支援でよくある誤解の2つ目は、必要書類さえ出せば審査は通るという誤解です。
書類で重要なのは記載内容です。
とくに事業計画書は、チェックされるポイントを見極め、的確に記載することが求められます。
1つ目の誤解でもお伝えしたように、融資や返済猶予が必要になった理由(苦しい原因)や再発防止策、返済計画は、融資担当者が納得できる内容でなければなりません。
場合によっては、補足資料を準備することも必要です。融資担当者から高評価を得るためには、十分な準備が必要です。
支援制度はまた延長される
国の中小企業向け資金繰り支援でよくある誤解の3つ目は、支援制度はまた延長されるという誤解です。
これまで国のコロナ資金繰り支援は何度か延長されてきました。ですので、「また延長されるかも」と思うのも無理はありませんね。
しかしながら、2024年6月末をもって多くの支援策が終了し、7月以降は再生支援に重点を置いた方針に切り替わっています。
12月まで延長された一部の支援策も、2025年3月までには終了、新制度に切り替わる方向性が示されいます。
もし利用を検討している支援策がある場合は、早めに融資担当者や専門家に相談し、申し込みをしましょう。
締切が近づくと相談や申込みが集中し、対応が遅れる可能性があります。余裕をもった行動が大切です。
審査突破のプロからひと言:資金繰りが厳しいと感じたら…
繰り返しになりますが、コロナ支援は最終局面を迎えています。
もし支援策の利用を検討しているのであれば、タイミングを逃さないようご注意ください。
また、コロナの影響に限らず、資金繰りが厳しい場合は、早めの対策が重要です。時間が経つほど選択肢は狭まり、審査も厳しくなり、改善が難しくなります。
「中小企業向け支援の内容が難しくて理解できない」
「自社に最適な資金繰り支援がどれかわからない」
「支援策の審査に落ちて、次の一手が見つからない」
このようなお悩みがあるなら、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。
資金調達では「どの支援制度を選ぶか」「どのように審査対策を進めるか」といった戦略が、成功の鍵を握ります。ご自身では限界を感じていても、専門家が新たな道を見つけられる場合もあります。
専門家のサポートで金融機関の融資が引き出しやすくなる制度や、高度な専門性が求められる支援策も存在します。
相談することで、選択肢を広げられる可能性が高まります。
もし、信頼できる専門家が身近にいない場合は、当事務所「会社信用ドットコム」にご相談ください。全力でサポートさせていただきます。
みなさまが国の支援策を上手に活用し、事業をさらに成長させていかれることを心から願っています。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。