このような経営者様の声にお応えします。
事業計画書は補助金の審査に大きな影響を与える大切な書類です。
ところが、添削や書き方指導をさせていただいていると、審査ポイントを外している事業計画書をたくさん目にします。
そこで本日は、補助金採択を狙うみなさまのために、採択される事業計画書の書き方を解説することにしました。
この記事を書いている私は、信用調査会社(株)東京商工リサーチの元・調査員です。企業審査のプロの視点で、効果的な企業情報の伝え方を解説します。
審査ポイントを押さえた事業計画書で、確実に補助金の採択をつかみましょう!
ぜひ最後までお読みください。
■メディア掲載情報
▷SMBCグループの経営層向け会報誌『SMBCマネジメントプラス』2024年12月号
「危険な取引先・優良な取引先がわかる 決算数字と信用調査の活用法」(P7~9)
▷日本実業出版社『企業実務』2024年12月号
「元調査員が教える!信用調査会社の上手な使い方」(P70~72)
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補助金申請は絶好の企業アピールの場
補助金申請は、自社の強みや将来性をアピールできる絶好の場です。
企業審査の目線で「審査員に好印象を与える見せ方」をして、採択を勝ち取りましょう!
例えば、補助金の対象となる事業内容だけでなく、その背景にある経営判断や将来を見据えた戦略まで的確に表現できれば、審査員の印象は格段に良くなります。
また、補助金申請は企業の信用力を高める絶好のチャンスでもあります。
採択されることで、取引先や金融機関からの評価も大きく変わります。
ほかで評価されているという実績が、会社の評価を大きく変える可能性を秘めています。
申請時と採択後どちらでも会社の良さをアピールできるのは、補助金申請の醍醐味ですね。
これをしなきゃ補助金採択は無理!募集要項と審査基準チェック
補助金の目的や審査基準は、それぞれの補助金によって異なります。
その違いに応じて事業計画書の内容も調整する必要があります。
事業計画書を最適な内容に調整するために、以下を確認しておきましょう。
募集要項の読み込み
補助金の公式サイトや公募要領で公表されている「要件」を必ず確認し、自社の計画内容がその基準に適合しているかチェックしましょう。
要件に1つでも適合しないと、いくら良い内容でも評価されません。そもそも補助金の対象でない可能性もあります。
募集要項に適合しているかどうかは、採択の大前提です。1番最初に必ず確認しましょう。
審査基準の把握
採択されるには、審査で重視されるポイントを理解し、計画書に反映させることが大切です。
補助金の公式サイトや公募要領では「審査基準」も公表されていますので、確認しておきましょう。
同じ事実でも表現の仕方で評価は大きく変わります。
例えば「地域貢献」が求められる補助金では、地域への影響を定量的・定性的の両面から示すことで、より説得力が増します。
このような重要な記載を忘れないためにも、審査基準は必ず確認しましょう。
書き分けが大事!有名補助金特有の書き方のポイント
それぞれの補助金には、特有の注意点や書き方のポイントがあります。
以下には、皆さまも名前は聞いたことがあるであろう、有名な補助金について申請時に意識すべき点をご紹介します。
事業再構築補助金
事業再構築補助金では、「新たな事業分野への進出」や「業種転換」が求められます。
事業計画書では、既存事業との違いや、再構築後の経営方針をわかりやすく記載することがポイントになりますね。
新たに展開する事業の具体的な内容や市場ニーズ、収益性を明確に示すことも重要です。
新規事業がどのように成長するか、を具体的な数値や図表を使って説明すると効果的です。
ものづくり補助金
ものづくり補助金では、「革新性」や「生産性向上」が重視されます。
事業計画書には、導入予定の設備やシステムの技術的な特徴を詳しく記載し、具体的な改善効果を数値で示すことが重要です。
補助事業実行後の製品やサービスが市場でどのような価値を提供するか、競合との違いも明確にすることが求められます。
計画実行後の売上や利益率の見通し、その根拠を詳細に記載することも必要です。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、「販路開拓や集客の具体的な方法」が主な評価ポイントです。
事業計画書では、新規顧客獲得のための具体的な取り組みや、既存顧客へのアプローチ強化を明確に記載することが求められます。
販促活動の実施スケジュールや目標とする成果を数値で示し、計画の実現可能性をアピールすることも必要ですね。
地域経済の活性化、雇用創出に貢献する計画が盛り込まれていると、審査時にプラス評価を得やすくなります。
補助金の事業計画書の基本構成
補助金の事業計画書には必ず押さえておくべき基本的な項目があります。
企業価値を最大限に引き出すために、それぞれの項目で意識すべきポイントをお伝えします。
事業概要と背景
補助金の事業計画書の冒頭で記載することが多い項目ですね。
現在の事業概要と背景では、事業の沿革や現状分析、抱えている課題を説明しておくとよいです。
この部分は会社の"今"と"これから"を結びつける重要なパートです。
「現在会社がどのような状態なのか」「このような経営課題を解決する必要がある」このような現状と課題を説明することで、今回の補助金の計画が、現状に即していて、課題を解決するものだという説得力を与える情報になります。
現状分析では、SWOT分析などを盛り込むことも効果的ですね。計画の説得力を高め、方向性が明確になります。
自社の強みや機会を活かした計画であることを伝え、弱みや脅威への対応策を具体的に記載することで、計画の実現可能性もアピールできます。
補助金の計画が単なるアイデアではなく、十分な検討と準備に基づいていることも効果的に示すことができますね。
市場分析
市場分析では、ターゲット市場や競合状況をしっかり分析し、記載しておきましょう。
市場の規模や成長性、競合企業の動向を説明することで、「自社がどれだけ有望な市場で活動しているか」を示すことができます。
文章だけでなく、データを入れれば、説得力が増しますね。
課題と解決策
「計画を実現する過程で乗り越えるべき課題・解決策」と、「事業開始後に予想される課題・解決策」を具体的に示すことがポイントです。
例えば、「設備導入に伴う技術者の教育」や「新規顧客の定着化」といった課題を挙げ、それに対する解決策を明確に記載します。
課題に対する解決策を具体的に考え、説明することで、計画の実現可能性と持続可能性をアピールできます。
独自性と優位性
独自性と競争優位性では、他社にはない自社の強みをはっきり説明し、どのようにして競合と差別化を図るのかを伝えることが重要です。
とくに、価格や性能を盛り込むことが求められることが多いですね。
価格優位性では、「その価格に設定した具体的な根拠」や「その価格を続けていける根拠」、単なる低価格ではなく付加価値や競争力がある点などを強調するとよいですね。
性能の優位性では、技術の革新性、特許・ノウハウ、ブランド力など、自社の優位性を示す要素を存分にアピールしましょう。
補助金で行う事業の内容と計画
事業がどのように展開されるのか、具体的な活動内容や計画を示します。
事業の実施内容、事業の進行スケジュール、目標達成のチェックポイントを具体的に説明し、事業の進捗管理や評価方法についても伝えましょう。
具体的な数値目標やスケジュールを盛り込んで、事業の将来性や真剣に取り組む姿勢も伝えましょう。
資金計画と収益計画
資金使途や自己資金の投入計画、借入金の調達計画をわかりやすく示します。
補助金の対象になる経費の使い道や、自己資金や借入金をどの程度投入するのかを明確に示し、事業の実行可能性をアピールします。
収益予測、支出予測を詳細に記載し、「なぜその数値計画になったのか」という根拠も記載しておく必要があります。
採択率を高める書き方!失敗しやすい点に専門家がアドバイス
多くの事業者の方が記載不足になりやすい点について、企業評価の専門家の視点からアドバイスします。
補助金審査では、審査員が短時間で多くの申請書を評価するため、とくに目を引く内容や説得力のある記載が求められますよ。
企業の概要は“上手く”書く
補助金の事業計画書を添削していると、冒頭の「企業の概要」を上手に記載できていないケースをよく見かけます。
例えば、計画書を読んで「この会社は何をしているのだろう?」「どんな特徴や強みがあるのだろう?」と理解できない内容では、計画全体の説得力が弱くなってしまいます。
企業の概要では、SWOT分析や現状の課題、会社の特徴や強みなどを具体的に書き、審査員にしっかり伝えることが大切です。ここが不明確だと、その後の計画内容も十分に理解してもらえません。
自分ではよく書けたと思っても、実際には伝わっていないこともあります。
ぜひ、第三者に確認してもらいながら内容をブラッシュアップしてみてください。伝わる概要が、採択への第一歩です!
課題と解決策を“はっきり”書く
事業実現に向けた課題や将来起こりうる課題の記載もおろそかになりがちな事業者様が多いです。
おそらく、自社の強みや、補助金で生み出す新しいサービスや商品の説明に集中してしまうのだと思います。注意してくださいね。
課題に抜けや漏れがあったり、解決策の実行力に疑問があると、審査員から理解を得られません。
具体的なアクションやスケジュールも示して、どのように課題を解決するのかを明確に記載しましょう。
市場は徹底分析を!
補助金事業に取り組む際、市場をまったく分析せずに進めようとする方がいます。
でも、それでは「自分がやりたいこと」を進めるだけで、顧客や市場環境について何も調べていない状態になってしまいます。
当然、審査員は「本当にこの事業は成功するのか?」と疑問に思うでしょう。実現可能性が低いと判断されてしまう可能性があります。
ですので、ターゲット市場の分析、競合他社の状況、顧客のニーズや課題をしっかりと把握し、事業計画書に明確に記載することが大切です。
これができれば、審査員に対して計画が現実的で効果的だと納得してもらいやすくなりますよ。
サラッとした資金計画はダメ!
補助金は、先に経費を支出し、その後に一部が補助金として支払われる仕組みです。
審査員は、補助金が支給されるまでの資金をどう調達し、事業を進めるのかを注意深く見てきますよ。
もし資金計画が不十分だと、「補助金が支払われるまで資金繰りが持つのか?」と不安を持たれてしまいます。
とくに、支給までの期間を見越してつなぎ資金の確保方法や、支出のタイミングを具体的に示すことが、計画の信頼性を高めるポイントです。
また、「補助金に採択されたら融資の相談をする」と考える方もいますが、このような事業は採択が厳しくなります。
補助金は確実に実行する事業が対象だからです。注意してくださいね。
データや実績のフル活用が鍵
補助金の事業計画書では、データや実績を活用することが非常に重要です。
単なるアイデアだけを書き連ねた計画書では、事業の実現性に疑問を持たれる可能性があるからです。
そこで、過去の実績や成功事例、顧客からのフィードバックなど、具体的なデータを盛り込むことで、計画の効果や信頼性を裏付けることができます。
とくに、データに基づいた説明は、審査員に対して事業の実現可能性や成果の期待値を示すための強力な武器になります。
具体性と説得力のある計画は、審査を通過する可能性を大いに高めますよ!
審査員に伝わらなければ台無し!
補助金の事業計画書を添削していると、実は内容が良い計画でも、うまく表現できずに審査員に伝わらないケースが非常に多いです。
自分では計画を熟知しているので、多少説明が不足していても頭の中で補えるかもしれません。
でも、審査員にとっては初めて目にする計画です。丁寧に内容を説明し、計画の良さを具体的に伝えなければ、評価にはつながりません。
どんなに優れた計画でも、伝え方が悪ければ評価されない可能性があります。
相手の立場に立ち、計画の魅力を正確に伝えることに注力しましょう。伝わる文章が、審査を通過する鍵になります!
ここで手を抜くから失敗する!記載の注意点と最終確認
最後に、事業計画書の完成前に必ず確認すべき点をご紹介します。
完成前に必ず確認すべき点
- 書類不備や誤字脱字チェック:小さなミスが致命的な結果を招きます!念入りに確認を!
- 第三者視点でのレビュー:第三者の目で内容を確認し、改善点を見つけましょう!
- 締切と提出方法の再確認:締切に余裕を持って申請し、電子申請の手順なども事前に把握しておくことが大切です
できれば第三者の目で事業計画書を確認してもらってください。
自分では完璧だと思っていても、他者が読むと理解できない、意味がわからないということが本当によく起きています。
些細な不備や曖昧な表現が、思わぬ低評価につながることもあります。
慎重にチェックしてくださいね!
審査突破のプロから最後にひと言
補助金の事業計画書は、単なる申請書ではありません。
自社の価値や強みを審査員に伝える貴重なプレゼンテーションの場です。
企業評価を専門にしている立場から言えるのは、審査基準を正確に理解し、具体的で伝わりやすい内容を心がけることが、採択の可能性を大きく高める鍵だということです。
ぜひ事業計画書を通じて、あなたの会社の魅力を最大限にアピールしてください。
伝え方ひとつで、企業の未来が変わります!
事業計画書の書き方にアドバイスが必要な方はご相談ください。お力になります。
この記事がみなさまのお役に立てれば幸いです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。